2.8 3Dプリンタ
 
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 3Dプリンター(3D printer)とは、3DCAD、3DCGデータを元に立体(3次元のオブジェクト:製品)を造形する機器。通常のプリンタのように紙に平面(二次元)的に印刷する形式や、鋳型を作って造形材を充填・固形化する形式と異なる。日本語では立体印刷機とも言う。
通常は積層造形法(additive manufacturing、AMによるものを指す。3次元のオブジェクトを造形することを3Dプリンティング(3D printing)、三次元造形(さんじげんぞうけい)と呼ぶ。
・歴史
 初期のものは1980年代に開発され実用化していったが、それらは高価であるばかりでなく、特殊な制御を求められるものであった。
1980年、名古屋市工業研究所にて小玉秀男が光造形法を発明し、また1983年にチャック・ハル(英語版)が.stl(Standard Triangulated Language)という3Dデータの保存方式を発明し、1986年3D Systems Corpを起業して、翌1987年「SLA 1」として商品化した。これが初の3Dプリンタとされるこの後も、1990年代半ばまでに様々な技術開発と製品が出されたが、それぞれ別々の名で呼ばれ、積層造形法(additive manufacturing)はそれらを表す共通の言葉として漠然と用いられていた。
1990年、3D印刷ともっとも広く関連づけられるPlastics extrusion技術が、Stratasys社により"fused deposition modeling (FDM)"(熱溶解積層法)として商品化された。
1995年、Z Corporation社が、MITが開発した製品を初めて"3D printing (3DP)"の商標で販売した。これにより、Ink jet material depositionを行う機器をおおまかに他と区別して3Dプリンタと呼ぶようになっていった。
2000年代半ばまでは投資額が安くても数百万円規模のため企業など事業所で導入されるのが主であったが、オープンソースによるFab@HomeやRepRapの開発が進み、2009年に基本特許の保護期間が終了したのに伴って数万円〜数十万円のものが発売され始め、個人や家庭でも導入されるようになっていった。
2008年から2011年にかけて、低価格の個人用3Dプリンタ市場は毎年平均346%もの大幅成長を遂げ、2013年には7万台が売られたと見積もられている。
2010年頃は、3D Systems,Stratasysなど上位3社で業界シェアの80%以上を占め、特に、ストラタシス社のDimension/uPrintシリーズの業界シェアが約50%と高く、事実上の業界標準となっていた。2012年に3D SystemsがZ Corporationを併合して、二社の争いになった。
2014年2月には精密な造形に適したレーザー焼結法の特許の保護期間が終了してこの方式に複数の企業が参入した。
一方、2014年は、低価格プリンタのトラブルなどが表面化した年であり、2016年にかけて3Dプリンタ業界における大手メーカーの経営が悪化、株式も低迷する契機となった。2015年12月には、3Dシステムズ社が低価格帯プリンタの製造を打ち切ったほか、2016年4月には、低価格帯プリンタを製造してきたメーカーボット社が、従業員を解雇した上で製品製造をアウトソーシングすることを発表した[17]。
近年では3Dスキャナを搭載した機種や熱溶解積層法以外のより精密な造形に適した光造形法等の低価格化も進み、普及に拍車をかけている。また、新規参入が相次ぎ、新たな開発競争の段階を迎えている。
一方、30年以上使われてきた3Dプリンタ用ファイルフォーマット.stl(Standard Triangulated Language)は、形状の情報のみしか保持しておらず、素材や構造の情報を記述できないなど、3Dプリンタの進歩に対して追従できないなどの問題が多くなってきたため、国際標準化委員会ASTMとISOは共同で、3Dプリンタ用ファイルフォーマットAMFを定めている。
・方式
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−3Dプリンタ対象物、手法、機種によって多少の違いはあるが、コンピュータ上で作った3Dデータを設計図として、その断面形状を付加加工で積層していくことで立体物を形成する方式が基本とる。液状の樹脂に紫外線などを照射し少しずつ硬化させていく光造形方式、熱で融解した樹脂を少しずつ積み重ねていくFDM方式(Fused Deposition Modeling, 熱溶解積層法)、粉末の樹脂に接着剤を吹きつけていく粉末固着方式などの方法がある。
−光造形法
紫外線を照射することで硬化する液体樹脂を用いた造形法。初期のラピッドプロトタイピングはこの手法から始まり、ステレオリソグラフィー、レーザーリソグラフィーなどともいわれた。紫外線の照射によりラジカル重合、もしくはカチオン重合する樹脂を用い、絞った紫外線レーザービームで樹脂を選択的に硬化させて立体物を造形する手法であり、面一括露光により造形する手法も開発されている。元々は高価な機器が必要であったが、近年100万円を切るモデルも販売されている。
−粉末法
素材粉末を層状に敷き詰め、高出力のレーザービームや(導電性の素材では)放電などで直接焼結(粉末焼結式積層法)したり、インクジェット方式でバインダを添加して固めたりする(粉末固着式積層法)などして造形を行う手法。前者では、ナイロンなどの樹脂系材料、青銅、鋼、ニッケル、チタンなどの金属系材料などが利用できる。後者ではスターチ(デンプン)、石膏などの材料が知られ、ランニングコストを抑えた3Dプリンタに利用されることが多い。フルカラー印刷に対応しているのも特徴である。
−熱溶解積層法(FDM法)
熱可塑性樹脂を高温で溶かし積層させることで立体形状を作成する造形法。 ラピッドプロトタイピング・3Dプリンタの造形方式の中では唯一、本物の熱可塑性樹脂が使用でき、ABS樹脂・ポリカーボネート樹脂・PC/ABSアロイ・PPSF/PPSU樹脂・ULTEM(ポリエーテルイミド、PEI、英: polyetherimide)樹脂など熱可塑性の様々なエンジニアリングプラスチックが使用できる。 米国ストラタシス社がこの方式の特許を持っていたが、基本特許は切れた。この系統に含まれるものとして、レーザービーム中に粉末やガス状化合物を吹き込んで、金属や化合物の積層物を製作するものもある。10万円未満で販売されている機器はほぼこの方式である。樹脂を熱で加工するという特性上、造形物が反って変形するなどのトラブルが多く、使いこなすにはある程度の慣れが必要である。。
−シート積層法
シートを積層させ、形状を作る造型法。数種類あり、カッティングプロッタで切り込みを入れた紙を糊で積層する方式や 光硬化樹脂をシートにインクジェットで出力してから転写する方式や水溶性の紙に熱硬化性樹脂や光硬化樹脂のモノマーをしみこませて一層の積層毎に加熱または紫外線照射、加圧して硬化する方法がある。上記の粉末法の基材をシートに置き換えたもの。
−インクジェット法
液化した材料またはバインダを噴射して積層させ、形状を作る造形法。インクジェットプリンタの原理を応用している。インクジェットプリンタのカラーインクを使用して、カラー造形物も作成されている。光硬化樹脂を噴射後、短波長の光を照射して硬化する方法やワックスを噴射する方法等がある。材料の無駄が少なく、歯科技工や宝飾品に使用されるロストワックスの原型のように比較的精密なものを作るために適する。オーバーハングの部分のために溶性のサポート材を出力したり、フルカラー出力に対応した機種もある。