アンディマンのカルチャークリエート(奏造成)

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December 2009

カラマネの基礎知識 No.1802

6d4ee406.jpgカラマネから見た宇宙観
Vol.52
超大統一理論



インフレーション期を経た宇宙膨張の概念図。図の左端に時空の計量の劇的な膨張が描かれています。(2006年のWMAPのプレスリリースより翻訳)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 かつてマックスウェルが電磁気力の法則を統一電磁理論にまとめましたが、その後少し進化した統一理論が成立しました。それは、電磁力と弱い核力を統一したものです。わかっている基本力は、電磁-弱核力、強い核力と重力の3つです。そして今日、それらの基本力を結び付けて大統一理論へと発展しようとしています。つまり、電磁-弱核力と強い核力とを統一しようとするものです。これは未だ実験的な立証を欠いていますが、新しく改良されたビックバン理論、いわゆるインフレーション理論の基になっています。インフレーションとは、宇宙が開闢直後に劇的な膨張を始めてから現在に見られる膨張速度に落ち着いたとするもので、この理論の魅力は前述しましたマイクロ波の一様性を解く鍵になっているからです。インフレーション理論によれば、ビックバンの瞬間のごく近く、宇宙の全ての部分は相互に密接していました。つまり、今では我々から遠く離れている宇宙の部分もインフレーション以前には近所にあったということです。インフレーション理論のもう一つの重要な予言は、宇宙が殆ど「平坦」であるということです。即ち、宇宙のいたるところで物質分布は、平均して非常に一様であり、物質密度は特別の臨界値に極めて近いことです。この臨界密度をビッグバン直後の宇宙の密度と関連付けることができます。今日の観測から、宇宙は臨界密度の近くあることが示されています。
 インフレーション理論は、どのようにして「平坦性」をもたらすのでしょうか? 理論によれば、宇宙は光速より早く膨らんで、1秒の1兆分の1のそのまた1兆分の1のそのまた1000億分の1の間にそれ以前の大きさの10兆倍の10兆倍となったのです。それで現在見る部分は全宇宙のほんの小部分なので平坦に見えるのです。これは、自宅の庭に立つと地球全体の小さな部分しか見えないので地球を平らだと考えるようなものです。

【Tips】
大統一理論(GUT)とは、電磁相互作用、弱い相互作用、強い相互作用を統一しようとする試みです。電磁相互作用と弱い相互作用は電弱統一理論としてグラショウ、ワインバーグ、サラムにより完成されています。大統一理論の最小モデルであるSU(5)モデルは陽子崩壊の観測により排除されています。GUTは、Grand Unified Theory あるいは Grand Unification Theory の略です。この理論からいくつかのことが予言されています。陽子崩壊現象の他、ニュートリノ振動現象、宇宙初期におけるインフレーションとそれに伴う磁気単極子や宇宙ひもの存在がこれにあたります。SU(5)モデルによる陽子の寿命は1030〜1032年ですが、神岡鉱山のカミオカンデ・スーパーカミオカンデにおける実験結果では陽子崩壊が観測されず、実際の寿命はそれ以上、少なくとも1034年はあり、大きくくい違っています。しかし、大統一理論に超対称性と呼ばれる要素を加えた超対称大統一理論では陽子の寿命はさらに延びることになり、実験結果を説明できる可能性があります。
 超対称大統一理論 (Supersymmetric Grand Unified Theory : SUSY GUT)とは大統一理論 (GUT) を超対称化した理論です。素粒子標準理論ではヒッグス粒子の質量パラメータに対して2次発散が生じ、素朴にはプランク質量程度 (〜1018GeV) になると期待されます。 しかしながら、この質量パラメータは現実的には電弱スケール (〜102GeV) 程度でなければならず、繰り込みを受けることによって32桁にわたる尋常ではない相殺が起きていると考えられています。これは自然がそのように選ばれていると考えることもできますが、多くの研究者は不自然なことであると認識しています。この問題をゲージ階層性問題と呼びます。
 宇宙のインフレーション(cosmic inflation)とは、1981年にアラン・グースや佐藤勝彦によって提唱された、ビッグバン理論を補完する初期宇宙の進化モデルです。インフレーション理論・インフレーション宇宙論などとも呼ばれています。インフレーション理論では、宇宙は誕生直後の10-36秒後から10-34秒後までの間に、エネルギーの高い真空(偽の真空)から低い真空(真の真空)に相転移し、この過程で負の圧力を持つ偽の真空のエネルギー密度によって引き起こされた指数関数的な膨張(インフレーション)の時期を経たとしています。この膨張の時間的な発展は正の宇宙定数を持つド・ジッター宇宙と同様のものです。この急激な膨張の直接の結果として、現在我々から観測可能な宇宙全体は因果関係で結び付いた (causally-connected) 小さな領域から始まったこととなります。この微小な領域の中に存在した量子ゆらぎが宇宙サイズにまで引き伸ばされ、現在の宇宙に存在する構造が成長する種となりました。このインフレーションに関与する粒子は一般にインフラトンと呼ばれています。この理論の名前は提唱者のアラン・グースが、1970年代終わりにアメリカで起きたインフレーションをユーモア交じりに引用して名付けたものです。

カラマネの基礎知識 No.1792

59dc4787.jpgカラマネから見た宇宙観
Vol.51
ビッグバン


図は、ビッグバン理論を理解するためのイラスト図(想像図)です。
ビッグバン理論では、宇宙は極端な高温高密度の状態で生まれたとされます(下)。その後、空間自体が時間の経過とともに膨張し、銀河はそれに乗って互いに離れていきます(中、上)。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 膨張宇宙に関する一つの確かな結論は、宇宙は常に膨張し続けることはできないということでした。この膨張宇宙の過去に遡ってゆきますと、宇宙は現在よりも小さかったはずです。そして、宇宙が無に近くまで縮小した時が宇宙の始まりで、その時は約137億年前と計算されています。ということは、前述した見通し距離に対して光が進む1兆年の1000億倍よりは、遥かに短くなっています。そうしてみますと、宇宙創造の起源が説明に窮する結果を生じ、ますます怪しくなってきます。
 ロシア生まれのジョージ・ガモフは、1930年の始めに膨張宇宙の帰結について考え始めました。そして、「ビックバン理論」という宇宙開闢直後の世界を見出しました。
つまり、ビックバンの始めは、超高温、超高密度で、理解を遥かに超える速さで外に向かって膨張していました。この初期の段階で宇宙を構成する粒子は、クォーク、レプトンとポーズ粒子でした。そしてこれら3つの粒子は宇宙が冷えてきた段階で殆ど水素とヘリウム原子になりました。これはビックバンの約100万年後に起こったもので再結合の時代といわれています。ビッグバンに結びつく閃光を形成した光子は、陽子と電子の火の玉となりましたが、この間何も見えなかったのです。この目に見えない閃光は、絶対温度で約3000K(ケルビン)の黒体放射に匹敵しています。
 では、この光が現在どうなっているのかといいますと、この波は宇宙の膨張と共に伸びてマイクロ波の電磁波の領域にあります。つまり可視光線よりずっと長いのです。光が伸長すると放射は冷却して、原初の閃光は、絶対温度で約3Kの黒体放射に対応しています。ガモフは、もし宇宙がビッグバンから始まったとするなら、この殆ど気付かない冷たい光が今でも存在するはずだと信じました。そしてその放射が1960年代になって偶然発見され、ガモフはノーベル賞を受賞したのです。この時にガモフの予言した温度はその後の観測結果とほぼ一致している値に近いものでした。また、驚くことに、この放射はどの方角からも一様に観測されています。
 開闢論は、今日では多くの科学者がビックバン後の1秒のごく小さい端数から現在までの宇宙の進化を非常に良く理解できると考えられてきました。

【Tips】
ビッグバン(Big Bang)とは、それにより宇宙が始まったと考えられている一種の爆発(とてつもなく高い密度と温度の状態からの膨張)であり、約137億年前にあったとされています。そして、ビッグバンにより宇宙が始まったと考える宇宙論をビッグバン理論といいます。ビッグバンは遠方の銀河の速度がハッブルの法則に従っているという観測結果から導かれる帰結であり、宇宙原理を仮定することによって、空間が一般相対性理論のフリードマンモデルに従って膨張していることを示すものです。これらの観測結果は、これを過去へと外挿しますと、宇宙は全ての物質とエネルギーが計り知れないほど高い温度と密度にあるような原始状態から膨張してきたことを示しています。この高温・高密度の状態よりさらに以前については、一般相対性理論によれば重力的特異点になりますが、物理学者たちの間でこの時点の宇宙に何が起きたかについては広く合意されているモデルはありません。ビッグバンという語は狭い意味と広い意味の両方で用いられます。狭い意味では、現在観測されている(ハッブルの法則に従う)宇宙膨張が始まった時点のことを指します。この時刻は今から137億年(1.37 × 1010年)前と計算されています。より一般的な意味では、宇宙の起源や宇宙膨張を説明し、またαβγ理論から予測される宇宙初期の元素合成によって現在の宇宙の物質組成が生まれたとする、現在主流の宇宙論的パラダイムを指す場合もあります。ビッグバンの帰結の一つとして、今日の宇宙の状態は過去あるいは未来の宇宙とは異なるという結論があります。このモデルに基づいて、1948年にジョージ・ガモフは宇宙マイクロ波背景放射 (CMB) が存在することを(少なくとも定性的に)推定することができました。CMB は1960年代になって発見され、この事実が、当時最も重要な対立理論であった定常宇宙論ではなくビッグバン理論を支持する証拠と受け止められました。

カラマネの基礎知識 No.1781

49dfe908.jpgカラマネから見た宇宙観
Vol.50
膨張する宇宙



このイラストは、インフレーション期を経た宇宙膨張の概念図を示します。図の左端に時空の計量の劇的な膨張が描かれています。(2006年の WMAP のプレスリリースより翻訳)出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルは、多数の星のドップラー変移を測定して、1929年に天の川銀河に類似した遠方の星の集団の中にある特別な星のドップラー変移を観測した結果、宇宙は膨張していると発表しました。ハッブルの発見には2つの見方がありました。第一は、天の川銀河は宇宙の中央に鎮座して全ての他の銀河が、あたかも水面に投げた石の落下点から水の波が広がるように我々から遠ざかるというもの、第二は宇宙全体が膨れ上がる風船の表面のインク滴のように全ての方向に一様に膨張するものということです。実際、我々の宇宙が中心に位置することはないので現在では第二の説が採用されています。実は、これと同じ証明がアインシュタインによって1916年に「相対性理論」が発表されました。この理論の中に宇宙が膨張していることが含まれていましたが、アインシュタインは静止宇宙というギリシャ的考えにとらわれていたので、自分の方程式を改変してしまったのです。後にハッブルの発見を聞いて改変前の方程式が正しいことを知り、方程式の改変はわが生涯の大失敗だったと言ったことです。
 相対性理論に行き着くところは、「宇宙は膨張しているが、後で収縮することも、永遠に膨張することもできる。」というものでした。しかし当時は、このどちらの予言も確かめるだけの天文学上の証拠はなかったし、現在でも証明は欠けているということです。

【Tips】
宇宙の膨張
 
宇宙は膨張を続けていることが判かっています。1929年にエドウィン・ハッブルが遠方の銀河の後退速度を観測し、距離が遠い銀河ほど大きな速度で地球から遠ざかっていることを発見しました(ハッブルの法則)。一方、これに先立つ1915年にアルベルト・アインシュタインによって一般相対性理論が発表され、エネルギーと時空の曲率の間の関係を記述する重力場方程式(アインシュタイン方程式)が見出されました。これを受けて、宇宙は一様・等方であるという宇宙原理を満たすようなアインシュタイン方程式の解が、アインシュタイン自身やウィレム・ド・ジッター、アレクサンドル・フリードマン、ジョルジュ・ルメートルらによって導かれましたが、これらの解はいずれも時間とともに宇宙が膨張(または収縮)することを示していました。当初、アインシュタインは宇宙は定常であると考えていたため、自分が見つけた解に定数(宇宙定数)を加えて宇宙が定常になるようにしましたが、後にハッブルによって観測的に宇宙膨張が発見され、膨張宇宙という概念が定着しました。
 特異点(singularity)とは、ある基準 (regulation) の下、その基準が適用できない (singular) 点の総称です。したがって特異点は基準があって初めて認識され、「〜に於ける特異点」「〜に関する特異点」と言う呼ばれ方をします。特異点と言う言葉は、数学と物理学の両方で用いられます。例えば、複素解析における正則関数の正則性 (regularity) に関する特異点には、可除特異点 (removable singularity)、極 (pole)、真性特異点 (essential singularity) の3種の孤立点があります。有理関数 1/x に於ける特異点は、x = 0 であり、これは 1 位の極です。つまり 局所的な変換が一対一を保たない点です。円座標平面 (r,θ) に於ける特異点は、r = 0 です。宇宙物理学では重力に関する特異点が考えられ、重力の特異点 (gravitational singularity) といいます。ブラックホール内には、時空に於ける特異点が存在すると考えられています。

カラマネの基礎知識 No.1771

16c2aa09.jpgカラマネから見た宇宙観
Vol.49
宇宙の大きさ


写真は、パロマー天文台の48インチシュミットカメラを操作するエドウィン・ハッブルです。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 宇宙の見通し距離は1兆光年の1000億倍といいましたが、この距離は純粋に平均の星の大きさから計算されます。ニュートンの答えでは、宇宙は見通し距離より遥かに大きいということですが、現代においてはこの考えがどうなっているのか調べてみます。
以前の見方は、宇宙が静的で永遠に続くと考えられていましたが、実際には、星々は相互にほんの僅かながら動いていることが明らかにされています。星の実際の運動は視線運動と横運動から成っており、それを観測することによって遠ざかっているのか近づいているのか判ります。つまり、ドップラー変移というスペクトル線(電磁波)の振動数の変化を検出することによって判るのです。星が静止している時より高い振動数にあるように見えています。どれほど高いかは、星の大きさ次第です。近づく速度が大きいほど振動数の変移も大きくなります。我々から遠ざかる星は、その逆になり、変移が低い振動数に向かい、後退速度が大きいほど変移も大きくなります。
 ドップラー変移は、日常生活の中にも頻繁に見られます。踏切などで電車が警笛を鳴らして走っていく様がまさにその現象で、電車が近づいてくると警笛音は高音になり、離れていくと低音になるのが判ります。この振動数の変化を測定すれば星の視線方向の成分を決定できるのです。

【Tips】
・宇宙定数(cosmological constant)
 アインシュタインの重力場方程式の中に現れる宇宙項の係数です。宇宙定数はスカラー量で、通常Λ(ラムダ)と書き表されます。この定数が値をもつと、弱い重力場において、アインシュタインの重力場方程式とニュートンの万有引力の法則との間にずれが生じます。1916年に発表された最初の重力場方程式には宇宙項・宇宙定数は入っていませんでした。しかし、これでは宇宙は自らの重力(万有引力)で収縮していってしまうと気づいたアインシュタインは、万有引力に対抗する斥力である万有斥力を表す宇宙項・宇宙定数を導入し、宇宙の大きさは一定であるとしました。しかしエドウィン・ハッブルらの観測によって、宇宙が膨張していることが明らかになり、アインシュタインはこの宇宙定数の導入を生涯で「最大の過ち」(biggest blunder)として後悔したというエピソードはあまりに有名です。近年、遠方の超新星の観測結果から、我々の宇宙は現在、加速度的に膨張していることが明らかになってきており、宇宙定数は厳密には0ではなく微小ではありますがある値を持つのではないかと考えられています。宇宙定数の源の有力な候補としては真空のエネルギーなどが挙げられます。これを仮定すると宇宙定数の大きさは、自然単位系で評価してナイーブには1の程度になります。しかし、観測的には10 − 120以下であることが分かっており、このギャップを埋めるメカニズムは現代宇宙論の未解決問題のひとつになっています。
・光のドップラー効果
 光の場合でも同様の効果が起こり、遠ざかる光源からの光は赤っぽく見え(赤方偏移)、近付く光源からの光は青っぽく見えます(青方偏移)。しかし、光の伝播は特殊相対性理論に従うため、通常の波のドップラー効果とは違った現象を見せます。そもそもドップラー効果の原因は、波源や観測者が波の媒質に対して速度を持つために波の山の間隔が変わる所にありますが、光は波源や観測者の速度によらず常に光速 c で伝播するように見えますので、山の間隔の変わり方が通常の波の場合とは異なってきます。また、光の場合、波源が運動していますと、特殊相対論的な効果によって波源上での時間の進み方が遅れて見えます。これによって波源から出る光の振動数が小さく見える効果が付け加わります。
以上の効果によって、光源Sが観測者Oから見て角度θの方向に速さVで運動している場合、Oでの光の振動数ν'は、
  ν‘=νx{1−(V/ c)^2}^1/2/{1−(V/ c)COS θ}
となります。ここで、ν : 光源の出す光の振動数、V : 観測者から見た光源の速さ、c : 光速、θ : 観測者から見た光源の動く方向(θ=0:観測者に向かってくる場合)
大変重要なことは、光の場合には光源が観測者に対して真横に運動していて、視線方向の速度を持っていない場合(θ=90°)でも光の振動数が変化して見えることです。これを横ドップラー効果といいます。実際の活用法としては、恒星などの天体の可視光スペクトルに見られる吸収線(フラウンホーファー線)の波長の理論値とのズレ(ドップラー・シフト)から、地球とその天体との相対速度を算出することが出来ます。また同じ電磁波におけるドップラー効果を利用したものとしてドップラー・レーダーがあります。光のドップラー効果は星虹(スターボウ)として観測が可能であるという説があります。
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