アンディマンのカルチャークリエート(奏造成)

このブログは、新しい世代の若者を主な対象として掲載します。 特に理科系に強くなれることを目標に、できるだけわかりやすく説明します。 掲載する内容は、画像表現、宇宙論、デザイン、脳科学、工学全般などについてです。 読者の皆さんとの双方向のコミュニケーションをとりたいと考えておりますので、どんどん参加して、忌憚のないご意見を頂けると幸甚です。

June 2009

カラマネも基礎知識 No.1541

09b43a83.jpgカラマネから見た宇宙観
Vol.26
太陽電波を捉える


図は、電磁波の種類を示します。電磁波は波長によって呼び名・用途が異なります。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 第二次世界大戦の真っ只中、電波天文学の重要な1つの発見が偶然にも起こりました。それは、イギリスの陸軍のために研究していた民間の技術者が、軍レーダー網に対するドイツ軍の妨害を発見できる1つの方式を見出しました。レーダーは一連の短い電波パルスを送り出して、それが敵機や敵船などの物体にぶつかると、反射してレーダー送信機の場所に戻ってくることによって物体までの距離を計測する仕組みになっています。パルスが探査物体まで飛来し、戻ってくるまでの時間を計れば、その物体までの距離を算出することが出来ます。つまり、パルスの送信から着信までの時間(秒)x電波の速さ(km/秒)x1/2が求める距離(km)となります。当然のことながらパルスを飛ばしてから、反射して帰ってくるまでの往復時間が長ければ長いほど、物体までの距離は遠いことになります。
 ドイツ軍は、仮に偽のパルスを送ってイギリス軍のレーダーを妨害したら、イギリス軍は真のレーダー信号と偽の信号を分離することは出来ないと考えたのです。これは、勿論、ドイツ軍の距離を、それだけでなく、物体(飛行機など)の存在さえも困難になることを意味しているのです。
 イギリス軍は、妨害信号を受信できるように特別に設計された受信局を設置して、ドイツ軍の妨害信号源を特定できないかと考えたのです。ところが、1942年2月にこの組織のオペレータが、奇妙なことに気付きました。彼の受信機が説明のつかない、おびただしい電波雑音を拾ったのです。この観測に大変困惑したのですが、彼はこの奇妙な雑音が巨大な太陽黒点の中央に起こった爆発であることを突き止めることができました。このことは、残念ながら軍事上の秘密になっていたので、公には発表することが出来ませんでしたが、太陽も、天の川のように、電波を放出していることをはっきりとした証拠として捉えることのできた瞬間でもあるのです。

【Tips】
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)
 
CMB の放射は、ビッグバン理論について現在得られる最も良い証拠であると考えられています。1960年代中頃に CMB が発見されると、定常宇宙論など、ビッグバン理論に対立する説への興味は失われていきました。標準的な宇宙論によりますと、CMB は宇宙の温度が下がって電子と陽子が結合して水素原子を生成し、宇宙が放射に対して透明になった時代のスナップショットであると考えられます。これはビッグバンの約40万年後で、この時期を「宇宙の晴れ上がり」あるいは「再結合期」などと呼びます。この頃の宇宙の温度は約3000Kでした。この時以来、輻射の温度は宇宙膨張によって約1/1100にまで下がったことになります。宇宙が膨張するに従って CMB の光子は赤方偏移を受け、宇宙のスケール長に反比例して波長が延び、結果的に輻射は冷える。CMB が生まれた後、いくつかの重要な事件が起こりました。CMB が放射された時期に中性の水素原子が作られましたが、銀河の観測から、銀河間物質の大部分は電離していることが明らかになっています(すなわち、遠くの銀河のスペクトルに中性水素原子による吸収線がほとんど見られません)。このことは、宇宙の物質が再び水素イオンに電離した再電離の時代があったことを示唆しています。これについてよくなされる説明は、初期宇宙で生まれた大量の大質量星からの光によって再電離が起こった、とするものですが、再電離自体は宇宙に恒星が大量に存在する時代より昔に始まったという証拠もあります。CMB が放射された後、最初の恒星が観測されるまでの間、観測可能な天体が存在しないことから、宇宙論研究者はこの時代をユーモア混じりに(宇宙)暗黒時代 (dark age) と呼んでいます。この時代については多くの天文学者によって精力的に研究されています。

カラマネの基礎知識 No.1531

96d5e5f7.jpgカラマネから見た宇宙観
Vol.25
天の川から来る電波の謎



図は、銀河系(天の川)の想像図。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 1930年代の電話は普及しているものの、問題も多くありました。特に、雑音については深刻なものでした。そのためベル研究所のカール・ジャンスキーは、自分の実験室の近くにアンテナと受信機を持ち込み雑音の調査を始めました。すると、全ての電波雑音は雷雨だけから来るのではないことを見出しました。あるものは「天の川」付近からくるものもありました。ジャンスキーのこの発見は当時の科学者に大いに興味をかきたてたのです。
発見がもたらした偉大な発見の興奮が冷め遣らないうちに、世界恐慌がやってきて、またその数年後に第二次世界大戦が勃発してしまいました。そのためジャンスキーの実験はついに頓挫してしまいました。しかし、多くの科学者や技術者も含めてジャンスキーは自分の研究さえも戦時用に向けてしまったのです。
 戦争が終結した時期に、ジャンスキーはとうとう健康を害してしまったのです。そのため宇宙の理解に電波天文学が大いに貢献できたことは見ることが出来ず、この世を去ってしまいました。皮肉なことに第二次世界大戦の間に開発された、あのレーダーの発達は、この天文学の新規部門に早期のとてつもなく重要な諸々の発見をもたらしたのです。
 最初の電波望遠鏡を開発したのがグロート・レーバーです。レーバーは殆ど一人で電波雑音の研究をしており、その実験に欠かせないものとして第一号に作ったのです。そして、この仕掛けを使って、組織的に天の川から来る電波信号を捉え、星図に記述しました。
それは、天の川のある部分から次の部分へ電波信号の強度が変化するのを輪郭線で示す図を提供する手段です。しかし、この発見は当時の天文学者が信用せず、結果の出版さえも拒まれてしまったのです。今日でもレーバーと主流の天文学者との関係がぎくしゃくしたものになっています。

【Tips】
宇宙背景放射とは、宇宙空間の全域からほぼ均等に観測される、さまざまな周波数の電磁波の放射を指します。現在はあまり使われなくなりましたが、宇宙背景輻射と呼ぶ場合もあります。最も代表的なものは宇宙マイクロ波背景放射で、その他にX線や赤外線での背景放射などが知られています。

カラマネの基礎知識 No.1522

c6707a6a.jpgカラマネから見た宇宙観
Vol.24
光を吸収する原子


図は、パルマ−系列のエネルギー準位を示す。(出典:Wikipedia)

 やっと原子が光エネルギーを吸収する様子が判り始めてきました。可能な外側の軌道へ電子が移行するために必要な適正量のエネルギーつまり振動数の光が原子に当たると、原子はそのエネルギーを吸収することが出来ます。そして、電子は外側の軌道に飛躍できます。飛躍は1軌道分がけではなく、時には2軌道分あるいはそれ以上飛躍することもあります。例えば、バケツを持って一気に階段を2段階登ようなこともあるのです。
 最も単純な軌道を持つ水素は、原子核1個と1軌道に1個の電子(負電荷)を持つ構造ですが、他の物質では軌道はいくらでも変化します。その軌道にどれだけ電子が移動できるのかは、原子が吸収したエネルギー量で決定されます。つまり、エネルギーの吸収が多ければ多いほど、電子はその軌道に多く移行し、また軌道の数も増えていきます。
 このような理論から推察すると、スペクトルの暗線がどのようにして起こるかが理解できます。光の連続スペクトルが、地球の大気のような冷たいガスを通過する場合、ある量の光エネルギーがガスの原子に吸収されてその電子は高い軌道に移行します。しかし、原子内で電子の飛躍を許す振動数の光のみが吸収されることになります。そのために、吸収はごく限られた振動数に起こり、また暗線の模様は終始一貫していることになります。他の振動数の光エネルギーが吸収されないのは、ガスを構成する原子の中に、対応するエネルギーの軌道がないからです。同様に、輝線について考えてみますと、電子がより低い軌道に移行するときは、特定量のエネルギーを放射します。軌道が1つ下がることを考えますと、ちょうどの量のエネルギーを吸収することになります。この現象は、電子が1つの軌道へ飛躍するエネルギーの高い位置に移行しても、低い位置に移行しても同じ量のエネルギーを吸収又は放射します。そして放射も吸収もそのエネルギーと振動数は正比例しますので、エネルギーは全て特定の振動数で放射・吸収され、固有の輝線スペクトルを与えることになります。
 ここに至って、ボーアの理論は、エネルギーのプランクバケツがどこから来るのかを説明しているのかが理解できます。ボーアの理論は非常にタイミングよく作用しましたので、多くの科学者は、例えばプランクの理論に懐疑的だった人も、光エネルギーが個々の量子化された断片でやってくることを信じ始めたのです。

【Tips】
量子力学(独語:Quantenmechanik、英語:Quantum mechanics)は、電子、原子核などの間の微視的現象をも説明する物理学の理論です。プランク定数を 0 へと漸近させた極限は古典力学と等価になります。量子力学を基にして、それを手段として用いる物理学分野全般のことを、量子物理学 (Quantum physics) と言います。これには物性物理学のほとんどの領域、素粒子物理学、核物理学など広範な分野が属すします。量子力学では対象を状態の重ね合わせとして記述し、観測によって一つの状態がある確率で実現します。この枠組みは、それ以前までに育まれていた客観的実在を想定する決定論的記述を見直す契機になりました。このため、量子力学の解釈問題が重要な課題となりました。ニールス・ボーアらの提示したコペンハーゲン解釈では、観測が行われますと、状態を記述する波動関数は一つの状態に収縮しているとしています。ここで、何時どのようにその状態が実現したのかについては説明を与えません。これに対し、アインシュタインらは、量子力学では記述されていないが実際にその状態を実現させた変数が存在するはずである、と主張しました(局所的な隠れた変数理論)。また、確定時期を特定することの困難が、シュレーディンガーの猫によって指摘されました。しかしながら、局所的な隠れた変数理論はベルの不等式によって、量子力学とは異なる結論を出すことが立証され、実験検証によって棄却されました。量子力学と同じ結論を出す、非局所的な隠れた変数理論は存在します。ただし、この理論はクラスター分解性を持たないことが知られています。その他さまざまな解釈がなされていますが、量子力学は必ずしも素朴実在論や決定論の是非を決定付けるものではありません。

カラマネの基礎知識 No.1511

537e347d.jpgカラマネから見た宇宙観
Vol.23
ミクロの視野で見た太陽系 〜真の原子構造〜


正電荷と質量が中心に集中しきわめて小さい核を作り,そのまわりを正電荷を太陽とすると,電子が惑星のようにまわります。
1909年、ガイガー(H.Geiger1882-1945)、マルスデン(E.Marsden)の金箔を使ったα 線散乱実験によって、正電荷の集中する10-15〜10-14mの部分を核と名づけられました。原子番号zの原子は,+z eの正,そのまわりにz個の電子からなるとしました。
 その後、ボーアはエルンスト・ラザフォードの研究所で仕事をするためにマンチェスター大学に行きました。そしてこの訪問がボーアにとって最も記念すべき出来事が待っていたのです。 
 ラザフォードは非常に卓越した能力の実験物理学者で、あの原子がトムソンが唱えたものとはかけ離れていたことを突き止めたのです。つまり、これまでの主張とは違い、原子は密な正電荷の中心核を電子の軌道が駆け巡っているということでした。ラザフォードの発見は、プランクの量子と共に、ボーアを決定的な電子モデルに導き出した2つの重要な因子となったのです。
 ラザフォードの原子が、当時知られていた電気と電子の法則では理解しがたいことにやっとボーアは気付いたのです。問題は、原子の中心核、原子核、を取り巻く多くの負電子が原子核の正電荷との強い電気的引力のために、100万分の1秒より短い時間に原子核と衝突するだろうということでした。ボーアが問題の解決のためにプランクの光量子を利用したのは、この点においてでした。
ボーアの解は、太陽系を考えたとき、太陽の周りを水星、金星、地球、火星、木星・・・の惑星が回っているように、原子の構造も原子核の周りを負電荷が一定の軌道で回っているということでした。
つまり、これがボーアが発見したミクロの太陽系だったのです。また、全ての物質は原子核を中心に負電荷が規則正しく回っていますが、その電子の数でどんな物質であるかが決定されることを突き止めたのです。さらに、原子核を回る負電荷の軌道は正に太陽系の惑星の軌道のように、ある定められた間隔に配置されていることでした。それぞれの軌道に配置される負電荷の数はある計算式で成り立つ数で決まっており、通常の状態では軌道を飛び越えて移動できないことでした。
これは、階段を上り下りするのと同じことで、現在の軌道より高い軌道に飛躍させるためには、階段を上るときのように相当のエネルギーを与えてもらう必要があるのです。これを「吸収された光電子」といいます。逆に、現在の軌道より低い軌道に移動する場合はエネルギーを放出(放射)する必要があります。これを「解放された光電子」といいます。要するに、負電荷が現在の軌道から別の軌道へ飛躍するためには、エネルギーを吸収するか放射することが必要になります。
 ボーアの理論に基づくと、飛躍が起こるのは原子がちょうど適正量の光エネルギーを吸収するときであり、プランクの理論からみますと光の振動数は特別の値にならなければならないということでした。

【Tips】
電子殻(Electron shell)は、原子構造の模型において、原子核を取り巻く電子軌道の集まりをいいます。電子殻は主量子数 n=1,2,3・・・ごとに複数の層を構成しているとみなされ、エネルギー準位の低い方からK殻・L殻・M殻・N殻・O殻・P殻…と呼ばれています。電子殻それぞれに入ることのできる電子の数は 2n2 個に等しいのです。電子殻の下位にはさらに亜殻(electron subshell)があるとみなされています。電子は、量子数の小さい電子殻から順に入ることになっています。このため電子殻の数は、元素によってそれぞれ異なり、元素の周期を決定する要素となります。それぞれの原子の最も外側の電子殻の電子を最外殻電子ともいい、しばしば価電子の役割をします。
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