アンディマンのカルチャークリエート(奏造成)

このブログは、新しい世代の若者を主な対象として掲載します。 特に理科系に強くなれることを目標に、できるだけわかりやすく説明します。 掲載する内容は、画像表現、宇宙論、デザイン、脳科学、工学全般などについてです。 読者の皆さんとの双方向のコミュニケーションをとりたいと考えておりますので、どんどん参加して、忌憚のないご意見を頂けると幸甚です。

January 2009

カラマネの基礎知識 No.1331

149d51bd.jpgカラマネから見た宇宙観 
Vol.5
どこまで見えるか?

図は、ティコの太陽系を示す。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

よく仕事の迷いに落ち込んで、本来あるべき姿を失してしまうことがあります。このような状態を、「木を見て林を見ない」といいます。先に挙げましたオルバースのパラドックス(逆説や矛盾のこと)に対する解答の一部としては、同様のパラドックスである「林を見て木を見ず」と言うことができます。つまり、草原の真ん中に立ち周りを見渡すとそこには木々が不規則に立っています。そして木の分布はどの方向にも一様になっています。
こうゆう状態を良く観察すると、ある地点からある一定距離を離れた地点より外側の木々が見えなくなります。これはどうしてでしょうか?その答えは簡単で、目視される木々によって視野の一面が全て覆い隠されてしまうために、その先が見えなくなるのです。
つまり、見る方向に関係なくある距離を越えてしまいますと、いつも1本以上の木が存在してその先をさえぎってしまうからです。この距離を一般に「見通し距離」といい、木々の存在密度とその平均の幹の太さに関係することが判ります。仮に、林が十分なほど大きければ(例えば、富士五湖の近くにある樹海を想像して見て下さい)、幹がどんなに細くとも、分布がどんなにばらついていても、そこには必ずさえぎる部分があって、常に見通し距離があることは理解できるものと思います。
 星が一様に広がる無限の宇宙空間を考えたとき、同様に見通し距離が存在することは明らかです。つまり、どの方角にも手前に位置する星が存在し、その星に光がさえぎられて我々が住む地球に光が届かないような、そのような星が必ずあるだろうことが判ります。
この遮光によって、何故空が無限に明るくないのかを理解するのに容易であるはずです。

【Tips】メガパーセク
天文的な距離を表すのには光年がよく用いられますが、銀河間の距離や宇宙の構造を取り扱う場合にはメガパーセク (Mpc) が使われることがあります。
宇宙の最大観測可能距離: 150億光年 = 4200Mpc
かみのけ座銀河団までの距離: 90Mpc
超空洞ボイドの直径: 30〜10Mpc
おとめ座銀河団までの平均距離: 20Mpc
アンドロメダ銀河までの距離: 0.7Mpc
銀河系の直径: 0.03Mpc

カラマネの基礎知識 No.1321

49126759.jpgカラマネから見た宇宙観 
Vol.4
オルバースの推論(続き)


 どれでも同じ量の光を放射する数え切れない天球の中心に地球が存在し、天球に散りばめられたそれぞれの星々が宇宙の決まった場所から限りなく、あらゆる方向に光を出していると仮定すると、天空は昼夜の区別なく明るいはずです。
暗いということは、取りも直さず、光を遮蔽したり吸収したりする得体の知れたないものではありません。暗さは、ただ単に光が届かないことといえます。しかし、ニュートンが考えた宇宙の中で、どこにも光がなかったと言うことはあり得ないものになっています。これに対する疑問をオルバースは逆説的に考えました。つまり、仮に宇宙が無限に続き星が一様に分布するならば、一体光はどこに消えてしまったのでしょうか?彼の考え方は、「何か未知の星間物質が最も遠くの星々からの光を吸収しその結果地球は近くの星の光しか得られない」というものでした。しかし、現在ではこの考え方は間違っていることが判りました。そもそも光は電磁波(エネルギー)であるため、光が特別の星間物質で吸収されているとするなら、物質そのものは加熱されてやがて光の放射を始めることになるのです。このことは、タングステン電球に電流を通すとタングステンから熱を出し、やがてその熱を受けて光り輝くという現象と同じことです。
とういうことは、遠くにある星の光も依然として、間接的ではありますが地球に届いているのです。

【Tips】
電磁波(図示)は、空間の電場と磁場の変化によって形成された波(波動)のことです。電界と磁界がお互いの電磁誘導によって交互に相手を発生させあうことで、空間そのものが振動する状態が生まれて、この電磁場の周期的な変動が周囲の空間に横波となって伝播していく、エネルギーの放射現象の一種です。そのため、電磁放射とも呼ばれています。空間そのものがエネルギーを持って振動する現象であるため、波を伝える媒体となる物質(媒質)が何も存在しない真空中でも伝わっていくと考えられています。電磁波の電界と磁界が発生する振動方向はお互いに直角であり、また電磁波の進行方向もこれと直角です。基本的には空間中を直進しますが、物質が存在する空間では、吸収・屈折・散乱・回折・干渉・反射などの現象が起こります。また、重力場などの空間の歪みによって進行方向が曲がることが観測されています。真空中を伝播する電磁波の速度は一定とされ光速度(約30万キロメートル毎秒)と呼ばれています。一方、物質(媒質)中の電磁波の伝播速度は、物体の屈折率によって変化し、屈折率は電磁波の波長に依存するため、物質中での電磁波の伝播速度は波長によって異なってきます。電磁波の性質は、波長、振幅(電磁場の強さは振幅の二乗)、そして伝播方向と、偏波面、偏光の状態で決められます。電磁波を波長変化として考慮したものをスペクトルといいいます。波長の長い方から、電波・赤外線・可視光線・紫外線・X線・ガンマ線などと呼び分けられています。我々の目で見えるのは可視光線のみですが、その範囲(0.4μm〜0.7μm)は電磁波の中でも極めて狭いものとなっています。

カラマネの基礎知識 No.1311

c04280f4.jpgカラマネから見た宇宙観
Vol.3
オルバースの疑問とその推論

画像出典: フジノン天文倶楽部 
 オルバースの疑問は、宇宙全体に拡がる「全部の光はどこにあるのか?」と言うことでした。彼が考えた推論は2つあって、それらは科学的なアプローチによって洞察されたのです。

その1つは、地球が同じ厚さの無限個の球殻の中心にあると考えて、それぞれの球殻の厚みに包まれる空間の体積は、地球からの距離と共に増大していく。そして地球から10億光年、20億光年・・・とその輪(球の半径)を広げてゆく宇宙空間が存在するということでした。もう1つは、星の明るさは地球から離れて行くに従って暗くなっていくということでした。
この推論は、当然の様ですがこのことは重要な意味を持っているのです。つまり、遠い球殻の星の光は近くの球殻より弱い。しかし遠い球殻はもっと多くの星を含んでいるということです。この推論は簡単な幾何学を使えば、この競合する効果がお互いに正確に釣り合うこと、そのためにどの球殻もほかのどんな球殻ともちょうど釣り合った量の光を地球に送り届けていることを究明したのです。遠い距離にある球殻の星の光量不足が、遠い球殻がその不足を埋め合わせるのに十分に足りるだけの多数の星を持っていることによって正確に補うことができるので均等性を保っているのです。
これが、「オルバースの推論」だったのです。

【Tips】
●星の明るさはいつ決められたか?
 
星の明るさを表す「等級」の起源は古く、紀元前2世紀のギリシャにさかのぼります。ヒッパルコス(Hipparchos) という人が、肉眼で見た星を明るさごとに1等星から6等星までに分けて、記録したことに始まると言われています。ヒッパルコスは永年の観測から夜空の最も明るい数個の星を1等星と決めました。その次に明るい星を2等星、次が3等星と決めていき、肉眼でやっと見える暗い星を6等星とし、星の位置と明るさを星図に表したのです。

● 星の明るさを測定した人
 1830年頃、ハーシェルという人が、星の明るさの違いを測定して数字で表わそうとしました。ハーシェルは大きい望遠鏡と小さい望遠鏡を用意して、大きい望遠鏡で暗い星を、逆に小さい望遠鏡で明るい星を見て同じ明るさに見えるとすると、2つの星の明るさの比は、2つの望遠鏡の集光力(面積)がそれぞれの口径(長さ)の比の2乗に比例すると考えました。測定の結果、彼は1等と2等、2等と3等というように各等級ごとの明るさの比は平均で約2.5倍であるということに気づきました。

● 等級を数式で定義する
 1850年頃になると、ポグソンという人が、経験的に捉えていた等級を数式で表そうと試みました。ポグソンは、1等級の明るさの平均を1.00等級と決め、5等級との差を100と決め直しました。この考え方が生まれたことで、より精密に等級が表現できるようになりました。しかし一方でこれまで1等級とされていた星が平均に対して±0.5等の範囲にあることがわかり、全天で一番明るいといわれる「おおいぬ座のシリウス」はー1.5等級となるなど等級の見直しが必要となりました。

● 進歩する測定技術
 精度を高めていく試みは、測定する装置や方法の改良の形で進んでいきました。1920年代に天体写真を用いることで0.1等級まで測定できるようになると、1950年代には、光電子増倍管という真空管で0.01等級が、そして1980年以降にCCDカメラを冷却して使用する方法が考え出されると0.001等級の精度で測定できるようになりました。

● 等級を知るには?
 夜空に輝く星の等級を知るには星図を使います。星図には、星の位置と明るさ(等級)が記入してありますからこれを目安にすると星空観察の楽しさも倍増するのではないでしょうか。尚、星図は書店などで購入することができます。

カラマネの基礎知識 No.1301

57226cf2.jpgカラマネから見た宇宙観 
Vol.2
オルバースの宇宙観


図は、Universum - C. Flammarion, Woodcut, Paris 1888, Coloration : Heikenwaelder Hugo, Wien 1998 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 19世紀のドイツの医学者ウィルヘルム・オルバースは、幼少の頃から多くの疑問を持っていました。旺盛な好奇心を持っていたオルバースは専門外の分野まで手を伸ばして重要な発見をしました。天文学者(数学者でもある)でもあった彼は恒星軌道の性格な計算によって、恒星が太陽の近くにある天体の塵や屑が集散する場所で作られることを発見しました。さらに、火星と木星の間にある「破砕天体」(両惑星の間の空間に集中しているごく小さな塵や屑で構成されてる部分)から小惑星が誕生することを発見しました。

1823年オルバースは「空間の透明性について」という題の論文を発表しました。それは「何故空は昼夜の区別なく、一様に明るくないのか」という問題を考えたものです。これは宇宙が完全に一様ではないことを意味しているのです。つまり、宇宙に存在している1つの星の密度が周りより大きければ、そこら中にある塵や屑は、徐々に、しかも確実に重力の作用する方向に引き寄せられ、その星はますます密度が増してゆき、そのために均衡さが失われ、宇宙の不均衡さが形成され増大されてしまいます。

このようにして宇宙は限りなく増大して、しまいにはあらゆる星が、密度が不均衡になった初期の1点に集積されてくると言うものでした。しかし、実際には宇宙の中心があってそこにとてつもなく大きな質量があるのではなく、「宇宙空間が均衡のとれた状態に星は分布する。そのためこの状態を支えるのに必要な重力が微妙な均衡を得るために、星は一様に分布する」しかないという考え方が導き出されました。

カラマネの基礎知識 No.1291

38ff29d8.jpgカラマネから見た宇宙観 
Vol.1
はじめに

 これから暫くの間シリーズで「カラマネから見た宇宙観」の内容を判りやすく説明します。この内容は以前「Gree Blog」に掲載したものをリニューアルしたものです。
晴天の夜空を眺めた時、宇宙の創生から現在に至る激しくも雄大な宇宙に展開されたドラマを思い起こして頂ければ幸甚です。

 色の起源をたどってきたら、とうとうここまでたどり着いたとしか言いようがありません。色とはこれまで説明した通り電磁波によって表現されることになります。そして宇宙空間には実に見える波長(可視光線)や見えない電磁波(あえてこれも不可視光線として扱います)が非常に多く存在しています。約137億年前にビッグバンという巨大な爆発によってスタートしたのです。それまでは光すら吸収してしまう超重量物体が存在し暗黒の闇を醸し出していましたが、それが自分の力ではでは抑えられなくなってついに爆発してしまったのです。これはとてつもなく膨大なエネルギーで137億年経った現在でも、なお宇宙は膨張(拡大)し続けているのです。
 こうして見ると、ビックバン以来何がどうなったかということが疑問として沸いてきます。それらの疑問は科学的に解明されたものもあれば、未だ解明されないものもあります。

これらの疑問こそ科学者の目を覚ませ、研究の道に走らせたのです。そのお陰で現代科学の基本ができ、学校で学ぶことが出来るようになったのです。
例えば、アイザック・ニュートンはりんごが木から落ちるのを見て「万有引力」を発見したし、アインシュタインは重さの違う物体(鉄球と紙ボール等)が同時に地面に落ちるのを見て「相対性原理」を発見しました。

 光を考えてみても、可視光線は目に見える光ですが、その前後に赤外線と紫外線が存在して、赤外線は熱として感知し、紫外線は日焼けのような現象を作っています。しかし、両方とも眼には見えない光(電磁波)でそれらがどうして判ったのかということも単純に疑問として残りますね。
また、色と光(電磁波)は密接な関係にあり、この電磁波なくして色を語ることはできません。そういった意味で、これから別の世界から色についてアプローチしていきましょう。

【Tips】
光の反射で色が見える!ここに真っ赤なリンゴがあります。さて、太陽光に照らしだされたこのリンゴが赤いのはリンゴ自身が“赤い”から赤く見えると信じていませんか?ところが、そうではないのです!まず、色が見えているということは、太陽から来る可視光線がリンゴに反射し、その光が目に入り、脳で認識されているわけです。実際にこのリンゴは、太陽からの可視光線の内、赤い波長の光を反射し、それ以外の光を吸収しています。その反射された「赤い波長の光」が眼の細胞を刺激し、脳に伝わることによって、りんごは赤く見えています。つまり、リンゴは赤いのではなく、私たちには赤い色として認識される物体だということです。私たちが色を認識する仕組みは、このような少々複雑なプロセスを経ているのです。

空は何故青い? 太陽光は地球の大気中に入ると、空気の分子や、塵、水蒸気などにぶつかり散乱します。その時最も散乱するのが、波長の短い「青い光」です。「青い光」は空高く、あちらこちらに拡散されていますので、空は青く見えるのです。台風が通り過ぎた跡のカラッとした青空が美しいのは、空に水蒸気や、塵などの分子が少ないからです。それでは、朝焼けや夕焼けの空は何故赤いのでしょうか?朝と夕方の時間は太陽高度が低く、太陽は地平線近くにあります。したがって、日中に比べて、太陽との距離が離れています。空で散乱している「青い光」は距離の長い分、たくさんの埃や水蒸気の分子の中を旅します。その結果、「青い光」は散乱しきってしまって私たちに届かなくなります。代わりに、大気の散乱を受けにくい「赤い光やオレンジの光」が私たちに届くことになるのです。
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