アンディマンのカルチャークリエート(奏造成)

このブログは、新しい世代の若者を主な対象として掲載します。 特に理科系に強くなれることを目標に、できるだけわかりやすく説明します。 掲載する内容は、画像表現、宇宙論、デザイン、脳科学、工学全般などについてです。 読者の皆さんとの双方向のコミュニケーションをとりたいと考えておりますので、どんどん参加して、忌憚のないご意見を頂けると幸甚です。

3D に関する最新技術 第28回 (最終回)

3.11 ENG(放送)
3D_New_Technologu_63ENG (Electronic News Gathering) は、直訳すると「電子的ニュース取材」となる。電子的とはフィルムを用いないという意味であり、ニュースに限らず、テレビ番組全般の番組素材の収集のシステムとして、ビデオカメラとビデオテープレコーダ (VTR) の組み合わせ、あるいはVTR一体型のビデオカメラなどにより、番組素材となる映像、音声を収集(取材)するシステムをいう。特にロケ取材に有効で、日本では昭和40年代から50年代のこのシステムの導入により、テレビ番組制作の機動性・速報性は格段に高まった。
・概要
テレビ放送開始後、取材は映画と同じく、光学式記録のフィルムカメラによっていた。フィルムに記録された映像、音声は現像しないことには再生できず、直接、テレビ放送に使うことができない。しかしVTRなどの電子媒体に電気信号として記録(電子式記録)した映像、音声は、伝送装置(FPU)などによって直接、現場から放送局に伝送することも可能であり、その場合、直ちに放送することもできる。
今日ではテレビ局の取材はほとんどがENGであり、現場の映像、音声を、VTRなどの電子媒体に電気信号として記録して持ち帰る、さらにはエンコーダによりデジタル信号とした後、直接放送局に伝送するといったことが行われている。
また今日では通信衛星を用いたSNG(Satellite News Gathering) により、遠方から直接放送局に番組素材を送ることも珍しくない。従来から中継に使われてきたマイクロ波には光のように直進する性質があり、送信所が見渡せない場所からは直接番組素材を伝送することができず、現場と送信所の間に文字通り「中継ぎ」のマイクロ波の基地を設ける必要があった。特に山間部などの僻地ではそうした基地を2段、3段も設ける必要があった。SNGの登場により、ほとんどの場所から簡単に中継できるようになった。
これらはすべて光学式記録から電子式記録に移行したことにより可能となったもので、ENGの報道に与えた影響は大きい。導入当時はENG革命といわれた。
・歴史
フィルムカメラは小さく、ケーブルでつながれるVTRもないため、ロケ取材する上での機動性はあったが、撮影済みフィルムの運搬と現像、そしてフィルム切り貼りする「編集」に時間を要した。特にニュースを送り出す上でこうした時間は速報性の死命を制する問題だった。例えばベトナム戦争の取材では、アメリカのテレビ局などは戦地で撮影したフィルムを日本へ空輸し、東京都内の現像所で現像してから通信衛星で本国に伝送して放送していたという。これがENG革命以前の報道の実態であった。
VTRはすでに1960年代には使われるようになっていたが、当時はカメラもVTRも巨大な装置であり、大型バスのような中継車に設置しない限り移動撮影は困難だった(VTRが使われたのは重大な事故や自然災害、大規模なスポーツイベントなど中継を伴う場合に限られていた)。また初期のVTRはオープンリール方式で、テープの交換に手間取ることから一刻を争う取材には不向きなものだった。
1970年代に入り、3/4インチ幅のカセットテープを使用したUマチック方式のVTRが開発・発売されるようになり、据え置き型に加えて電池で駆動可能なポータブル型も提供されるようになった。Uマチックは民生業務用で、当初放送局では画質が劣るとして積極的に使用されなかったが、1970年代初期にアメリカ合衆国のテレビ局で迅速な報道に有利であるとして同時期に登場したハンディカメラ(小型の肩乗せ型カラーテレビカメラ)と短いケーブルの組み合わせで報道に用いられるようになった。日本においては1974年にフォード大統領が来日した際に、アメリカの取材スタッフがENGを使用していたことからENGの可能性が注目されるようになった。
やがて1/2インチVTRを組み込んだ一体型テレビカメラが現れ、機動性はさらに高まった。カメラとVTRが分離している3/4インチ型のENGはカメラマンの後ろにVTRをかつぐ要員を必要としたのに対し、一体型カメラの場合はカメラマン一人で撮影できるようになったからである。
重大なイベントや事件・事故で行われる報道合戦で、ENGはフィルムの現像や切り貼り編集の時間を不要とし、場合によっては取材現場から中継機材を用いて映像信号を直接放送局に送ることで、フィルム取材では得られない速報性をニュースの現場にもたらした。
このため、1974年頃からCBS・NBCなどによる大量採用もあり、急速に普及した。Electronic News Gatheringという用語は、このころCBSのエンジニアが名づけたというが、通常はアクロニムの「ENG」が使用される。
日本では取材現場がやや保守的で、報道カメラマンが電子機器のテレビカメラやVTRの使用に難色を示したことや、機材が大きく・重くなることを嫌ったため普及はやや遅れた。海外で普及していたENG機材は、ソニーや池上通信機、日本ビクターといった日本メーカー製のものが多かったことを考えると、皮肉でもある。
特に、NHKでは職員組合(日本放送労働組合、略して日放労)との調整に手間取り、民間放送局の後塵を拝することとなった。しかし、1975年(昭和50年)の昭和天皇訪米報道を機にENGを正式採用すると、その後は積極的に新技術の採用を進め、1980年代になると放送機器メーカーとの共同開発などにより一体型小型カメラの大規模採用などを行い、ENGのみならずスタジオ機材でも民間放送局をリードする存在となった。
ENGへの全面転換は、日本ではローカル民放局でまず起きた。これは、設備を白黒からカラー化にする際、フィルム現像所の更新、あるいはENGの導入でカラー化するかの選択に迫られたためである。1976年1月にテレビ高知(番組名はイブニングKOCHI)で全面的にENG取材に切り替えたのが先駆けである。

「お知らせ」
このブログを閲覧して頂き誠にありがとうございます。
このブログは、自己啓発を込めてまとめたものを掲載してきましたが、一身上の都合があって今回が最終回となります。
次回以降は予定しておりませんが、筆者のホームページ「http://advantec.client.jp」より別の形で掲載してありますので、興味があれば、引き続き閲覧して頂きますようお願いします。

長い間お付き合い頂きましたことに対して、心より感謝申し上げます。

3D に関する最新技術 第27回

3.10 リニア編集
 3D_New_Technologu_60リニア編集は、ビデオカメラで録画されたりスタジオ収録されたりしたビデオテープに記録された画像と音を選択し、整えて、修正する過程である。1990年代はじめにコンピュータによるノンリニア編集が登場するまでは、リニア編集は単に「ビデオ編集」と呼ばれていた。
・切り貼り
アメリカで最初に広く使われたビデオテープは2インチで、幅が広く毎秒30インチの走行速度であった。ヘッドとテープの相対速度を十分に得るために、4個の映像用記録・再生ヘッドが取り付けられた回転ヘッドが全幅2インチを横切る方向に回転する。(音声トラックと同期トラックは固定ヘッドによりテープの端の部分に長手方向に記録される。) 4個のヘッドで記録再生したので、このシステムは4ヘッドVTRと呼ばれていた。
これにより記録されるビデオトラックは、90度からわずかに小さいものである。(毎秒30インチで移動するテープを横切ってトレースする高速の回転ヘッドのベクトル加法を考える)
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当初、ビデオテープはフィルム編集と同様に物理的に切り貼りすることにより編集された。これは骨の折れるプロセスで、あまり広くは行なわれなかった。まず編集するテープを、非常に細かい鉄粉を浮遊させた四塩化炭素で「塗装」する。この下作業により、磁気トラックが「現像」されたようになり顕微鏡で磁気トラックを見ることができるのだ。切り貼り作業のために設計されたスプライサという機材でテープの切るべき位置の見極めを行う。トラックは奇数フィールドと偶数フィールドを乱すことなしに垂直ブランキング区間で切らなければならない。さらに、ビデオトラックと同じ角度で切らなければならない。
また、映像と音声の読み込み位置が数インチ離れているので、映像・音声両方において正しい位置で物理的編集をすることは不可能であった。カットは、映像のためになされた。そして、それから一部の音声を正しい関係にコピーする。(磁気録音帯のある16mmや8mmのフィルム編集をするときと同様である。)
物理的切り貼り編集の欠点は多かった。ビデオテープが高価な時代にあって、編集後のテープの再利用ができない。テープを切り貼りするときに正確さとスキルを要し、うまくいかないと編集点で映像が乱れたり、テープ走行中に切れてしまったりする。そして編集ごとに数分かかった。
この方法を広範囲に利用した最初のそしておそらく唯一のテレビ番組はRowan_&_Martin's_Laugh-Inである。
・電子編集時代へ
10年以上の間、コンピュータ制御の4ヘッドVTR編集システムは、テレビ番組用として標準的なポストプロダクション機材であった。2インチテープは巻き込むことがあり、高価なハードウェアであり、セットアップに時間がかかり、編集ごとに長いロールバックを要し、ビデオに不愉快な「バンディング」と呼ばれるミスアラインメントを生じる。特筆すべきこととしては、2インチテープが他のどんな小さなフォーマットのアナログ・テープよりもよい帯域幅を持っている点である。このシステムを適切に扱えば、生カメラと判別不能な絵を出すことができた。
・発展期
ヘリカルスキャン方式VTRが標準になった時、物理的にテープをカットすることはもはや可能ではなかった。この頃、ビデオ編集は2台のVTRを使い、1台のVTRを素材出しにして、もう片方のVTRを受け手にして希望する部分をコピーする作業となった。
2台のVTRとコントローラによりリニア編集の大半の作業は簡単になった。多くのVTRは二台目のVTRをリモートコントロールする機能を持ち、それにより外部編集装置を省くことができる。
この作業は実に「リニア」(線形)と言える。全てのショットを最終的な編集状態の順番どおりに並べるのに「tape to tape」コピーを必要とするという性質は、ノン・リニアというより、リニアそのものである。一旦ショットをテープに記録してしまったら、すでにそこにあるものを上書きすることなく、それより前の部分にインサートすることができない。後ろの部分を繋ぎなおす必要に迫られる。もう1つのテープの上へ編集された内容をコピーし、やり繰って、必要な素材をインサートすることもできるのですが、コピーを繰り返して世代を経ると画像劣化をもたらすので、これは望ましくない。(アナログ時代なのでどんどん映像信号が鈍っていく)
初期のビデオ編集技術の1つの欠点は、エグゼクティブプロデューサーの試写のためにラフ・カット(荒編集時にたくさんのパターンを作成すること)が非実用的だったということである。エグゼクティブプロデューサーが最終的な絵作りに至る判断項目の吟味に、決して最初からわかっているわけではないので、尺調整やカット差し替えなどの試行錯誤や手直しについて、作業自体は簡単に出来ても、意見を表明する機会が少なからず奪われることになった。このように、特にドキュメント番組の中で、非常に長い間ビデオ編集というものは抵抗された。(我慢がいるものであった)
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1970年代後半にコンピュータ制御の編集機が開発されたとき、ビデオ編集はその完全な可能性に達した。そして、それは複数のVTRと周辺機器を同期させるためにtimecodeを用いてEDLに基づく編集をまとめあげることができた。最も人気のあって広く使われている編集機は、ソニー、アンペックスと尊敬に値するCMXから登場した。これらのようなシステムは、高価であり(特にVTR、プロダクションスイッチャー、文字発生装置、DVEのような周辺機材を含めると)、通常ハイエンドのポストプロダクションに限られていた。
・現在
コンピュータを使ったノンリニア編集が、テレビコマーシャル、映画、企業用あるいは一般消費者のビデオ製作に広く使われるようになった。一方で、ニュース番組素材編集では従来のリニア機材がごく普通に使われているし、媒体によってはノンリニアの新規機材による機材更新は行わないところもある。ノンリニアへの取り込みの時間と作業時間の兼ね合いで、手っ取り早さでリニア編集室に利点がある場合があるからだ。リニア編集機材にノンリニア機材、ディスクレコーダなどをぶら下げてリニアとノンリニアのハイブリッド化、いいとこどりを目指す編集室も現われている。

3D に関する最新技術 第26回

3.9 ノンリニア編集
 ノンリニア編集(Non-linear editing)は、コンピュータを使用した非直線的(ノンリニア)な映像編集方式のこと。2台以上のデッキを使いテープからテープへ映像をコピーするリニア編集に比べ、編集箇所を自由に選択でき、映像データを即座に追加・削除・修正・並べ替えることができる利点がある。1990年代に登場し、PCと共に急速に普及した。
3D_New_Technologu_60編集システムとしてはAvid、Adobe Premiere、Corel Ulead VideoStudio、Final Cut Pro、flame、Kino、Canopus CWSシリーズ、Canopus HDWSシリーズなどが代表的である。
1990年代になると、VTRを使用して実時間以上を要する編集を克服するためのブレークスルーがランダムアクセス記録媒体を用いた記録装置によって実現された。 1980年代の終盤からHDDやDRAMを用いた記録装置が一部の放送機器メーカーから発売された。これらはD2コンポジットデジタルあるいはD1コンポーネントデジタル形式で数分程度の記憶容量しかなかったが、一部の編集プロダクションで多重合成編集を行う場面などで用いられた。
1990年代の初期、全素材をHDDに収録し、ランダムアクセス機能を利用して必要な場面だけ飛び飛びに再生する編集システムが登場した。一連の再生の順番を記述したプレイリストに再生開始・終了点を指定し、それに従って再生することで編集結果が得られるもので、記録媒体間で一切コピーを行わずに済む。インサート編集も編集のやり直しもプレイリストの内容を変更するだけで行える。場面転換で複数素材の合成を行う場合も、複数箇所同時再生が可能な記録再生装置を用いればA/Bロール機能相当の編集が可能になる。また必要な場面の先頭映像をキャプチャし縮小映像としてGUI画面に表示することにより、複数の場面への頭出しが容易にできるなど、編集作業の効率化をもたらすものであった。
初期の製品はPCベースでHDDの記録容量は小さく、低ビットレートに圧縮した映像しか扱えなかった。このためオフライン編集にしか用いることができず、番組やCM編集に関わる人からはそれほど評価されなかったようである。
しかし、ニュース制作の分野などから米国を中心に徐々に普及し、HDDの大容量化、ハードウェアの高速化、高効率符号化(圧縮)技術の進歩により放送画質の編集・制作が可能になった。特にニュース編集システムでは、素材をテープからHDDにコピーしたあとは自由に編集してそのまま送出可能なため、非常に効率のよい運用が可能になることから、普及が進んでいる。初期のノンリニア編集システムの代表例としてはMacintoshIIを用いたAvidや、Amigaを用いたVideo Toasterが良く知られる。現在ではより高品質、大規模なシステムが多くの放送機器メーカーから供給されており、編集から送出まで一括して行えるビデオサーバとして用いられている。
一方、イギリスのQuantel社の「ヘンリー」、カナダのdiscreet社の「インフェルノ」など、複雑な映像合成に絞った高画質・高機能なシステムもあり、CGや画像処理の機能も含めた制作工程で用いられる。
また、PCの高性能化や記録形DVDの普及により、PCベースのノンリニア映像編集システムが個人や業務用として用いられるようになった。今日では、市販のDVDレコーダーやHDDレコーダーで簡易なプレイリスト編集ができるようになっている。
 ノンリニア(非直線的な)つまり、ビデオテープの代わりにハードディスクなどを使用した編集。画像及び音声をハードディスクなどにデジタル化して記録することにより、ランダムにアクセス可能な環境で編集を行なう。コンピュータならではの機能を用いて、並べ替え、カット&ペーストなどの編集方法、時間軸にとらわれない編集が可能であり、編集時の作業時間の低減が可能となった。ハイビジョンのノンリニア編集システムに、オフライン編集では、AVIDメディアコンポーザーなど、オンライン編集では、HDインフェルノ、HDファイアーなどがある。これとは反対に、「リニア編集」(次回掲載予定)がある。
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3D に関する最新技術 第25回

3.8 映像編集
 映像編集は、映画、ビデオ、テレビなど、映像・音声を伴うメディアにおける編集のことである。フィルムなど光学・化学的媒体を用いるもの、VTRなど、電磁気的な媒体を用いるものがある。
・概要
3D_New_Technologu_59フィルム時代の編集では、フィルムそのものを切って貼る形の編集が用いられていた。しかし、VTRの時代になり、黎明期をのぞく多くのVTRが「切り貼りが困難」だったため、素材テープを編集先テープにコピーする形が主流になった。最近ではノンリニア編集といい、ハードディスクに映像データをコピーしたあと、そのデータを演出意図に合わせて出力する形の編集方法も多く使われるようになってきている。
・編集作業の流れ
まず、収録した全ての素材から明らかな失敗や不要な収録単位(テイク)を除き、番組を構成する部分を整理して、番組で用いる映像部分を大雑把に切り出す作業を行う。(粗編集(あらへんしゅう)などという)。この段階では映像を特に加工せず、切り出してVTRテープなどの記録媒体にまとめていく。
次に、選ばれた素材を番組制作意図に従ってつなぎ合わせる。この段階では素材の調子を整えたり、特殊効果を施したり、場面転換の効果を与えるなど様々な技法が用いられる。また、この段階でタイトル・クレジット入れも行われる。
映像の編集が終わると、MA(マルチオーディオ:Multi Audio:但し和製英語)という音声編集作業を行う。背景音楽や効果音の選定、台詞のアフレコ等などを行い、演出意図に合わせて挿入する。その他、編集後の映像素材のノイズ除去なども行うことがある。
様々な作業を経て制作者のOKが出ると、記録媒体(標準テレビ放送の場合にはDVCPRO-HDやHDCAM等のビデオテープが一般的)に収録し、完成となる。出来上がったテープは「完パケ」と呼ばれる。この工程は通常放送局外の編集専門のポストプロダクション(事業者)の貸し編集室を用いて行う事が多い。
・様々な映像編集
−テレビ放送の場合

テレビ放送開始当時、VTRはまだ開発されていなかった。そのため、映画技術であるフィルム編集が用いられた。その後、VTRが開発され、価格的にも使いやすくなるとともに、そのまま映像信号を扱うことの出来るVTR編集やノンリニア編集に移行した。
−テレビ番組の場合
近年ではバラエティ番組を中心に、文字スーパーによる補足が頻繁に付加することが増えてきている。
−ニュース素材の場合
ニュースの取材映像はドラマなどと異なり、取材後すみやかに放送する必要があるため、報道意図に沿った場面を選択して数十秒から数分程度の映像にまとめる点で大きな違いがある。このため、編集作業は放送局の報道部門が持つ編集室で行われるのが普通である。編集機材も迅速な編集を第一とするため、取材用カメラ一体型VTRのテープを直接再生して編集作業ができるような機材構成としている。最近では後述するノンリニア編集技術を用いたニュース編集システムも利用されている。
・映像編集技術
ポストプロダクションで用いられる映像編集技術は多岐にわたる。映像の高品質な編集を効率的に行うため、最新の映像編集設備を備える装置産業であるとともに、制作者の意図を汲み取って迅速に映像の合成や特殊効果を実現する職人芸を要求される仕事でもある。職人芸には映像の質に対する鑑識眼や映像のつなぎの間をはかるセンスなども要求される。
個々の編集技術に関するトピックの一例として次のようなものがあげられる。
・フィルム編集
−VTR編集

VTR編集では、黎明期を除き、コピーしたフィルムをつなぐ代わりに素材テープを編集先テープに順次コピーして、一続きの作品を作る手法がとられている。素材テープを再生するVTRを2台用意することにより複数の映像を合成した編集も可能になった(ABロール編集)。なお複雑なはめ込みなどをしない場合でも、ひとつの場面から別な場面に移行する際に両者を二重に移しつつ徐々に切り換えるディゾルブまたはクロスフェードと呼ばれる効果を作るためには2台の再生機が必要になる。
高度な編集としては収録済みのテープの途中を別な映像で置き換えることもある。これはインサート編集と呼ばれ、記録済みの磁気パターンだけを消去し、それを書き換える必要があるため精密な記録位置制御技術が必要である。これに対し記録済み映像の後ろに継ぎ足し記録を行う編集をアッセンブル編集と呼ぶ。
VTRによる編集を可能にした技術のひとつは、フィルムと同じフレーム(こま)単位での編集を可能にする同期技術である。これには各フレームに番号を振る信号であるタイムコード技術の実用化や、タイムコードによって記録されたフレームを特定するための制御技術が貢献している。フィルムに比べると、編集結果が直ちに確認でき、やり直しが容易な点で効率的である。欠点としてはアナログ記録方式であるため、再生/記録を繰り返して行うたびに映像信号の劣化が起こることである。このため、あまり複雑な合成は行うことができなかったが、デジタルVTRやデジタル編集機器の普及によりこの欠点は克服された。
映像編集技術者がVTRを自由自在に操ることができるよう、専用の編集機が多数開発・商品化された。これらは小型の操作卓様のものから、キーボードとディスプレイを持つものなど機能により各種ある。
−オフライン編集
いずれにしてもVTRを用いた編集は元素材を再生して、別なVTRの出力用テープにコピーする作業の繰り返しであり、素材の長さに応じたコピー時間を要するという性質があった。 また、元テープから必要な場面を探すのにも無視できない時間がかかった。これは特に高価な編集室を借りて編集作業を行う際にコスト上昇の要因とされた。これを軽減するため、次のような方法が取られた。
素材を一旦安価な機材で使えるフォーマット(たとえばベータカム、S-VHSなど)にコピーする。
小規模な編集システムで編集を行ってその手順をタイムコードを用いた編集手順の記述(EDL)として記録する。
得られたEDLをポストプロダクションに持ちこみ、高品質な編集機材で正式な編集作業(オンライン編集)を行うことで試行錯誤のためのコストを低減することができる。
このような編集手法をオフライン編集と呼ぶ。
・ノンリニア編集
−映像編集機材
ここでは、VTR編集の機材・技術について述べる。これらは、編集作業が一変したノンリニア編集システムでも現役で使用されている。
−プロダクションスイッチャー
様々な映像素材の選択と合成・効果の付与を行う。基本的には入力素材(素材再生用のVTR、文字発生器、CG装置など)の選択を行うマトリックススイッチャ、選択された複数の出力を合成するミクサー・キーヤー部分(MK、MEなどという)を持ち、合成された映像に対しさらに文字や図形を重畳するスーパープロセッサ・クロマキーなどが後置される。ミクサー部分の合成機能としては、2素材間のカット・クロスフェード・ワイプなどの画像の移動や拡大縮小を伴わない切り替え効果をもつ。
−デジタル特殊効果装置
DVE(Digital Video Effect)、DME(Digital Multi Effect)などと呼ばれる。フレームシンクロナイザー(FS)の応用として生まれ、フレームメモリへの記録・再生アドレスの発生方法を適切に制御することにより入力素材の拡大縮小・平行移動・回転移動・変形などスイッチャーでは出来ない効果を与える。スイッチャーに組み込まれることも多く、ワイプ効果に連動した拡大縮小や平行移動、ページめくり効果が場面転換にしばしば用いられる。実時間で効果を発生するためにはNTSCでも1画素あたり数十nsの時間しかとれないため、ハードウェアで演算処理を行ってきたが、近年のCPUの処理性能の著しい向上に伴い、PC/WSベースのノンリニア編集機ではソフトウェア処理で主要な機能が実現されている場合もある。
−文字発生装置
キャラクター・ジェネレーター(CGと略されることがあるが、コンピュータグラフィックスと混同しやすい)は、コンピュータを用いて字幕などの文字を表現した映像信号を生成する装置である。初期にはビットマップ文字フォントを用いたものが用いられたが文字解像度が低いため見栄えが悪く、放送局ではあまり使われなかった。後にベクトルフォントを用いて自由に書体やサイズが表現可能になり、ひろく普及した。実用製品としては、文字を発生させるだけでなく合成のためのリニアキー信号発生機能も持たせることで、影付き文字や半透過の背景(通称「座布団」)なども容易に実現できる。さらに、文字を画面周囲から中央まで移動させたり、文字サイズを変えたり回転させる効果を得るための機能を持つものもある。この機能があるとDVEを映像処理に割り付けた場合でも自由に文字効果を与えられる。 また文字色をワイプ機能によって端から徐々に変化させる機能は、カラオケの歌詞ガイド表示に必須である。
−スーパー処理装置
スーパーインポーズは、文字や図形を画面に合成するための処理装置である。もっとも単純には、黒地に白文字(逆でも良い)の文字素材を撮影したもの(テロップ)を輝度信号でスライスして2値キーを得、これを用いて文字を入れたい映像と全面単色の画像を合成する。文字色は自由に設定できる。2値キーでなく、リニアキーを用いると文字の境界をソフトにすることもできる。また、文字の周囲に縁取りを施したり(エッジ効果)、文字の脇に影をつけたり(シャドウ効果)、文字色を単色でなく色や輝度の階調をつけるなどの効果を持つものが多い。

3D に関する最新技術 第24回

3.7 写真編集
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 編集ソフトウェアで合成・編集された写真 ‪アウグスト・デ・ルカ:ポラロイド,1986‬‬‬‬‬‬‬‬ ‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬
  
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写真編集(Photo editing)とは、アナログ/デジタルを問わず写真画像を修正する技法を意味する。フォトレタッチ(Photo retouch )ともいう。これを職業とする人をレタッチャーという。写真編集することで誰かを騙そうとする意図がある場合、これを改竄(かいざん)と呼ぶ。
・フォトレタッチとレタッチャー
「フォトレタッチ」と「レタッチャー」の呼称は主に和製英語であり、世界的には主にフォトリタッチ(photo retouching)とリタッチャーretoucher)と呼ばれる。
・デジタル写真編集の種類
デジタル編集では、デジタルカメラなどで撮影した写真を直接コンピュータに取り込む。デジタル写真がない場合、リバーサルフィルム、ネガフィルム、印画紙に焼き付けられた写真をイメージスキャナでデジタイズする。ストック写真データベースを利用することもできる。コンピュータ、グラフィックスタブレット、デジタルカメラの出現により、写真編集という用語は暗室での作業とコンピュータ上の作業の両方を指すようになった。写真編集は一般に非常に微妙なもの(色調やコントラストの修正など)だが、大胆な編集(頭と体を挿げ替えたり、サインを書き換えたり)もある。画像編集ソフトウェアは各種効果を適用したり様々な技法で画像を改変したりできる。場合によっては、写真編集後の結果は編集前と比較すると似ても似つかない画像となっていることがある。
・歴史
コンピュータ以前の写真編集は、インクや塗料を加筆 (retouch) したり、二重露光したり、写真やネガを暗室で繋ぎ合わせたり、ポラロイド写真を引っかいたりして行われた。エアブラシも使われていた。欧米ではエアブラシによる写真編集を "airbrushing" と呼んだ。
記録にある最初の写真編集の例は1860年代初頭のことで、ジョン・カルフーンの肖像の身体とエイブラハム・リンカーンの座っている写真(マシュー・ブラディ撮影)の顔部分を繋ぎ合わせ、立っているリンカーン像にしたものである。
1980年代には、Quantelのコンピュータとその上で動作するPaintboxやScitexという専用ワークステーションが登場し、デジタル写真編集が可能となった。1980年代後半にはシリコングラフィックスのワークステーション上で動作する Barco Creator が登場し、その後各社が画像編集ソフトウェアを発売した。今では事実上 Adobe Photoshop が市場をほぼ独占している。
・暗室での操作
デジタル写真編集は誰でもできるが、暗室での編集は単なる技能というよりも芸術的才能が要求された。その技法はデジタルの場合とほぼ同様だが、同じような効果をもたらすには遥かに難しいスキルを要求される。
・政治的・倫理的問題
3D_New_Technologu_57写真編集は写真が誕生したころから行われてきた。写真は社会的に見れば、本質的に写実性を備えている。写真編集は見る者をだまして納得させるために行われたり、物語性や判り易さを強調するために行われた。アメリカ南北戦争のころには、写真は複数のネガから彫版として出版されていた。
ヨシフ・スターリンはプロパガンダ目的で写真を改竄させていたと言われている。1920年5月5日、前任者ウラジーミル・レーニンがソビエト軍への演説を行った際、レフ・トロツキーも出席していた。スターリンはそのときの写真を改竄させ、トロツキーが出席していなかったように見せた。NKVDのリーダーであったニコライ・エジョフはスターリンと共に写真に撮影されたことがあるが、1940年に処刑されると、その写真が改竄された。これらは一種のダムナティオ・メモリアエである。
1930年代、ジョン・ハートフィールドはナチのプロパガンダへの批判としてフォトモンタージュと呼ばれる写真編集技法を使用した。写真のニュース価値を高めるために写真編集を行った最初のジャーナリストとして、1920年代のベルナール・マクファデンと彼の合成写真が有名である。
現代のデジタル・フォトモンタージュのスタイルと技法は、特にイギリスのデザイン・グループであるヒプノシスによるシュールレアリスム的なアルバムカバー写真により、1960年代末には予期されていた。
画像の改竄については、いくつかの倫理的理論が提案されている。画像改竄の倫理を主題とした討論で、Aude Oliva は写真編集が改竄とみなされるには明確なシフトが必要だと想定した。Image Act Theoryにおいて、Carson Reynolds は言語行為論を写真編集と改竄に拡大適用した。How to Do Things with Pictures において、William Mitchell は写真の改竄の長い歴史を詳説し、批判的にそれを議論している。
・報道写真の編集
1982年、ナショナルジオグラフィック誌の表紙写真の編集が論争となった。編集者は表紙に収まるように2つのエジプトのピラミッドの距離を縮めてしまったのである。この件で報道における写真編集の妥当性が議論されるようになった。反対派は、その雑誌が現実には存在しないものをあたかも存在しているかのように描写していると主張した。その後も同様の問題はいくつか発生している。例えば、 Redbook (アメリカの女性誌)の表紙にシェールの写真が使われたとき、彼女の笑顔とドレスが修正されている。2005年、マーサ・スチュワートが釈放されたとき、ニューズウィーク誌の表紙を飾ったが、それには彼女の顔をスリムな女性の体に繋ぎ合わせた写真を使って、刑務所で減量したことを示そうとした。
写真編集に関する他の論争として、人種問題も絡んだ件が1994年夏に発生した。O・J・シンプソンが申し立てにより彼の妻と彼女の友人を殺した容疑(O・J・シンプソン事件)で逮捕されると、複数の出版物が彼の顔写真を掲載した。このとき、タイム誌が写真に修正を加えて顔色がより黒く見えるようにして、囚人ID番号を小さくした。この雑誌は修正されていない同じ写真を使ったニューズウィーク誌と並んで売られたため、その違いが際立つ結果となった。
2006年のレバノン侵攻の際にアドナン・ハジという記者が行った写真改竄の例がある。彼は、写真を改竄して爆煙を本物より大きくしたり、閃光を複写してミサイルの数を増やしたりした。
報道写真のデジタル編集使用については、倫理規定の文書化が進んでいる。例えばアメリカ合衆国の全米報道写真家協会 (NPPA) が写真家に対して「見る者に誤解させたり、主題を誤り伝える可能性のある画像処理をしない」よう、出版される画像の正確さを徹底するための倫理規定を定めた。規定違反、特に出版された写真がデジタル編集によって改竄されていた場合は深刻に受け取られる。例えば、ピューリッツァー賞候補にもなった写真家 Allan Detrich は、彼がこれまで発表してきた写真の多くが改竄されたものだったことが発覚して職を追われた。
・社会や文化の影響
画像の改竄は日常茶飯事となりつつあり、そのために一般大衆は常に提示された写真が本物かどうかを疑うようになってきた。スーザン・ソンタグは "On Photography"(1977年、邦題は『写真論』)の中で、写真における客観性および客観性の欠如を論じている。雑誌においてはPhotoshopを使った写真編集は普通に行われており、日々リアリティの構築がなされていて、現実と虚構を区別することは難しくなりつつある。
・フォトショッピング
 
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16枚の写真をデジタル画像として合成し、本当の景色であるかのように見せたもの。Adobe Photoshop を使用している。
フォトショッピングとは、写真のデジタル編集を指す俗語である。Adobe Photoshopに由来する用語であるが、同様の画像編集ソフトとしては Paint Shop Pro、Corel PHOTO-PAINT、GIMP などもある。Photoshop の発売元であるアドビシステムズはこのような用法を好ましく思っていない。商標の普通名称化を懸念していると思われる。
アドビの思惑に反して photoshop は動詞としても普通に使われるようになり、写真を編集・合成したり、色調を調整することを指すようになっている。
ポップカルチャーでは、photoshopping はフォトモンタージュをジョークに使うことと関係付けらることがある。それは例えば fark.com に見られるような画像や MAD誌に見られる画像である。フォトショッピングされた画像はミーム的に電子メールなどを媒体として広まっていく。有名な画像としては、サメとヘリコプター がある。これはナショナルジオグラフィック協会の 'Photo of the Year' であるとしてかなり広く流布したが、デマであることが明らかとされた。

3D に関する最新技術 第23回

3.6 イメージングサイエンス(続き)
・パノラマ化

以下の例では、画像1、画像2、画像3、画像4、画像5をパノラマ作成用ソフトウェアで合成し、不要部分をトリミングしてパノラマを作成している。
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・自由変形(もしくは「遠近法」機能)
画像を任意の方向(一方向、もしくはニ方向)に傾斜させることが出来る。元々傾斜した状態での撮影写真や、創作者の意図により描かれた絵画・CGなどを真正面イメージに補正させる等、主に3次元コンピュータグラフィックスのテクスチャマッピング画像データ素材の作成に用いられる。
・ヒストグラム
画像編集ソフトウェアによっては、画像のヒストグラムを使って編集することができる。この場合のヒストグラムは、画像内の輝度ごとのピクセル数をプロットしたものである。例えば、ヒストグラム上で画像の明るさやコントラストを調整するといった使い方をする。
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・ノイズ除去
画像のノイズは、被写体の明るさが足りない場合や感度を高くしすぎた場合に発生する。画像編集ソフトウェアはこれを除去するアルゴリズムを備えている。逆に、画像に古めかしい雰囲気を与えるためにノイズを追加する場合もある。
 ・不要な要素の消去
多くの画像編集ソフトウェアは不要な要素を取り除く機能を備えている。不要なものを取り除くことで画面の構成が良くなる。
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・色の選択的変更
場合によっては、色を選択的に変更する機能を持つものもある。領域を設定し、指定した範囲の色を選択的に変更する。
 
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グラデーション
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・回転・反転
画像の回転は、90°単位の場合もあるが、一般に任意の角度に回転させることができる。鏡像を作ることもでき、左右に反転させたり、上下を反転させることもできる。
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複数の画像をマージして1つの画像ファイルにすることもできる。どうマージするかはユーザーが制御可能。ここに示した例は、元々別々に撮影された写真である。
・スライシング
スライシングとは、Webページで画像の個々の部分にリンクを設定するなどの機能を付与する際に使われる機能である。画像を分割してラベルを付けて、全体とは分離して格納する。画像の部分的なアニメーション化などが可能。
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・特殊効果
画像編集ソフトウェアには様々な特殊な効果を施す機能がある。画像を斜めにしたり歪めたり、アート的効果を与えたり、テクスチャ効果を与えたりといった機能である。
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・色深度変更
画像の色深度を変更することもできる。通常、フルカラー画像を確実に表示できる色数やグレースケールになるよう色深度を小さくする編集を施す。
・レンズによる歪み矯正
レンズを通して撮影された画像には、樽型歪み、糸巻き型歪みなどがあり、魚眼レンズで撮影した画像にそれが顕著に現れている。これらの歪みを矯正するソフトウェアもある。一般に歪みは微妙であるが、矯正によって見た目が改善される場合もある。
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・コントラスト調整と明るさ調整
コントラストと明るさの調整は画像編集の基本であり、これによって見た目が改善される画像は多い。最近では、明るさが指定した閾値以下のピクセルだけを明るくしたりでき、好ましくない影の部分だけを明るくしたりできる。
・シャープネス
シャープネスとは、画質の堅さであり、画像編集ソフトウェアではこれを修正することもできる。例えば、人物写真は画質をソフトにすることで見た目が改善されることもある(特に、背景をソフトにすると人物が際立つ。カメラの絞りを使って被写界深度を狭くするのと同じ効果をソフトウェアで人工的に作り出すのである)。ストロボを使った写真では人物の瞳が赤く写る「赤目効果」が発生することがある(特に周囲が暗い場合、瞳孔が開くため、ストロボの光が反射して赤く写る)。赤目補正も画像編集ソフトウェアによっては可能である。シャープネスを強化する方法として輪郭強調があるが、結果が不自然になることもある。
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・色補正
画像の色は様々な方法で修正できる。色を段階的に変化させたり、色調を変えたり、色のバランスを改善したりする。室内で昼光用(デイライト)フィルムで撮影した画像や、色温度の設定を間違って撮影した画像では、色補正が必要となる。
・印刷
デジタル画像を印刷する場合、画質と印刷サイズの関係を知っておく必要がある。画像ファイルには印刷される際のピクセル密度(pixels-per-inch、ppi)が設定されており、画像編集ソフトウェアで設定を変更可能である。印刷サイズはピクセル数と印刷時のピクセル密度で決定され、逆に印刷サイズを決定すれば、ピクセル密度が決定される。従って、無理に拡大印刷しようとするとピクセル密度が低くなり、画質が低下する。例えば、1600×1200ピクセルの画像を 200ppi で印刷すると 8×6インチになる。同じ画像を 400ppi で印刷すれば、4×3インチとなる。どちらの印刷物も同じデータ(1600×1200ピクセル)を含んでいるため、小さく印刷された方が画質がよい。もちろん、印刷時の画質はプリンタの性能にも左右される。

3D に関する最新技術 第22回

3.6 イメージングサイエンス
 イメージングサイエンス(imaging science)とは、複雑であったり本来不可視である事象を、画像化や動画化等によって可視的にわかりやすく表現しようとする科学である。
3D_New_Technologu_44・概要
磁力線、超微細な構造、超望遠のものなどは不可視であったり、観測は難しい。また脳の活性を測定するには非侵襲的である必要があるなど様々な阻害要因があった。しかし、近年の科学技術の発達によってそれらを測定することが可能になり、科学の世界でイメージング(画像)が重要な方法論として発展しつつある。
・画像編集
 画像編集(Image editing)は、デジタル写真や銀塩写真やイラストレーションなどの画像を変化させる過程を指す。デジタルスキャナーとデジタルカメラが主流になる以前は、写真画像編集は、エアブラシなどの道具で修正を施したり、絵筆などでイラストレーションを修正するのが一般的だった。しかし、デジタル画像が登場し、アナログでの画像編集はほとんど使われなくなってきている。グラフィックソフトウェアには、ベクトル画像を扱うドローソフト、ビットマップ画像を扱うペイントソフト、3次元コンピュータグラフィックス用のモデラーなどがあり、画像を操作・修正・変換するのに使われる。画像編集ソフトウェアはコンピュータアートなどの芸術にも利用されている。
・基本
ビットマップ画像は画素(ピクセル)を格子状に並べたものであり、コンピュータに格納される。ピクセルには色や輝度の情報が含まれる。画像エディタはピクセルを操作して画像を様々に変化させる。画像エディタに備わっているアルゴリズムにより、ピクセルを複数まとめて扱うこともできるし、個々に操作することもできる。本項目では主にビットマップ画像編集について解説する。
一方、ドローツール(Adobe IllustratorやCorelDRAW、Inkscape など)は、ベクトル画像の生成・編集に使われる。ベクトル画像はピクセルではなく、直線やベジェ曲線、テキストなどの形で格納される。ベクトル画像をビットマップ化(ラスタライズ)するのは、逆(ビットマップ画像のベクトル化)よりも容易である。ビットマップ画像のベクトル化はコンピュータビジョンの研究テーマの1つとなっている。ベクトル画像は編集が容易で、任意の解像度のビットマップ画像に変換可能である。一方、ビットマップ画像も拡大・縮小は可能ではあるが、整数倍率の縮小でない限り、その操作には何らかの推論が含まれている。
・編集ソフトウェア
デジタルカメラの普及とともに、画像編集ソフトウェアも一般化した。主なソフトウェアを以下に列挙する。
Adobe Photoshop
Paint Shop Pro
GIMP
Paint.NET
・デジタルデータ圧縮
多くの画像ファイルフォーマットではデータ圧縮技術を使ってファイルサイズを削減している。画像圧縮はデジタルカメラでも行えるし、コンピュータ上でも行える。例えば、JPEG形式の画像は既に圧縮されている。画像圧縮する際には圧縮率が設定可能であることが多い。
PNG形式などで使われている圧縮アルゴリズムでは、情報が失われないため、圧縮前の状態に戻すことができる(可逆圧縮)。JPEG形式では非可逆圧縮アルゴリズムが使われている。後者は圧縮率が高いが、情報が失われるため、画像の細部の品質が劣化する。JPEG形式では、人間の脳や眼に関する知識を応用して、この劣化が目立たないよう考慮している。
・画像エディタの機能
以下に列挙したものは、画像編集ソフトウェアが持つ主な機能である。全てが列挙されているわけではない。
・選択
以下に列挙された機能の多くは、画像の部分を選択する方法を前提としており、選択した部分だけに修正を施す。画像編集ソフトウェアは選択の方法を複数備えていることが多い。マーキーツール、投げなわツール、ベクトル画像方式に基づくペンツールなどがある。また、より高度な選択方法として、輪郭検出、マスキング、アルファ合成、色やチャネルの選択的抜き出しなどがある。
・レイヤー
また、レイヤーも画像編集ソフトウェアで一般的な機能である。画像が一部に張り付いた透明なシートを複数重ねたようなもので、各シートは個別に編集できる。これにより、他に影響を与えないで一部分だけを編集することが容易となる。
・拡大・縮小
画像編集ソフトウェアは、画像を拡大・縮小できる。高解像度のカメラは非常に大きな画像を撮影するが、インターネット上でその画像を使う場合、縮小することが多い。拡大・縮小では、再標本化(resampling)と呼ばれる数学的手法で各ピクセルの値を計算することで行われる。
・切り取り
切り取り(cropping)は、元の画像の一部を(通常)矩形に切り抜いて、他の部分を捨てる機能である。これにより、画像内の必要な部分だけを抜き出し、不要な部分を除去する。切り取りでは画像の解像度は変化しない。切り取った部分を拡大する場合、元の画像が高解像度である方が好ましい結果が得られる。
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3D に関する最新技術 第21回

3.4 画像処理
3D_New_Technologu_42 画像処理(Image processing)とは、電子工学的(主に情報工学的)に画像を処理して、別の画像に変形したり、画像から何らかの情報を取り出すために行われる処理全般を指す。まれにコンピュータグラフィックスによる描画全般を指して使われることがあるが、あまり適切ではない。歴史上CGアプリケーションはCADが先行し、そのころのCGは「図形処理」と呼ばれていて、実際図形処理情報センターという出版メディアも存在した。画像処理は本来CGとは無関係にテレビジョン技術の発達とともに、産業界では早くから注目を浴びていたテクノロジーであり、当初からビデオカメラの映像信号を直接アナログ-デジタル変換回路へ通すという方法が試みられた。その成果の一部(輪郭強調によるシャープネスなど)が現在のCGアプリケーションに生かされている。
・概要
処理の対象としてはデジタル画像が用いられることがほとんどで、処理はコンピュータ上で行われる。取り出したい情報の特徴に応じて適切なアルゴリズムを記述することが必要となる。
画像処理の流れの一例として、画像入力−画像変換−分類 というものを挙げる。まず対象とする画像を入力し、この画像に対して変換処理を行う。変換の方法としてはさまざまなものが存在するが、基本的なものでは濃淡画像を白黒2値にする「2値化」、濃度変化から物体の境界を見出す「エッジ検出」などがよく用いられる。これらいくつもの変換処理を重ねて行うことで必要な情報の抽出を行い、最後に得られた情報の分類を行う。
画像処理が生産用に実用化されている事例として、製品の欠陥検査がある。集積回路のマスクパターンなどの工業製品の欠陥検査のほか、形が一様ではない農産物の選別などにも用いられる。また、ロボットが外界を認識するための方法としての画像処理も研究が進んでいる。

3.5 デジタル画像処理
3D_New_Technologu_43 デジタル画像処理(Digital image processing)は、デジタル画像にコンピュータを使用した画像処理を行うことである。アナログと対比したデジタル画像処理の利点は、アナログ信号処理に対するデジタル信号処理の利点と同じである。すなわち、入力データに対してノイズや歪みを増やすことをあまり心配せずに、様々な処理を施すことができる。
デジタル画像処理の中でも典型的なものをデジタル画像編集と呼ぶ。
・歴史
デジタル画像処理で使われる技法の多くは、1960年代にジェット推進研究所、マサチューセッツ工科大学、ベル研究所、メリーランド大学などで開発された。それらの技法は、衛星画像の解析、有線伝送写真技術、医用画像処理、テレビ電話、光学文字認識、写真画像の改善などに使われた。しかし、当時のコンピュータ機器による処理のコストはかなり高かった。1970年代、コンピュータの価格が低下し、専用機器が実用化されると共に、デジタル画像処理が徐々に一般化し始めた。さらに汎用的なコンピュータの低価格化と高性能化に伴い、デジタル画像処理は専用の機器から汎用のコンピュータで行われるようになった。
2000年代になるとさらにハードウェアが進化し、ほとんどの画像処理はデジタル画像処理となった。いまやデジタル画像処理は最も多様な手法であるばかりでなく、最も安価な手法でもある。
・デジタルカメラとデジタル画像処理
デジタルカメラにはデジタル画像処理用チップが内蔵されており、センサーからの画像に色補正を施したり、所定の形式に変換したりする。デジタルカメラの画像はさらに処理を施して品質を高めることができ、そのことがフィルム式カメラに対する優位性の一部となっている。デジタル画像処理は専用のソフトウェアで行うことが多い。
デジタルカメラの機種によっては、画像の輝度をヒストグラム表示することができる。これも一種のデジタル画像処理である。
・応用と技法
デジタル画像処理では様々な画像処理アルゴリズムを活用可能であり、アナログ画像では不可能な処理も可能となる。
特に、以下の技術についてはデジタル画像処理なしには実現できない:
 統計分類
 特徴抽出
 パターン認識
 マルチスケール信号解析
以下のような技法がデジタル画像処理で使われる:
 主成分分析
 独立成分分析
 自己組織化写像
 隠れマルコフモデル
 ニューラルネットワーク

3D に関する最新技術 第20回

3.3 アニメーション
 アニメーション(animation)は、動画とも呼ばれ、コマ撮りなどによって、複数の静止画像により動きを作る技術。連続して変化する絵や物により発生する仮現運動を利用した映像手法である。
・語源
3D_New_Technologu_40animation(アニメーション)は、ラテン語で霊魂を意味するanima(アニマ)に由来しており、生命のない動かないものに命を与えて動かすことを意味する。
・日本における訳語の変化
 明治期末に国外から短編アニメーションが輸入、上映され、「凸坊新画帖」と題されて公開された。これが最初のアニメーションの日本語訳ともみなされる。
アニメの主流である商業用セルアニメーションは、映画の場合は「漫画映画」、テレビの場合は「テレビ漫画」と呼ばれていたが、今日では「animation」をそのままカタカナに訳した「アニメーション」、略して「アニメ」と呼ばれている。「動画」はアニメーターの政岡憲三による提唱。さらに遡ると、「線画」「漫画」「繰画」という呼称があったという。
・線画から動画へ
 映画のクレジット等の記録では、1930年代は「線画」がほとんどであった。「線画」の概念には、「線」による「画」という意味があり、実写映画に使われる地図、グラフや図表などを意味することがあった。スタッフはアニメーションだけでなく、地図、グラフや表、字幕なども描くことがあった。
1940年代は「線画」と「動画」が混在し、第二次世界大戦後は、ほとんど「動画」が使われるようになった。
1943年のアニメーション入りの実写映画『ニッポンバンザイ』(朝日映画社)では、「線画」が使われている。同年のフルアニメーション映画『くもとちゅうりっぷ』では、「動画」がクレジットに使用され、製作は松竹動画研究所となっている。 1944年、それまで「線画」を使用していた朝日映画社も、『フクちゃんの潜水艦』で「動画」のクレジットを入れる。
1947年、日本動画社が設立。製作された『すて猫トラちゃん』でも、「動画」がクレジットとして使われた。
1948年7月5日の参議院労働委員会で、東宝の労働問題に関する報告のなかで、「動画」が使用されている。
・漫画映画・テレビ漫画からアニメへ
 1960年代から1980年代頃までは、アニメーション映画興行の『東映まんがまつり』やテレビアニメの『まんが日本昔ばなし』など、「まんが」が使われている。当時の世代の人は、今でもアニメのことを「漫画映画」「テレビ漫画」と呼ぶことがある。また主題歌CD集などでは、今でも1960、1970年代の作品を指して「懐かしのテレビまんが」などと表記されるものもある。
1980年代以降は、テレビや映画などの映像物である動画の「アニメ」と、印刷物など静止画の「漫画」は区別されて呼称されるようになり、アニメーションを「漫画」とする用例は衰退していった。
・仕組み
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・絵の動かし方による分類
フルアニメーション
リミテッド・アニメーション
ストップモーション・アニメーション
・素材による分類
−立体素材

人形アニメ
 人形など立体物を少しずつ動かしながらコマ撮りする。パペットアニメーションとも呼ばれる。
(人形の材質の種類は木、布、粘土など多種多様。陶器の人形の焼き物に間接をつけて動かすセラミックドール・アニメーションなど)
クレイアニメ粘土を用いて作られた造形物をコマ撮りしていく。
ピクシレーション
実写で人間をコマ撮りする。
その他に、砂絵や毛糸を置いて作った絵や、平面に貼り付けた粘土をコマ撮りするなど、様々な技法が存在する。
−平面素材
セルアニメーション

動かない背景画の上に、セル画と呼ばれる透明なフィルムシート上に部分的な描写を変化させて動きを描いた絵を重ねて撮影する。動かない部分を描く必要はなく、分業化が容易なため、商業用アニメーションの主要な制作手法となった。セルと呼ばれるのは、かつては実際にセルロイドを用いたため。
1990年代以降、紙上に描かれた原画をスキャナに取り込んで、セルアニメーションの彩色と背景画の合成の過程をコンピュータで行う「デジタルアニメ」が普及している。パソコンと制作用ソフトの性能向上で、アニメ制作が容易になっている。
切り紙アニメーション
切り絵を用いる。影絵アニメーションはバリエーションの1つ。キャラクターの絵を切り抜いて、背景画の上に置いてコマ撮りする。動きに応じてキャラクターごと絵を1つ1つ描く場合と、キャラクターの絵をあらかじめ関節など各パーツに分けて動かしながらコマ撮りする場合がある。セルアニメーションが開発される以前は盛んに用いられ、日本では1923年前後から使われ始めた。当初、セルは高価だったため、アメリカが既にセルアニメーションに移行していた1930年代半ばにかけても、日本では安価な切り絵アニメーションが手法の主流であり、その技術が高度に発達した。セルアニメーションが普及した後もユーリ・ノルシュテインやルネ・ラルーなど幾人かの作家によりこの技法が用いられている。
ペーパーアニメーション
紙に描く。重ね合わせが使えないため、動かない背景やキャラクターまで全て1枚ずつ描く必要がある。アニメーションの歴史では最初期に使われたが、分業が困難なため、多人数による量産に向かず、商業的にはセルアニメーションに取って代わられる。画材を自由に選べる利点から、アート性の強いアニメーション作家の作品に使われたり、紙と画材さえあればいいというハードルの低さから、個人制作のアマチュアアニメで使われた技法である。
ピンスクリーン
数万本の針に照明を当て、その影の明暗で作られた白黒の絵をコマ撮りしていく。ピンボードとも言う。特殊な技法で、アレクサンドル・アレクセイエフやジャック・ドゥルーアンなど使う作家は限られている。
その他に、油絵、黒板にチョークで描いた絵、岩に描いた絵などをコマ撮りするなどの様々な手法がある。
・カメラを用いない手法
カメラレス・アニメーション

投射フィルムに直接絵を描く。そのうち、現像済みの真っ黒のフィルムを引っかいて絵を描くものはシネカリグラフ、透明なフィルムに直接絵を描くものをフィルム・ペインティングという。
CGアニメーション
CG(コンピュータグラフィックス)により、撮影のプロセスを経ることなく、各コマの静止画像を順番に作成して、一連の動画に仕上げる手法。上記のサンプル画像も、パソコン上で作成したCGアニメーションと言える。

33D に関する最新技術 第19回

.2 ムービー (movie)
 映画を意味する英単語である。
日本ではコンピュータゲームに挿入されているゲームとゲームの合間の映像部分のことであり、ここではこれについて述べる。
3D_New_Technologu_39家電業界用語で、商品ジャンル分類上、カムコーダのことをムービーと呼ぶ場合がある。
コンピュータゲームにおけるムービーとは、ハードウェアの高性能化とCD-ROMに代表される安価な大容量記録メディアの特性から用いられることが増えた、いわゆるプリレンダリング映像を指す。特にTVゲームでのデモンストレーションシーン(デモシーン)を指す例が多い。
この用語は和製英語であり、英語圏ではゲームにおけるこの種の映像を、通常のテレビと同等のフレーム数である映像の総称であるfull motion video、もしくは略称のFMVと呼んでいる。より一般的な呼称としてはCutscene(カットシーン)、もしくはCinematics(シネマティクス)と呼ばれる。
・概要
 ムービーは、特性上、ROMからローディングしながら再生するため必然的に操作が必要なくなる。そのためゲーム進行に影響を与えにくいデモシーンに使用されることが多くなった。例としてオープニングデモやエンディングデモ、物語中で特殊なイベントが再現する場面等が挙げられる。あらかじめ作成されていた動画や音楽を再生するだけで良いため、ゲーム機上で実行されるプログラムが描き出す映像よりも美麗なCG、実写映像などを用いることができた。
なお、ゲームにおける「ムービー」とは3DCGによって制作された映像だけではなく、2Dのアニメーションや実写映像を利用したものも含む。
・ゲームにおけるムービー
 デモシーンとしての意味合いで、広義でのムービーシーンは黎明期のコンピュータゲームから存在していた。
現在はハードウェアやソフトウェアの進歩によりリアルタイムに処理可能なグラフィックスが、前世代ゲームハードのプリレンダリング映像に匹敵するものが多くなっている。その為「ムービー」という言葉を用いる場合、プリレンダリング映像以外にも、同ハードウェアのグラフィックス機能を上回る表現能力を示す、上記シーンを表す用語として用いられることが増えた。(これについては後述)
TVゲーム業界では、PCエンジンのCD-ROMに置いて1989年に発売された『天外魔境 ZIRIA』に採用されている。現在多く見られる3DCGではなくアニメーションシーンやボイス再現が中心だったが、当時としては大容量のメディアの特性を活かし、ゲームの映像表現を高めるのに一役買った。
また1994年に発売されたセガサターンとプレイステーションには、標準でCD-ROMが採用されていた為にムービーを採用するゲームソフトの数が飛躍的に増えた。中でも『バイオハザード』や『ファイナルファンタジーVII』が当時としては非常高い水準のCG映像を収録し、更にはゲーム自体への没入感を高める事にも成功した。こういった成功作を見たゲームメーカーが、多くのゲームでプリレンダリング映像によるムービーを採用することとなった。
ただし、高クオリティの映像制作には掛かるコストも高い上、ゲームプレイスタイルへの応用性は低く、ムービーゲーム全盛期にも各ゲームメーカーはそれらの取捨選択を委ねられる。またゲーム中のムービーの内容が、発売時の市況からみて相対的に技術の高いものであれば、ゲーム展開に大きなインパクトを持たせる効果的な表現手段となりうるものの、完成度が低いムービーは概して視覚的に不自然なものとなる。そのため、ムービーを挿入することによりかえって製作の粗雑さを露呈してしまっているケースも存在した。特にRPGなどストーリーにある程度のウェイトがあるゲームに置いては途中で状況を変更したり、装備が違う、パーティーメンバーが違うなどの複数の分岐に対応出来ない場合が多く、ムービーがストーリーに制限をかけてしまったり、ストーリーとムービーが矛盾するなどと言った事態を引き起こしている。前述の一般に成功作と言われる『ファイナルファンタジーVII』についても同様の問題が起こっており、RPGにムービーを乱用することには否定的な意見も多かった。
一部でプリレンダリング映像を使用しない、ハードウェア能力とプログラミングに因るグラフィックスでの非操作画面をムービーと呼称する場合もある。これはNINTENDO64の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』において、ハードウェア上のグラフィックス機能で表現されているキャラクターがデモシーンを展開する際に、非操作になる場面に名づけられた名称である。任天堂はこういった形式を「リアルタイム(で処理を行っている)ムービー(若しくはリアルタイムレンダリングムービー)」、または「インタラクティブムービー」と呼んでいた(現在、一般的に使われる意味の「インタラクティブムービー」とは別)。
現在では第6世代(プレイステーション2、ニンテンドーゲームキューブ、Xbox、および同時期のPCゲーム)以降のハードウェアが持つ高いグラフィックス処理能力の恩恵で、このスタイルのムービーに該当する作品が増えている(デビルメイクライシリーズやGears of Warシリーズなど)。さらには、通常のゲーム同様のリアルタイムレンダリングである事を活かし、ゲームプレイ部分とムービー部分が継ぎ目無し(DEAD SPACEのエンディング導入部などが挙げられる。ロード時間はおろか、カット割りすら無い。)になっているものがあるほか、コール オブ デューティシリーズなどに代表されるように通常のゲームプレイ中に(操作可能なまま)ムービーのような演出が入る作品も増えてきている。これらの傾向を持つ作品は第6世代からすでにあったものの、第7世代(Xbox 360、プレイステーション3、および同時期のPCゲーム)で数が大きく増えた。
・現在の状況
 一般的にはプレイステーション向けに発売されたスクウェア(現スクウェア・エニックス)のファイナルファンタジーシリーズがゲーム中のムービーにおいて先駆的立場にあったとされ、現在もその技術力は高い。現在はどのゲームメーカーも映像制作技術の研究を行っており、高品質なムービーを生み出すようになってきている。
ムービーはかつては開発陣の映像技術の高低の指標となっていたため、ゲームメーカーはムービー制作の専門チームを置くことが多かった。現在でも開発規模の巨大化および分業化が進んだ結果として開発チーム内にムービー専用のグループがおかれる事は多い。なおゲームソフトにおけるCG制作は、映像業界から技術の還元(あるいはその逆)も高い為、現在では映像業界が直面する問題と直結している場合が多々ある。
ムービー部分のみ専門の映像制作会社に外注しているケースも増えた。例としてテイルズ オブ シリーズは、オープニングムービーをアニメーション制作会社に制作を外注している作品の代表と言える(他にはゴッド・オブ・ウォーシリーズやミラーズエッジなどがある)。更に現在はハードウェアの性能向上により、リアルタイムにエフェクトをかけることが容易になってきたことや、プリレンダリングムービーでは不可能な表現を行うため、またはコスト上の問題から、リアルタイムに映像を演算出力するリアルタイムレンダリングムービーを取り入れる会社も増えている。
動画そのものの圧縮技術に関しては、フォントなどと同様に外部のミドルウェアを採用しているメーカーも増えてきた。第5世代のハードではMPEG1並の圧縮率と方式だったため、実機映像と比較して画質の劣化が否めなかったが、以後のハードと圧縮技術の進化により映像ソフト媒体と似た進化を歩んでいる形である。
・今後の課題
 近年ではCG動画制作技術の向上が著しかったため、映像分野における「不気味の谷現象」問題も認識が高まってきている。これはCG制作を行う業界共通の問題である。L.A.ノワール(リアルタイムレンダリング中心)のようにこの問題に真っ向から取り組んだ作品も散見されるようになった。

3D に関する最新技術 第18回

3.その他の適用例
3.1 CAD

 CAD(computer aided design)は、コンピュータ支援設計とも呼ばれ、コンピュータを用いて設計をすること。あるいはコンピュータによる設計支援ツールのこと(CADシステム)。人の手によって行われていた設計作業をコンピュータによって支援し、効率を高めるという目的からきた言葉である。
3D_New_Technologu_38aCADを「コンピュータを用いた製図システム」と解する場合は「Computer Assisted Drafting」、「Computer Assisted Drawing」を指し、同義として扱われることもある。
設計対象や目的によりCADD(コンピュータ支援設計と製図、computer-aided design and drafting)、CAID(コンピュータ支援工業デザイン、computer-aided industrial design)、CAAD(コンピュータ支援建築設計、computer-aided architectural design)などと区分される場合もある。
日本での定義としてはJIS B3401に記載があり、「製品の形状、その他の属性データからなるモデルを、コンピュータの内部に作成し解析・処理することによって進める設計」となっている。
3次元の作業の場合でも、数値の精密さの必要がないコンピュータゲームや映画やアニメーションなどの制作関係の事柄については「3DCG」を参照。
 
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CADによる作業工程のアニメーション  
・歴史
2次元製図システムは1960年代、アイバン・サザランド博士が開発した「Sketchpad」を原型として、アメリカ国防総省の肝いりで実用化された、航空機の設計を主たる目的とした「CADAM(キャダム)」が長くデファクトスタンダードであった。航空機の設計には膨大な量の図面が必要であり、当時軍用機の主力メーカーであったロッキードがCADAMの開発に協力したと言われる。
CADAMなど初期の製図システムは汎用機に接続され、1280×1024画素程度の表示能力を備えたエンジニアリングワークステーションを必要としたが、やがて640×480画素程度の表示能力のMS-DOSパソコンに対応した廉価な機械系、建築系CADソフトが続々と登場し、一定のマーケットを獲得することに成功した。それらのソフトはその後Windows版となり、さらに3次元処理機能などを加え現在に至っている。なおMacintoshで動作するCADソフトは、VectorWorksなど種類が少ない。これはCADソフトの開発ベンダーに、IBMなど汎用機系列が多かったことによる。
・概要
CAD自体はコンピュータを使用して設計や製図をするシステムであり、製図作業や図面作成が時間はかかるが正確に処理できること、編集が容易であること、データ化、ソフト間の互換性があること、10年程度の学習期間で技術修得が可能になる等の利点があるとされるが、大きく分けて汎用型と専用型があり、汎用型は図面を模様として細かく描くことを最大の目的とし、あらゆる図面を描くことができる。しかし、積算までは単独ではできない。専用型はある特定の分野における省力化・迅速化を目的としている。
その後、コンピュータ上のデータを下流の生産工程で有効活用するためにCAM、CATなど、逆に上流で強度や振動などを解析するためにCAEなどの技術が開発提供され、これらを EDPS/MISといった情報処理システムと統合して CIMS(computer-integrated manufacturing system)という概念に発展した。
CADによって、設計作業においては、以下のように効率化や正確さの向上がなされた。
繰り返し図形をコピーで作れるので効率的に作図可能。また、類似図面の作成が容易
コンピュータが持つデータから寸法を記入するため、単純な寸法ミスを無くせる
設計途中での寸法や面積の測定により、手計算の手間を省ける
設計したデータはプロッタに出力するので、細部まで正確な描画が可能
一方、電気系ではプリント基板のパターンを効率良く設計するためのシステムが、半導体産業では集積回路のフォトマスクを設計するためのシステムが開発された。また、電気回路の動作シミュレーションのためのシステムなどを加えて電気系CADの分野が生まれ、後に EDAという言葉が使われるようになった。
市販のCADは一般的に毎年のようにバージョンアップが存在し、その度に高額なライセンス料が発生するため、中小企業にとっては痛手でもある。仮にバージョンアップをしなかった場合、数年後のバージョンでは現在の保存形式がサポートされないなど、かなり強引な販売手法を使う企業も少なからず存在する。また、官公庁や元請けにお墨付き(指定)のCADも存在し、下請けはなかなか他のCADに変更できないなどの問題もある。
・CADの種類
各分野用に各種のCADが用意されている。
機械用CAD(メカCAD)
建築用CAD
建築設備用CAD
土木用CAD
電気用CAD(回路用CAD、基板用CAD)
半導体分野 - 半導体回路設計の分野では、単なる形状設計に留まらなくなりEDAと呼ばれることが多い。半導体の製造分野ではTCADという用語があるが、このTは技術を意味する英語「technology」で、CADというよりは他の分野におけるCAEの範囲に近い。
その他、熱解析用、電磁波解析用等の専用のCADがある。
服飾デザイン、配管、橋梁などの分野にも専用のCADがある。
・機械用CAD(メカCAD)
内部的にデータが2次元(x,y)で表現されているものを2次元CAD(2DCAD)と呼び、表示上では、立体を正面図・側面図・平面図等の平面図形として表示・操作する。内部的にデータを3次元(x,y,z)で表現するものを3次元CAD(3DCAD)と呼び、ディスプレイモニターなどの表示デバイスで陰影などを付け、3次元的に表示・操作する。内部的には2次元プラス高さ情報で表現されて、表示上3次元CADに似た表示をするものを2.5D(または2+1/2次元)と呼ぶ場合がある。
一般的な2次元グラフィックソフトウェアのデータを大別すると、主に線分要素で表示するベクトルデータ(ベクタ形式)と、ビットマップ画像で表示するラスタ形式とに分けることができる。作図ソフトとしての2次元CADでは、ごく簡易なものを除いてベクトルデータによる。ベクトルデータは、2次元では始点から終点を示す(x1, y1) (x2, y2)、3次元では(x1, y1, z1) (x2, y2, z2)のような座標値で線分要素を表現する。
2次元CADが機械製図図面の電子化の位置づけであるのに対して、3次元CADでは3次元形状をデータモデルとして正しく表現することが要求される。すなわち対象の頂点や辺、面などの連節を位相構造として表現すること、辺や面に対応する幾何要素の形状が数学的に厳密に定義されていること、その上で立体同士の和、差、積などの集合演算を実施できること、などである。このような3次元CADのデータ構造は境界表現B-reps(boundary representation)と呼ばれる。
3次元CADは、業務で用いる対象と取り扱える形状要素のタイプと価格帯により、ハイエンド、ミッドレンジなどに種類分けされる。
ハイエンドCADでは、自動車・航空機他、強い意匠性が求められる民生品の設計に用いられ、特に自動車の車体・部品はDassault Systems社のCATIA 、PTC社のPTC Creo Parametric、Siemens PLM社のNX、I-DEASの5製品でシェアを独占している。
ミッドレンジCADでは、家電製品・一般OA製品などの分野で、量産前の試作回数を減らす目的での普及がめざましく、SolidWorks社のSolidWorks、オートデスク社のInventorがシェアの大部分を確保している。また、一方で工作機械・生産設備、専用機など意匠性よりも性能・精度・開発期間が重要視される分野でのミッドレンジCADも普及期に入りつつあり、富士通(子会社のデジタルプロセス社)製のICAD/SXが国産のミッドレンジ3次元CADとして有名である。
近年、ラピッドプロトタイピングである3Dプリンタの小型・低価格が進み、ミッドレンジ3Dプリンタの普及とともに、上記のミッドレンジ3DCADソフトウェアやRobert McNeel & Associates社のRhinoceros 3Dなどの普及が製造業を中心に急速に進み、様々な用途で使われている。
ボーイング777は、史上初めて機体の全設計を3次元機械系CADによって行なったことでも知られている。
・建築用CAD
建築分野では、建物や構造物などの建築物の立体を平面図・立面図・断面図、あるいは透視図等の図面として表現し、それにより建築物を製作=施工していくことになる。技術者の専門領域に応じて、意匠、構造、設備などの図面群が存在し、それらの図面を作成するソフトウェアを建築CADと呼ぶ。図面は設計行為の成果物であるが、建築CADのレベルも製図をするだけのものから、より専門的な検討、解析、シミュレーションなどを含んだ高度なレベルまで存在することになる。
・汎用CAD
機能を建築向けに特化したものではなく、Jw_cad、VectorWorks、AutoCAD、DRA-CADなどが日本の建築分野でよく利用されている。 Jw_cadが2次元CADであるのに対し、VectorWorks、AutoCAD、DRA-CAD等は、図面を作成する機能や3次元モデルを作成するモデリング機能などが搭載されている。
導入コストの安さから手軽に利用できる反面、レイヤーや線種等の作図ルールを使用者個人、企業、あるいはプロジェクト毎で自由に決めることが出来てしまうため、後述するBIMに見られるような、建設のライフサイクルや社会資本としての図面データの一元化や再活用に対応できず、結果、全体としての効率や生産性は必ずしも向上しているとはいえない。
・BIM(Building Information Modeling)
近年BIM(Building Information Modeling)という概念が登場し、3次元モデルを建物の設計・工程・ライフサイクル全般にわたって活用する取り組みが各国で始まっている。Bentley社のBentley Architecture、オートデスク社のRevit、グラフィソフト社のArchiCADなどが代表的であり、日本の建築法規に最適化されたものとしては、福井コンピュータ社よりGLOOBEが登場している。
BIMはIFCと呼ばれるファイルフォーマットに対応し、意匠・構造・設備・積算・施工・維持管理におけるデータを包括することで、建設業界のソフトウェア・アプリケーション間のデータ共有化とその相互運用を可能にする。
国土交通省は2010年度、官庁営繕事業にBIMを試行導入し、設計・施工から維持管理に至る過程で一貫してBIMを活用し、「施設整備・保全に係る行政コストの削減、官庁施設の品質確保、及び官庁施設における顧客満足度の向上」を目指す取り組みを開始している。
・住宅専用CAD
日本の住宅や比較的低層の建物に特化したものとして、市販のメーカー建材の価格や仕様の情報までをモデル内に取り込んで設計図から構造計算、積算などまで作成する製品が存在する。 それらの多くは、予め部屋名に対し高さや仕上げの仕様を登録したデータベースと、3次元のモデルと2次元の姿図・詳細図・断面図等がパック化された建具・部品データが存在し、方眼紙を模した画面(平面図)上に部屋や建具・部品を割り付けることで、3次元でモデリングされたパースが作成される仕組みとなっている。
一方、モデリング化したものを一旦立面図や矩計図などに図面化してしまうと、設計変更等で各図面上で再編集をしても元の3次元モデルに反映しない不完全な製品も多い。これは3次元モデルから2次元の図面に変換される際にベクトルデータに分解され、元の3次元データとのリンクが切れてしまうためである。 これらの製品を使用する場合、図面ごとの「整合性」のチェックは従来のJw_cad等の2次元CADと同等の生産性(目視による確認)に落ちることになる。 2010年現在、この問題を回避できる「3次元モデルと2次元データの相互連動」に対応しているのは、福井コンピュータ社のARCHITREND Z、スーパーソフトウェア社の「SuperSoft」IIがある。
・建築設備用CAD
一般的に、建築用CADとは意匠設計図を作成するためのCADを指すが、建築設備という専門分野に特化した専用CADも多々存在する。基本機能としては部材記号や配管・配線を表示する線種が標準登録されており、配置・ルートの変更などを容易に行なうことができるなど、さまざまな機能を有している。国内で圧倒的シェアを誇るCADWe'll CAPE、後継バージョンのCADWe'll Tfas(株式会社ダイテック)が有名である。他にはCADEWA Evolution / CRAFT-CAD(株式会社四電工)、Rebro(株式会社NYKシステムズ)、DesignDraft(株式会社シスプロ)、FILDER_PLUS / FILDER Rise(ダイキン工業株式会社)、BrainGear(株式会社ジオプラン)、EQ-II(株式会社マイティネット)、POWERSP(株式会社コモダ工業)、 CustomARCH / i/Draft(株式会社ライトプランニング)、SD-7などもある。作図する図面種類によりシェアが異なり、空調・給排水(衛生)、電気設備の施工図では上述のCADWe'll CAPE/Tfas、設計図ではAutoCADが主流となっている。また、2009年前後よりBIM (Building information modeling) に注目が集まり、建築用CAD(意匠、構造)に加え、設備用CADにもBIMへの対応が求められている。

3D に関する最新技術 第17回

2.9 3Dプロジェクションマッピング
 プロジェクションマッピング (Projection Mapping) とは、コンピュータで作成したCGとプロジェクタ等の映写機器を用い、建物や物体、あるいは空間などに対して映像を映し、時には音と同期させる技術の総称をいう。
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2013年シドニーオペラハウスでのVivid Sydney祭典の様子。プロジェクタによって建物に模様が投影されている。

・概要
従来の映画のように平面スクリーンに映すものとの違いとして、立体物に映像を張り合わせる(マッピングする)ことがプロジェクションマッピングの特徴である。そのため、映像は立体を意識して作られている。ゆえに映画のように平面映像をただ建物に当てているものは厳密にはプロジェクションマッピングではない。
・呼称
日本では”プロジェクションマッピング”という呼称が一般的であるが、欧米ではビデオマッピング、マッピングプロジェクション、3Dプロジェクションマッピング、3Dマッピング、ビジュアルマッピングとも呼ばれる。
・映写される対象物
投影される対象は建築物だけではく、靴、テーブルや椅子、額縁、広場、街そのもの、空、湖、人体、部屋、鞄、楽器、樹木などありとあらゆる物を対象としている。
・作成ソフトウェア
投影する映像は、一般的な動画編集ソフト(After EffectsやMotionなど)を使ってあらかじめ現場毎に専用の映像を作成する例と、専用のソフトウェアを使用する例がある。作成方法は図面などのデータから3Dでモデリングをしたり、写真を撮影して補正したりしながらパーツを作るという方法や、実際にプロジェクションをしながら対象のパーツや位置取りを行う方法がある。
・歴史
プロジェクションマッピングの歴史は古く、1960年代からあったと言われている。
1969年にはアメリカのアナハイムにあるディズニーランドのホーンテッドマンションで実用化されていた。そして、1970年代のライトショーなどを経ながら、1990年代には研究者やアーティストの表現手法として多く使われていたが、当時はスライド映写装置を用いており、光源の不足もあって現在のように表現できなかった。高輝度のプロジェクタを使うようになり、屋外でもより明るく表現できるようになった2000年代から、「プロジェクションマッピング」や「ビデオマッピング」または「3Dプロジェクションマッピング」などと呼ばれ出し、YouTubeなどで話題を集めるようになった。
日本では1968年に銀座のディスコ「キラージョーズ」で宮井陸郎のプロデュース、空間設計は早田保博であり、これが日本での商用利用の最初と思われる。この時はコダックのカルーゼル式プロジェクタが使用された。インテリア空間は音に反応し、変化するプロジェクションのスクリーンを兼ねるシルバーテントが使用された。映像演出は宮井陸郎が行った。
海外でプロジェクションマッピングが有名になったきっかけは、2008年の北京オリンピックからといわれている。
日本では2003年から始まったOsaka光のルネサンスの「ウォールタペストリー」や、2006年に京都で行われた「アーキテクチャープロジェクション」などがある。
2009年5月、音楽興業としては日本初となるプロジェクションマッピング演出による公演が、赤坂BLITZにおける睡蓮のflow in her veins 2.5Dである。この模様は月白 flow in her veins 2.5DとしてDVD販売されている。
2010年のライゾマティクスによるPerfume武道館ライブ演出でPerfumeメンバーの動きと同期したマッピングが行われ、最先端の表現技法として紹介されたことから一般層にこの技法が認知され、日本国内の各業界にも衝撃を与えることになった。さらに、2012年9月にはJR東京駅の丸の内駅舎で利用され、大型施設の壁面を用いてプロジェクションマッピングを実施可能なことが日本の一般層にも広く認知されるようになった。
近年
2010年代中盤に入り、オープンソースなソフトウェアフレームワークの整備と、PC、プロジェクタ、無線ネットワークなどの機材が昔に比べ個人でも入手しやすくなり、学校や個人宅における実施例も見られるようになった。
・制作の流れ
一般的なプロジェクションマッピングが制作、投影されるまでの流れをここに記す。
−イベント等のプロジェクトが開始
−マッピングされる建物や場所などの選定
−マッピングされる建物や場所の許可を、場合によっては地方自治体に申請。また会場のセキュリティ、機材の確認
−クリエイターの募集、選定
−現地でのマッピングされる”建物の3Dデータ”を作成
−それを元にクリエイターが映像データを作成。
−必要な場合、音楽も作成。
−現地にてテストマッピングをし、映像や音の同期、建物への当て具合など最終調整。
−投影
・マッピングフェスティバル
2010年代に入り、個人でもプロジェクションマッピングが制作できるようになり、世界中でクリエイターに向けてのマッピングコンテストが開催されることが多くなった。それらは主に街全体で行われる芸術祭の一貫として行われるほか、コンペティション形式のものも存在する。また現在欧州で開催されることが多く、そのため夜の長い秋〜冬〜春にかけての開催が比較的多い。
Genius Loci(ドイツ、ワイマール)
Artvision(ロシア、モスクワ)
imapp(ルーマニア、ブカレスト) - 地球上の建築物で2番目に大きな建物「国民の館」に投影される。
Light Festival(ドイツ、ベルリン)
1minute Projection Mapping (日本、ハウステンボス、新潟)
東京国際プロジェクションマッピングアワード(日本、お台場)
Luminare(ドイツ、フランクフルト)
Sonar Barcelona (スペイン、バルセロナ)
Signal Festival (チェコ、プラハ)
・日本国内での例
東京駅、姫路城、会津若松城、丸亀城、赤穂城、橿原神宮
円融寺、砂の美術館、逗子メディアアートフェスティバル、ドックヤードガーデン、そごう柏店
日本大学藝術学部、『天使のくれた奇跡』 - ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのショー(2008年 - )。
『ワンス・アポン・ア・タイム』 - 東京ディズニーランドのショー(2014 - 2017年)。シンデレラ城にプロジェクションマッピングで投影している。
『殺人偏差値70』 - 2014年7月2日に日本テレビ系列で放送されたテレビドラマ。テレビドラマとしては初めてプロジェクションマッピングが用いられた。
ブレスホテル(神奈川県藤沢市- 「BREATH THE ILLUSION」(101号室)に常設。映像はNAKED[17]が担当。
さっぽろ雪まつり(世界で初めて雪像に投影された)
・日本国外での例
ギマランイス(ポルトガル)、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂(スペイン)
Mapping Festiva、O-micron、Samsung at Beurs van Berlage、アスタナ・オペラ(カザフスタン
・小型、屋内での事例
The Icebook、Chair、Gakubuchi、New Balanc、360° 3D Mapping Projection with Rabarama
PANORAMA FANTASY、DREAMSPHERE GRAND CROSS - 業務用ゲーム機で技術が使用されている例。
MARUMITSU[29]、ハコビジョン - 玩具として製品化。、アステカ - エレクトロコインジャパンのパチスロ機。パチンコパチスロ業界初のプロジェクションマッピング。
Barliminal - 六本木レストラン&バー、店内17台のプロジェクタと最大290°のマッピング演出。

3D に関する最新技術 第16回

2.8 3Dプリンタ (続き)
・鋳造・射出成型や切削との比較

 3Dプリントは金型を作っての成形や切削による造形などの従来手法と比較されることが多い。3Dプリンタをはじめとした積層造形では鋳型の製造や治具の作成を必要としないと言う特徴から、設計段階での試作のように頻繁に形状を変更して迅速に実態が欲しい場面(ラピッドプロトタイピング)や、医療機器のように個々の患者に合わせて形状を変更するような製品の製造、航空宇宙分野のようにそもそも従来手法のコストがさして低くないチタン部品の製造などに向いているとされる。
作る造形物という意味では、
切削では削ることの出来なかった中空形状・複雑な内部形状も3Dプリンタであれば造形が可能
中空構造を容易に作成できる事から、強度を要求されない部品の軽量化が非常に容易
部品を製造するのではなく、一体化された所謂アセンブリされた状態を一度で造形する
複数の異なる材料を使用しての一体造形が可能。
誰が何個作っても毎回同じ物が出来る。
複数のモデルを一度に作ることが出来る。
操作という意味では、
操作者の技術力に依存しない。
機器の取り扱いが容易。造形に人手をあまり要さない。
という特徴を持つ。 一方、欠点は以下の通りである。
現状では大量生産への適用が難しい
現状では基本的に従来手法と比較して高価・低速なため
要求される精度が高くなるとリニアに製作時間が増加する
層の厚さが精度と直結するため
(FDM法)強度を求められる部品への適用が難しい
使用可能な樹脂の制限や層間の剥離のため
(FDM法)接地部よりも上部の方が広い漏斗型の形状では支持材を使用する必要があり、後行程で除去する必要がある
・用途
 製造業を中心に建築・医療・教育・航空宇宙・先端研究など幅広い分野で普及している。用途は業界によって様々である。製造分野では製品や部品などの「デザイン検討」「機能検証」などの試作やモックアップとして、建築分野ではコンペやプレゼン用の「建築模型」として、医療分野ではコンピュータ断層撮影や核磁気共鳴画像法などのデータを元にした「術前検討用モデル」として、教育分野では「モノづくり教育のツール」として、航空宇宙分野ではジェットエンジンやロケットエンジンの機能部品の製作に、先端研究分野ではそれぞれの研究用途に合わせた「テストパーツ」「治具」などの作成用途で使用されている。また、10万円以下で購入可能な低価格3Dプリンタ市場の隆盛伴い、ホビー用途やDIYなどの個人用途での使用も増加しつつある。
昨今では、精細度が良いだけでなく、ラバー(ゴム)系の材料が使えたり、複数の物性の異なる材料を混ぜながらの造形やフルカラーでの造形が可能な3Dプリンタも出て来ている為、用途の幅も広がりつつある。
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・試作
 3Dプリンタの使用用途としては、実際に製品を作る前にそれぞれの部品を3Dプリンタで出力できるサイズに縮小して出力して、デザインの検証・機能検証などの試作に使われることが多い。大手建設会社では建物の模型を3Dプリンタで出力して客に説明する際に使われている。この3Dプリンタを使用するメリットとしては、安いものでは1cm2あたり20円という安価(FDM法)で試作できる、今までパソコンの画面上でしか見ることができなかったものが、実際に手に取ることができるため、完成したときのイメージが非常にしやすくなる、などが挙げられる。完成したときのイメージがしやすいということは、実際に製作している過程でも、完成形のイメージがしやすいため製作者に迷いが生じにくいということを意味し、作業効率の向上にも繋がりうる。
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 2005年5月19日(日本では7月9日)に劇場公開された映画『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』で使用されたダース・ベイダーのマスクの試作品作成に、日本の3Dプロッタ機器製造販売会社ローランドディージーの3Dプロッタ「MDX-20」が使用された。
・航空・宇宙分野
 航空用エンジンの部品は小さく複雑な形状が多いが生産量が少ないため3Dプリンタによる生産に向いている。CFMインターナショナル(LEAP-X)やGE・アビエーション(Catalyst)で使用された。既に生産ラインが閉じた機体であってもポリエーテルイミド等のスーパーエンジニアリング・プラスチックを使用して補修部品を製作するなどオンデマンドの部品製作でも採算が合うレベルとなっている。
2014年9月には、ドラゴン補給船SpaceX-4で、実験用の宇宙用3Dプリンタが国際宇宙ステーションに運ばれて宇宙でも実験が行われることになった。この3DプリンタはMade in Space社が開発したもので、地球から離れた場所で補給がすぐに出来ない時にも簡単な修理部品を作って対応することが出来るようにすることを目指している。
・医療分野
 3Dプリンタの活用は医療分野でも注目されている。
2014年の段階で、補聴器の製造には既に3Dプリンタが広く活用されており、何百万人もがその恩恵を享受している[25]。また外科領域では主にインプラントの分野で活用が進んでいる。
2015年1月2日、富士フイルムと東京大学医学部附属病院は3Dプリンタを使って皮膚・関節の量産をする技術を確立したと発表。
臓器自体を3Dプリンタでつくりだす研究がされている。
歯・嘴・甲羅などが失われた動物の部位を3Dプリンタで再現し、失われた部位を補綴する作業を3Dデザイナーシセロ・モラエスと多くの医師の協力のもと行い、多くの動物が救われた。
・建築分野
 頭上に屋根を必要としている発展途上国の人々をターゲットにし、大型の3Dプリンタとモルタルで短期間に住宅を大量にプリントし、住宅不足の解消につなげようとする試みがある。
・その他
 3Dプリンタの作動音からリバースエンジニアリングする手法が開発された。造形物の90%を再現可能とされる。
−3Dプリンタに関連する事件
 2014年7月14日、漫画家のろくでなし子が、自らの女性器の陰部を3Dデータ化し、それを香川県の会社員に配布したとされるわいせつ電磁的記録頒布の容疑で逮捕される事件があった。データを3Dプリンタにかけると、石膏などで女性器が再現され、これがわいせつ物に相当するものとみなされた。
−3Dプリンタ銃
 銃の部品の図面をダウンロードし、3Dプリンタにより部品を作成することで、殺傷能力のある銃が作成されるという懸念がある。米国では非営利団体「ディフェンス・ディストリビューテッド」が2013年に3Dプリンタで作成できる銃の図面を公開している。これは「リベレーター」と名づけられている。
日本では2014年5月8日に3Dプリンタで作成した銃を所持していた大学職員の男が銃刀法違反で逮捕され(詳細は「3Dプリンタ銃製造事件」を参照)、2018年9月7日には、過酸化アセトンを製造したなどとして逮捕されていた男子学生が、3Dプリンタで作成した銃を所持していたとして銃刀法違反で再逮捕されている。
元々3Dプリンタ自体は自動車業界などで試作品をつくるために使われてきていたが、2010年代に入ると低価格化が進み量販店で売られるようになったため、広く一般に出回るようになった。これまでの法規制は、「物」は有体物、3Dデータの様な「情報」は有体物ではないものの典型として明確に分けて規定し、有体物としての銃火器の製造・所持・流通を取り締まるものであったが、技術の進化で両者の境目が曖昧になってきたため、3Dプリンタ銃の製造による事件が発生するようになった。
それまでにも、部品の一部を3Dプリンタで製造した銃火器は作られていたが、2013年にUSAのDefense Distributedという団体により、Liberatorという世界初の全部品が3Dプリンタによって製造可能な拳銃のデータが公表された。これを受け、国務省は同団体に、銃火器の輸出規制を規定したInternational Traffic in Arms Regulationsに違反するおそれがあるとして設計図の公開を行わないように通達を行っている。USAのフィラデルフィアでは、2013年末に、3Dプリンタを用いた銃の製造に対する規制が始まったが、2014年の段階ではまだ3Dプリンタによる銃火器製造を受けた法改正はほとんどの国で行われていない。
そもそも、樹脂で造った銃そのものが使用者にとって危険であり、その観点からも規制が望まれているが、Liberator公開直後から他にも同様の設計ファイル公開が相次ぎ、当初は単発しか発射できなかった3Dプリンタ製銃火器も、すぐに複数発発射が可能な改良版が登場するなど、どんどん進化を遂げている。
3Dプリンタ製銃火器の危険性に対しては、「簡単かつ安価に銃火器が出まわるから規制せよ」との声が大きい一方、様々な反論がある。
 弾薬を3Dプリンタで製造できないという事実は多く指摘されており、3Dデータを活用する会「3D-GAN」の相馬達也は「一貫して言っていることですが、3Dプリンタで銃を作ることはできます。ですが、他の製造法に比べて著しく有利だということはないので、社会的脅威にはなり得ません。弾薬が手に入るのなら、もっと有利な銃の製造法は他にたくさんありますから、3Dプリンタの所持を規制する必要も意味もありません。」と、3Dプリンタで銃火器をつくること自体の優位性を否定している。
 また、Defense Distributedの開発責任者コーディー・ウィルソン(Cody Wilson)は、「権利(武装権)を乱用して人に危害を加える可能性は、誰にでもあるという事実と向き合いたくないだけだ。危害を及ぼす可能性の有無にかかわらず、与えられている権利は守られるべきだというのが、我々の立場だ。さらに言えば、危害を受ける可能性があるからこそ、権利は保障されるべきだと思う」と武装権を根拠に反論している。

3D に関する最新技術 第15回


2.8 3Dプリンタ
 
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 3Dプリンター(3D printer)とは、3DCAD、3DCGデータを元に立体(3次元のオブジェクト:製品)を造形する機器。通常のプリンタのように紙に平面(二次元)的に印刷する形式や、鋳型を作って造形材を充填・固形化する形式と異なる。日本語では立体印刷機とも言う。
通常は積層造形法(additive manufacturing、AMによるものを指す。3次元のオブジェクトを造形することを3Dプリンティング(3D printing)、三次元造形(さんじげんぞうけい)と呼ぶ。
・歴史
 初期のものは1980年代に開発され実用化していったが、それらは高価であるばかりでなく、特殊な制御を求められるものであった。
1980年、名古屋市工業研究所にて小玉秀男が光造形法を発明し、また1983年にチャック・ハル(英語版)が.stl(Standard Triangulated Language)という3Dデータの保存方式を発明し、1986年3D Systems Corpを起業して、翌1987年「SLA 1」として商品化した。これが初の3Dプリンタとされるこの後も、1990年代半ばまでに様々な技術開発と製品が出されたが、それぞれ別々の名で呼ばれ、積層造形法(additive manufacturing)はそれらを表す共通の言葉として漠然と用いられていた。
1990年、3D印刷ともっとも広く関連づけられるPlastics extrusion技術が、Stratasys社により"fused deposition modeling (FDM)"(熱溶解積層法)として商品化された。
1995年、Z Corporation社が、MITが開発した製品を初めて"3D printing (3DP)"の商標で販売した。これにより、Ink jet material depositionを行う機器をおおまかに他と区別して3Dプリンタと呼ぶようになっていった。
2000年代半ばまでは投資額が安くても数百万円規模のため企業など事業所で導入されるのが主であったが、オープンソースによるFab@HomeやRepRapの開発が進み、2009年に基本特許の保護期間が終了したのに伴って数万円〜数十万円のものが発売され始め、個人や家庭でも導入されるようになっていった。
2008年から2011年にかけて、低価格の個人用3Dプリンタ市場は毎年平均346%もの大幅成長を遂げ、2013年には7万台が売られたと見積もられている。
2010年頃は、3D Systems,Stratasysなど上位3社で業界シェアの80%以上を占め、特に、ストラタシス社のDimension/uPrintシリーズの業界シェアが約50%と高く、事実上の業界標準となっていた。2012年に3D SystemsがZ Corporationを併合して、二社の争いになった。
2014年2月には精密な造形に適したレーザー焼結法の特許の保護期間が終了してこの方式に複数の企業が参入した。
一方、2014年は、低価格プリンタのトラブルなどが表面化した年であり、2016年にかけて3Dプリンタ業界における大手メーカーの経営が悪化、株式も低迷する契機となった。2015年12月には、3Dシステムズ社が低価格帯プリンタの製造を打ち切ったほか、2016年4月には、低価格帯プリンタを製造してきたメーカーボット社が、従業員を解雇した上で製品製造をアウトソーシングすることを発表した[17]。
近年では3Dスキャナを搭載した機種や熱溶解積層法以外のより精密な造形に適した光造形法等の低価格化も進み、普及に拍車をかけている。また、新規参入が相次ぎ、新たな開発競争の段階を迎えている。
一方、30年以上使われてきた3Dプリンタ用ファイルフォーマット.stl(Standard Triangulated Language)は、形状の情報のみしか保持しておらず、素材や構造の情報を記述できないなど、3Dプリンタの進歩に対して追従できないなどの問題が多くなってきたため、国際標準化委員会ASTMとISOは共同で、3Dプリンタ用ファイルフォーマットAMFを定めている。
・方式
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−3Dプリンタ対象物、手法、機種によって多少の違いはあるが、コンピュータ上で作った3Dデータを設計図として、その断面形状を付加加工で積層していくことで立体物を形成する方式が基本とる。液状の樹脂に紫外線などを照射し少しずつ硬化させていく光造形方式、熱で融解した樹脂を少しずつ積み重ねていくFDM方式(Fused Deposition Modeling, 熱溶解積層法)、粉末の樹脂に接着剤を吹きつけていく粉末固着方式などの方法がある。
−光造形法
紫外線を照射することで硬化する液体樹脂を用いた造形法。初期のラピッドプロトタイピングはこの手法から始まり、ステレオリソグラフィー、レーザーリソグラフィーなどともいわれた。紫外線の照射によりラジカル重合、もしくはカチオン重合する樹脂を用い、絞った紫外線レーザービームで樹脂を選択的に硬化させて立体物を造形する手法であり、面一括露光により造形する手法も開発されている。元々は高価な機器が必要であったが、近年100万円を切るモデルも販売されている。
−粉末法
素材粉末を層状に敷き詰め、高出力のレーザービームや(導電性の素材では)放電などで直接焼結(粉末焼結式積層法)したり、インクジェット方式でバインダを添加して固めたりする(粉末固着式積層法)などして造形を行う手法。前者では、ナイロンなどの樹脂系材料、青銅、鋼、ニッケル、チタンなどの金属系材料などが利用できる。後者ではスターチ(デンプン)、石膏などの材料が知られ、ランニングコストを抑えた3Dプリンタに利用されることが多い。フルカラー印刷に対応しているのも特徴である。
−熱溶解積層法(FDM法)
熱可塑性樹脂を高温で溶かし積層させることで立体形状を作成する造形法。 ラピッドプロトタイピング・3Dプリンタの造形方式の中では唯一、本物の熱可塑性樹脂が使用でき、ABS樹脂・ポリカーボネート樹脂・PC/ABSアロイ・PPSF/PPSU樹脂・ULTEM(ポリエーテルイミド、PEI、英: polyetherimide)樹脂など熱可塑性の様々なエンジニアリングプラスチックが使用できる。 米国ストラタシス社がこの方式の特許を持っていたが、基本特許は切れた。この系統に含まれるものとして、レーザービーム中に粉末やガス状化合物を吹き込んで、金属や化合物の積層物を製作するものもある。10万円未満で販売されている機器はほぼこの方式である。樹脂を熱で加工するという特性上、造形物が反って変形するなどのトラブルが多く、使いこなすにはある程度の慣れが必要である。。
−シート積層法
シートを積層させ、形状を作る造型法。数種類あり、カッティングプロッタで切り込みを入れた紙を糊で積層する方式や 光硬化樹脂をシートにインクジェットで出力してから転写する方式や水溶性の紙に熱硬化性樹脂や光硬化樹脂のモノマーをしみこませて一層の積層毎に加熱または紫外線照射、加圧して硬化する方法がある。上記の粉末法の基材をシートに置き換えたもの。
−インクジェット法
液化した材料またはバインダを噴射して積層させ、形状を作る造形法。インクジェットプリンタの原理を応用している。インクジェットプリンタのカラーインクを使用して、カラー造形物も作成されている。光硬化樹脂を噴射後、短波長の光を照射して硬化する方法やワックスを噴射する方法等がある。材料の無駄が少なく、歯科技工や宝飾品に使用されるロストワックスの原型のように比較的精密なものを作るために適する。オーバーハングの部分のために溶性のサポート材を出力したり、フルカラー出力に対応した機種もある。

3D に関する最新技術 第14回

2.7 3Dテレビ - 立体テレビ放送
立体テレビ放送とは、視聴者に立体的な映像を表示することができる3次元ディスプレイ(薄型テレビ等)に向けたテレビ放送のことである。3Dテレビ放送とも。視聴者が被写体を自由な視点から観察できる「自由視点テレビ」などを前提とした、新しいテレビ放送も含まれる。
・放送方式
3D_New_Technologu_312010年現在、3D映像を放送するための放送方式は、日本および世界的にも標準化が進んではいない。 3D映画を含めれば、立体動画を記録・伝送する基本的な方式には「サイド・バイ・サイド」方式と「ライン・バイ・ライン」(インターレース)方式の2つがあるが、世界的には試験放送や実用放送をして進められている3Dテレビ放送としては「サイド・バイ・サイド」方式にほぼ定着している。他の方式には「トップ・アンド・ボトム」、「フレームシーケンシャル」や「フレームパッキング」もある。
「サイド・バイ・サイド」方式では、画像の横幅だけをオリジナルの2分の1に圧縮して、左右の視点から見たこの2枚の画像を横に並べ、その他は従来の2D画像と同様に放送する。受信機側では横幅だけを2倍に伸ばして2枚の画像を得る。動画であるので、この処理をフレームごとに行う。
サイド・バイ・サイドにも複数の形式が存在するため、放送方式の標準は定まっていない。
日本ではNHKメディアテクノロジーが開発した「MT」方式を、日本BS放送(BS11)が2007年12月から定常的に3D放送を開始し、BS-TBSがそれに続いたのでこれが幾分優位な立場であったが、2009年年末に日本のソニーが米RealD社の「RealD」フォーマットを採用した3DTVを発表した後、2010年のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)でJVCケンウッド、パナソニック、東芝、サムスン、ディレクTVがRealIDを採用と発表して巻き返しになった。他にもカナダのSensio Technologies社の「SENSIO 3D」方式が以前から米国や英国でスポーツ中継放送に用いられたりして、2010年のCESでは米VIZIOがSENSIO方式の採用を発表している。
放送方式を含む世界的な標準化を行っているITU-Tでは、H.264を基にしたH.264/MVCを2008年に標準化した。H.264/MVCは「Blu-ray 3D」に採用された。サイド・バイ・サイドとライン・バイ・ラインが、フレーム当たりの表示画素数を半分にして左右同時伝送するのに対して、H.264/MVCは、左右画像の表示画素数はそのまま、H.264 AVCおよびマルチビュー符号化により圧縮して格納するものである。なお、Blu-ray 3Dでは伝送方式にフレームパッキング方式が採用されている。なお、ITU-T自身はH.264/MVC以降の次世代規格をも策定中であり、いずれもサイド・バイ・サイド方式などとの互換性がない。
これらの他にも映画会社によるDVD/BDでの映像ソフトのフォーマットやケーブルTV会社の配信フォーマット、録画機器を含めたTVメーカーの動向など、関連する要素が多い。標準候補の乱立の懸念も含めて、3DTV放送の標準的な放送方式は収束までしばらく時間がかかる可能性がある。
・歴史
日本では1974年10月から1975年3月まで放送された日本テレビ系のドラマ「オズの魔法使い」の11月放映分から、番組中の数分間アナグリフ方式の赤緑メガネを使い立体視できる映像が放映された。さらに同局で1977年10月から1978年10月まで放送されたアニメーション「家なき子」ではステレオクローム方式を採用した3次元映像を放送していた。これは眼鏡がなくても普通に視聴でき、眼鏡があれば立体視できるようになっていた。
2007年10月1日、メガネストアーによる日本初の実写3次元映像CMがオンエアされた。このCMはアナグリフ方式を採用しているため、立体的に見るためには赤青メガネが必要であり、メガネストアー各店舗では赤青メガネを無料配布している。
2007年12月より日本BS放送(BS11)が、立体テレビ番組「3D立体革命」の放送を開始し、ビックカメラ等の一部家電量販店の店頭でデモが行われている。ただし同放送の視聴には専用の受像機とメガネが必要となるが、2008年12月の段階で市販されているのはヒュンダイ製の46型と32型液晶テレビの2機種のみで、現状では技術デモの色彩が強い。また中国でも、上海文広互動電視公司が2007年5月より立体テレビの放送を開始している。番組放送時、普通の2Dテレビで視聴すると、画面が2分割される「サイド・バイ・サイド」での放送となる。
2008年1月7日付読売新聞の記事によると、総務省は、2020年をめどに企業向けの映像技術を実用化、2025年には一般家庭用に立体テレビの他、立体テレビ電話等も実用化することを目指し、民間企業と共同でシステムの開発を進める方針としている。
2009年11月1日に日本テレビ系列で放送された『驚きの嵐!世紀の実験 学者も予測不可能SP』では、事前に視聴者に赤青メガネを用意するように呼びかけて番組の一部で3D放送を行った。
2010年初頭には、パナソニック、ソニー、サムスン電子など家電大手各社が立体テレビ(3Dテレビ)の年内市販化を表明。パナソニックは2010年4月に販売を開始した。さらに3Dコンテンツ制作や立体テレビ放送普及のために大手映画・放送会社との提携を進めており、新たな家電需要の開拓が期待されている。2010年12月には、東芝から12型と20型の裸眼3Dテレビが発売された。2011年秋には、40型以上の裸眼3Dテレビを発売する予定である。
日本では2010年6月19日にスカパー!がハイビジョン3D放送を開始した。2010 FIFAワールドカップ「日本×オランダ」戦にて3Dでの生中継を行う。またそれに先がけた2010年6月12日、日本初の3Dによるバラエティ番組としてフジテレビNEXTにて「アイドリング!!!の3Dング!!!」の放送が行われる。
また民放系列のBSデジタルでは、BS朝日でパナソニック協賛の番組「Panasonic 3D Music Studio」(2010年11月開始、2012年9月終了)、BSフジでソニー協賛の番組「3D☆3D」(サンデーサンデー、2011年1月開始、2012年4月1日終了)が立体ハイビジョン放送を実施、日本BS放送(BS11)でも2009年から率先的に取り入れ、2010年には三社祭中継番組で日本初の3Dによる生放送を実施、その他では前述の「3D立体革命」や「3Dプラネット」などの番組を放送していたが、2015年9月30日をもってミニ番組「3D紀行」が終了し、無料民放での3D定時番組は姿を消すこととなった。
このほか2011年3月25日にはプロ野球中継「巨人対横浜」戦で、BS日本がBS放送で初となる3D方式の実況を計画していた[9]が、この2週間前の3月11日に東日本大震災が発生した影響により開幕が4月12日まで延期されたため、この3D中継は実施されなかった。これ以後もプロ野球の3D試験放送は延期されることなく、また改めて実施する予定も組まれておらず、「幻の企画」となった。
2017年1月、2012年以降は販売の減少が続いていた3Dテレビから各メーカーが撤退する中で、最後に残っていたソニーとLGも2017年には撤退することが報じられ、3Dテレビは市場から姿を消す見込みとなった。

3D に関する最新技術 第13回

2.6 3D映画
  立体映画は、立体的に表示される映画である。近年は3D映画(3-D film)とも呼称される。
・概要
 左眼用と右眼用の映像を同時に撮影したものなどを、スクリーンに映写機で投影し、専用の眼鏡を観客がかけることなどにより、左眼には左眼用の映像のみを、右眼には右眼用の映像のみを観客に見せることで立体3D_New_Technologu_30視を実現する。立体映画の方式には様々なものが存在する。
専用眼鏡 Stereoscopy などを用いた立体写真は、19世紀前半にはすでにあった。このため、19世紀末に発明された映画においても、映画史のごく初期から立体映画が撮影・上映されてきた。1922年にはThe Power of Loveが作られた。
 1952年から1954年が「黄金時代」と呼ばれ、実験的な『ブワナの悪魔』(Bwana Devil)、『フェザー河の襲撃』、『ホンドー』、『大アマゾンの半魚人』などが製作された。本格的な劇映画として3Dになったものとしては1954年のアルフレッド・ヒッチコック監督の『ダイヤルMを廻せ!』がある。「1953年は1953Dの年として記憶されるであろう」というアメリカの宣伝文句があった。
 2005年の『チキン・リトル』においてデジタル上映による3D映画が初登場し、2009年のジェームズ・キャメロン監督の『アバター』が世界興行収入歴代1位となる26億4000万ドル(約2385億円)を記録し、それ以降ハリウッドや日本でも多数の立体映画が製作されるようになった。また、ヒットシリーズの最新作を3Dで製作したり、過去の映画のリメイクを3Dで製作したり、過去のヒット映画を2D-3D変換した3D版を劇場公開したりなど、製作本数・興行成績などで3D映画の存在感が増している。この背景には、近年テレビやDVDなどに押され気味の映画館の収益アップと、盗撮による海賊版への対策を図る狙いもある。また立体映画の上映にはDLPなどのデジタル映写機の方が適しているため、デジタルシネマの普及促進も期待されている。
日本の雑誌である「日経トレンディ」が選ぶ、「2010ヒット商品ベスト30」に「3D映画」が2位に選出された。
一方で日本映画の3D作品は、2011年公開作品の殆どで上映スクリーン・興行収入共に2D版が3D版を上回っていた。これらの事情に加えて、制作費が高騰になる事もあり、2012年現在では邦画全体で3D作品の制作が減少したりと事実上の撤退が相次いでいる。
洋画の3D作品においても、近年は2Dでの上映が中心となっているため、3D版の上映は縮小傾向にあり、完全に2D版のみでの劇場公開となる事もある(特にCGアニメ映画で顕著)。2016年11月公開の『スター・トレック BEYOND』を境に、3D版をIMAXや4D版での上映に集約し、それ以外の通常スクリーンでは全て2D版のみとなる作品が増えている。劇場公開時に3D上映がされても、Blu-ray 3Dが未発売となる場合もあれば、逆に2D上映のみだった作品のBlu-ray 3Dが発売される事もある。
・種類
−アナグリフ式

 異なる色のメガネをかける(赤と青のメガネの場合が多い)。基本的にモノクロ映像に限られるが、通常の映写機で映写可能。作品例:飛びだす冒険映画 赤影(1969年7月)、飛び出す人造人間キカイダー(1973年3月)、飛び出す立体映画イナズマン(1974年3月)、ザ・ユニバース(1985年、科学万博の富士通パビリオンで公開)、オバケのQ太郎 とびだせ!バケバケ大作戦(1986年)、ウルトラB ブラックホールからの独裁者B・B(1988年)
干渉フィルター方式 (Interference filter technology)
多重コートフィルタを使って6つの色チャンネル(RGB各2つ)を左右に振り分ける。アナグリフ式と異なりカラー映像に用いることができる。
−直線偏光フィルター方式
 左右の映像を偏光で投影する事により、偏光板の眼鏡をかけて見る事により立体視できる。カラー画像が可能。直偏光なので平面スクリーンのみでドーム型のスクリーンには適さない。また顔や眼鏡が傾くと正常に立体視できない。1980年代以降の地方博覧会や各地の遊園地等で普及した。
−円偏光フィルター方式
 右旋と左旋の円偏光を使用する事によって立体視を得る。カラー画像が可能で、顔や眼鏡が傾いても正常に立体視できる。近年のDMD式デジタル投影機で投影される。
−液晶シャッター方式
 赤外線で映像と同期して左右が交互に遮光される液晶シャッターを使用する事によって立体視を得る。カラー画像が可能。1990年の国際花と緑の博覧会の富士通パビリオンでザ・ユニバース2が上映され、その後、幕張の富士通ドームシアターで爆笑問題が吹き替えを担当した『エンカウンター』等の作品が上映された。液晶シャッター眼鏡や同期システムなど設備が高額になってしまうのが難点。
・映画館における立体映画上映規格
 現在、映画館で普及している規格は以下の通り。
IMAX3D(アイマックス3D)
IMAX専門館で上映される。3D方式は上映館により異なり、直線偏光フィルター方式、液晶シャッター方式などがある。
IMAXデジタル3D(アイマックスデジタル3D)
IMAXデジタル専門館で上映される。直線偏光フィルター方式で、左右の映像を二台のプロジェクタでシルバースクリーンに上映するため映像が明るい。IMAXシステムそのものが大規模で高額となる。
RealD(リアルディー)
左右の映像を毎秒144回切り換え、それに同調した左右の円偏光フィルターをかけて上映する。フィルター眼鏡が安価で使い捨て可能だが、通常のホワイトスクリーンから偏光専用のシルバースクリーンに張り替える必要があり導入コストが大きい。
XpanD(エクスパンド)
液晶シャッター方式。通常のホワイトスクリーンで上映可能なため導入コストが小さいが、眼鏡が重く光量も不足しがちである。
ドルビー3D
干渉フィルター方式。多重コートフィルタを使って6つの色チャンネルを左右に振り分ける事で、自然な多色表現を可能にしている。通常のホワイトスクリーンで上映可能だが、フィルター眼鏡が高価で回収・洗浄の必要がある。
MasterImage 3D(マスターイメージ3D)
RealD同様に円偏光フィルター方式使用して上映するが、RealDが液晶フィルタを使用して偏光方向を切り替えるのに対し、MasterImage 3Dは偏光方向の異なる2種類の円偏光フィルターを物理的に切り替えながら上映する。物理的なフィルター機構を使用するため定期的な清掃が必要になる。
NESTRI 3D CINEMA SYSTEM(ネストリ3Dシネマシステム)
液晶シャッター方式。シルバースクリーンが不要の為、導入コストが非常に安い。XpanDと同様のアクティブシャッター方式だが、XpanDに比べて、輝度が高くメガネも軽量で装着感も良い。防犯タグ内蔵。また子供用アタッチメントもある。大阪ステーションシティシネマ(2011年5月4日開業)にて日本初上陸をした。
Technicolor 3D(テクニカラー3D)
既存の35mm映写機を使用し、円偏光フィルター方式にて上映する規格。上映に使用するプリントは3D専用のものであり、1コマを上下に分割し、それぞれ右目用、左目用の画像が記録されている。これらの画像を専用レンズにて円偏光にしてから上映する。
Sony Digital Cinema 3D(ソニーデジタルシネマ3D)
・家庭における立体映画視聴
 長年立体映画を家庭のテレビで視聴する際、立体映像を再現する試みは何度も成されてきたが、様々な理由で商業的な普及にはいたっていない。代表的な理由として、一般家庭において最も一般的な3D視聴方式は未だに赤青メガネ方式であり、これが「立体映像は目に悪い」という偏見・誤解を生む温床になっており、3D普及の妨げの一因になっている。
しかし近年、主に北米の映画市場で立体映画が商業的成功をおさめつつある事を受け、家電メーカーも立体映画の放送・パッケージソフト収録フォーマットの国際規格化に本腰を入れて取り組みはじめている。
2009年12月、Blu-ray Disc Association(BDA)は3次元ディスプレイなど立体映像(国際規格)対応のAV機器を商品化するため、ブルーレイディスクに立体映像を収録するための規格「Blu-ray 3D」完成を発表。2010年から対応するテレビやプレーヤー(レコーダー)、ソフトなどが順次発売されている。
・立体映像の視聴が身体に及ぼす影響
 近年3次元ディスプレイなどの一般化にともない立体映像を視聴する機会が増えており、人体への健康被害が懸念されている。
有害と感じる代表的症状としては、使用時に、眼精疲労、頭痛、吐き気などの体調不良を引き起こす場合がある。また、使用後に物が2重に見えるなどの視覚障害がしばらく残る場合もある。これらの症状は、年齢などの個人差、視聴時間、3次元ディスプレイの方式、および立体視ソフトの内容に依存すると考えられており、安全基準の確立が求められている。日本では、電子情報技術産業協会、産業技術総合研究所、3Dコンソーシアムが共同で「3DC安全ガイドライン」と「3D文献抄録集」を作成した。案をまとめた快適3D基盤研究推進委員会は、このガイドラインを基にISO(国際標準化機構)に国際標準として提案する予定にしている。

3D に関する最新技術 第12回

2.5 3D音響(立体音響)
 立体音響とは、音を録音再生する際に3次元的な音の方向や距離、拡がりなどを再生する方式のことである。3次元音響、3Dオーディオなどともいう。また、3次元の空間上の音場を制御するという意味も含め、三次元音場制御システムのことを指す場合もある。代表作として、君の名はである
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・技術
立体音響の意味する所は、ホールやライブ会場といったある特定の場所での音環境を立体的に再現することにある。すなわち、主として聴覚から人間の空間認知(位置覚#空間認知を参照)に対し、あたかも録音現場にいるが如く、再生音響によって感じさせるということである。実際の場所で聴く音環境では、音源から発せられる音波が、球面上に広がり他のさまざまな音と重なり合いながら聴取者に届いている状態である。つまり、聴取者に届いている音波というのは立体的な曲面を持つ粗密波である。それを、たとえばステレオ録音すると、空間における広がりを2点のみで記録したものであるから、理論上は、そのままステレオ再生すると左右方向の1次元の広がりはほぼ再現されるものの、奥行きについては残響成分によって補助的に再現されるに過ぎず、上下についてはより情報が少ない。
そこでたとえば、複数のマイクで録音した物を複数のスピーカで鳴らし音場を再現するとか、空中にただマイクを固定するのではなく、人間の耳に聞こえるような音響を再現しながら録音する、などといった立体音響のシステムがある。
立体音響は、しばしば以下のような要素によって再現される。こうした要素はマイクの配置によって物理的に収録・再現される時もあれば、デジタル信号処理によって人工的に再現される時もある。
音量差
距離による音量の減衰や両耳間強度差により音源の音像定位を再現するもの。
時間差
音波が到達する時間差により音源の音像定位を再現するもの。両耳間時間差、ハース効果(先行音効果)など。
周波数特性の変化
音波の伝達や遮蔽による周波数特性の変化により音源の音像定位を再現するもの。頭部伝達関数など。
位相の変化
音波の伝達や遮蔽による位相の変化により音源の音像定位を再現するもの。
残響の変化
残響特性により周辺環境の音場を再現するもの。残響特性はしばしばインパルス応答として計測される。
−方式
立体音響の方式として現在ではさまざまな方法がある。
・ステレオ方式およびサラウンド方式
立体音響の簡便かつもっとも古い方法としてステレオ方式がある。ステレオ方式においてはすくなくとも2個のマイクロフォン、2チャンネルの録音再生システム、2個のスピーカを使用して再生する。ドルビーデジタルによって代表されるサラウンド方式においては3個以上のスピーカを使用する。
また、3D位置オーディオ(3-D positional audio)と呼ばれる方式においては、モノラル録音した音を使用してデジタル信号処理によって方向感などを与える。通常のステレオ方式においては再生に使用する2個のスピーカの間だけから音が聞こえるが、3D位置オーディオ技術を組み合わせることによってスピーカの外側から音が聞こえるようにすることができる。
・空間的音響
YoutubeやFacebookの360度動画およびVR動画 (ステレオ360度動画) では、360度の音響を符号化するためにSpatial Audio (空間的音響) を使用している[2][3]。
Spatial Audioのために、FacebookはFacebook 360 Spatial Workstationを、GoogleはSpatial Media Metadata Injectorを提供している。
・対応機材
AMBEO VR Mic - ゼンハイザーによる専用マイク
音響機器メーカーZOOMはAMBEO VRマイク対応録音機材がいくつかある。フィールドレコーダーはF8n、F8、F4が、ハンディレコーダーはH2n[4]がある
・バイノーラル方式
バイノーラル方式は、ステレオ方式での聴取者の前方にスピーカを置くのに対して、ヘッドフォンを使用して再生する。バイノーラル方式における録音は、通常、ダミーヘッドと呼ばれる模擬人頭の耳の部分にマイクロフォンを埋め込んで録音する。また利用者の耳に小さなマイクをイヤフォンのように固定する(電源はレコーダーやビデオカメラのプラグインパワー方式で供給する)タイプのバイノーラルマイクロフォンも複数モデルが存在する。装着者の呼吸音やつばを飲み込む音なども拾ってしまうといった特徴もあるが、嵩張るダミーヘッドに比べ手軽に利用できる。
サラウンド方式の立体音響を頭部伝達関数 (HRTF)によってバイノーラル方式の立体音響へと変換するツールも存在する (SOFAlizerなど)。
・立体音響レンダリング
立体音響レンダリングには、特徴予測方式とレイトレース方式が存在する。3DCGソフトウェアではCinema 4D、Shade、Blenderなどが立体音響レンダリングに対応している。
特徴予測(Characteristic prediction)
音源とマイクの位置・向き・動きなどから、減衰・音像定位・ドップラー効果などを計算で再現する方式。
OpenAL、多くのゲームエンジン、Blenderなどがこの方式を実装している。
音線法/幾何音響モデリング(英語版)(ray acoustic modeling/geometric acoustic modeling)
壁や床や障害物などの反響などを再現するために、レイ・トレーシングを使って計算する方式。低周波は拡散反射しやすく、高周波は鏡面反射しやすいため、波長を区切ったレイトレースも使われている。
NVIDIA VRWorks Audio、GSound、BlenderアドオンのE.A.Rなどがこの方式を実装している。
適応矩形分解 (Adaptive Rectangular Decomposition)

3D に関する最新技術 第11回

2.4 3D映像(3次元映像)
 3次元映像(Stereoscopy)とは、観察者から立体的に見える映像のことである。3D映像、立体映像、3D立体視とも呼ばれる。その映像による動画のことを3次元動画、3D動画、立体動画という。
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あるオブジェクトを立体的に、観察者と同じ空間に存在するかのように知覚させるためには、観察者の左右の眼に視差 (parallax) のある映像を表示する(両眼視差 binocular parallax と呼ばれる)と同時に、観察者の頭部運動に合わせて映像の見え方を変化させる(運動視差 motion parallax と呼ばれる)必要がある。後者の要求は、被写体がどの方向からでも正しく見える映像と言うこともでき、映画『スター・ウォーズ』に登場する「レイア姫の映像」を例に挙げて説明されることもある。
・立体映画
映画としての3次元映像については「立体映画」を参照
・表示装置
映画館における立体映画上映規格については「立体映画」を参照
3次元映像の表示には大きく分けて2つのアプローチがある。
−3次元ディスプレイ
種々の方式が提案されている。ディスプレイとしての大きさを有し、そこにディスプレイデバイスが存在している必要があるが、観察者の頭部動きに応じた見え方の変化(運動視差)には、本質的に時間の遅れが存在しない。
−ヘッドマウントディスプレイ (HMD)
頭部に装着するディスプレイ装置。頭部の動きと表示の時間差や位置推定のずれがほとんどないHMDシステムは、究極の臨場感を与える[1]。ディスプレイとしての大きさが必要なく、原理的には視野を覆うような広角のものも製作できるが、観察者の頭部の動きに合わせて両眼の映像を生成して表示するため、頭部の動きと表示との時間の遅れが存在しうる。
・3次元映像の規格
表示装置の技術的な詳細については「3次元ディスプレイ」を、放送方式については「立体テレビ放送」を、映画館における立体映画上映規格については「立体映画」を参照
記録方式、伝送方式、表示方式それぞれの互換性(機器における方式相互の変換を含む)については2011年現在、統一が取れていない。
 アナグリフ方式
 サイド・バイ・サイド方式
2011年現在、日本の3Dテレビ放送およびDVD、Blu-rayソフトではサイド・バイ・サイドのMT方式が主流。
 MT(NHKメディアテクノロジー)
 RealD 3D
 トップ・アンド・ボトム方式
 SENSIO 3D
 ライン・バイ・ライン方式
 インターレース方式とも呼ばれる。対応する3次元ディスプレイの表示方式は偏光式。
 フレームシーケンシャル方式
 対応する3次元ディスプレイの表示方式は液晶シャッター式。
 Blu-ray 3D
記録方式としてH.264/MVCを、伝送規格にはフレームパッキング方式を採用している。「Blu-ray 3D」方式は、前記のサイド・バイ・サイドのMT方式(を採用したBlu-ray)とは異なる。
 AVCHD 3D
 Blu-ray 3Dと同じく、記録方式としてH.264/MVCを、伝送規格にはフレームパッキング方式を採用している。 AVCHD Ver.2.0で標準化。
・その他
一部のTV番組などのメディアでは、3DCGで作られた平面映像や、プロジェクションマッピング(立体物に平面映像を投影する表現手法)による映像を3次元映像や立体映像と誤って呼ぶことがある。
応用としては異なる2つの映像を1つの画面にそれぞれ別に表示する「DualView」「SimulView」「ExPixel」がある。
従来では不明だった深さの映像が見えるため、医療分野にも使われることもある。

3D に関する最新技術 第10回

2.2 3Dモデリング
3D モデリングとは、3 次元のオブジェクトまたは形状の数学的表現をソフトウェアを使って作成するプロセスのことである。作成されたオブジェクトは 3D モデルと呼ばれ、さまざまな業種に使用される。
映画を始め、テレビ、ビデオ ゲーム、建築、建設、製品開発、科学、医療といった業界のすべてで、3D モデルを視覚化、シミュレーション、レンダリング イメージの作成に使用しているのが現状である。
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3DCGにおいて、モデリングする方法はいくつかある。どれを使っても同じような形状は作れるが、データの違いや作りやすさが全く違ってくる。現実には、機能が搭載されているソフトも変わるので、それによる表現力も違ったものとなる。
従って、どのようなソフトを使うかは、クリエーターの要求に合わせることである。

2.3 3Dフォト(3D photo)
 3Dフォトは、ステレオグラムに代表されるように立体画や立体図から創生される。
 
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ステレオグラム(stereogram)は、立体的印象をもつように描かれた平面に描かれた図や絵]あるいは写真。目の焦点を意図的に前後にずらして合わせることで左右の絵を別々の目で見ることにより、立体的に見ることができる。
人間は、片眼では焦点距離、物体の大きさ、重なり、明瞭さ、移動速度、両眼では、両眼視差、輻輳などの情報を総合的に利用して立体を認識している。ステレオグラムは両眼視差を利用して画像を立体として認識させる。現実の立体を見るときには、両眼の位置の差から右眼と左眼では異なった像が写っている。この見え方の違いが両眼視差である。この2つの画像の差異を利用して脳は空間の再構築を行う。逆に、平面上の画像でも両眼に視差が生じるように映像を写すことで、脳に立体として認識させることができる。
この効果は、軍事的な場面でも活用された。偵察機に搭載された解像度の低いカメラ2台によって同時に撮影された2枚の写真を片目ずつで同時に見ることにより、元の写真を単独で見るよりも立体的に知覚でき、カムフラージュを見破ることができたのである。
・立体視の構造と素材
−ステレオペア

ステレオペアは、視差が生じるような2枚の画像を左右に並べたステレオグラム[2]。19世紀には、ステレオカメラと呼ばれるわずかに角度をずらした2枚の写真を撮影できるカメラが発明され、ヨーロッパやアメリカで大流行した。日本でも明治時代に撮影されたステレオ写真が残っている。
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それぞれ、左側2枚のペアを平行法(⇈)で、右側2枚のペアを交差法(↗↖)でと、どちらの方法でも見ることができるように1つに並べたもの。左端のものと右端のものは全く同じものなので、実際の画像は2つ=ペアである。
−ステレオペアの作成方法
ステレオカメラを用いなくても、普通のカメラでステレオペアは容易に撮影できる。
通常どおりに写真を撮影する。
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カメラを右(または左)に平行移動して、もう一枚撮影する。この際の移動距離をステレオベースと呼び、多くの場合(35mmカメラ標準レンズの場合)人の両眼間隔の平均値と同じ 6.5cm が適当(主要被写体までの最近距離が約2m程度)である。遠くの被写体(東京スカイツリーとか山並み)を立体的に撮影する場合は、上記の航空写真での立体撮影と同様に長い移動距離が必要となる。その被写体までの撮影距離の2〜3%程度=1/30のルール[3]が目安となる。つまり、10m先の被写体の場合は30cm、100m先の場合は3m移動する必要がある。
仕上った写真を、撮影した位置通りに左右(または右左)に並べると立体視(平行法)ができる。交差法で見るときは左右を入れ替える。
この方法では左右の画像の撮影に時間差が生じるため、動く被写体を撮影することはできない。他に、2台のカメラを左右に並べ同時に撮影する方法もある。この場合は2台のカメラのレンズの中心の間隔がステレオベースとなる。
−ウォールペーパー・ステレオグラム
同じ図形の繰り返しパターンを持つ画像は、焦点の合わせ方で異なった距離に見えることがある。これを壁紙錯視と呼ぶ。
−ランダム・ドット・ステレオグラム
ランダム・ドット・ステレオグラム Random dot stereogram, RDS) は、一見ノイズのようにしか見えない画像だが、うまく焦点を合わせると立体が浮かび上がってくる画像である。レーダー技術者から知覚研究に転じたユレス・ベーラによって考案された。
初期のランダム・ドット・ステレオグラムは2枚の画像を使用していたが、1枚の画像で立体視が可能な方法が生み出された。単一の画像のみであることから、特に、シングル・イメージ・ランダム・ドット・ステレオグラム (Single Image Random Dot Stereogram, SIRDS) と呼ぶこともある。
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ステレオグラム: Stereograms, Stereographic Animations, Phantograms, and More
−シングル・イメージ・ステレオグラム
シングル・イメージ・ステレオグラム (Single Image Stereogram, SIS) は、ランダムな点の代わりに意味のある模様などを用いたステレオグラムである。ステレオグラムの本『マジックアイ』発売後、1990年以降に流行した。
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3D に関する最新技術 第9回

2.1 3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)続き
・フォトンマッピング(Photon mapping)

フォトンマッピングは、光をモデル化したフォトンを光源からばらまいてフォトンマップを作成し、次に作成されたフォトンマップに対し、光線追跡法を適用することでレンダリングする手法。計算量を抑えつつ、物体や媒質の質感や透明感を表現できる。ラジオシティと同様、計算結果の再利用が可能。
・パストレーシング(Path tracing)
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通常のレイ・トレーシングと同様にカメラから視線を飛ばし、オブジェクトと交わった点を始点としてさらに大量に2次視線を飛ばす。ここで得られた色や明るさを平均してその点の色とする。物体表面での光の乱反射を再現できるが、明暗差が大きいシーンではノイズが出やすい。
・サーフェスモデルとボクセル
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2次元の画像の最小単位をピクセルと呼ぶのに対し、3次元座標上に取り入れた最小単位をボクセル(voxel)と呼ぶ。多くの3DCGソフトウェアで採用されているのが、物体の表面のみを処理するサーフェスモデルであるのに対して、ボクセルは中身を持ったボリュームモデルである。液体や雲、煙といった流体計算で主に活用されている。現在では、炎、爆発、溶岩、髪の毛といった表現までも可能にしている。ボクセルモデルでは、正確な形状を作るにはボクセルの密度を上げなければならず、またメモリを大量に必要とする。
医療分野で、患部の状態を表現して、断面図を作成する場合などにも有効である。
レンダリングに必要なオブジェクトを選別し、レンダリングを効率的に処理するために利用されることもある。これをボクセル分割と呼ぶ。
オープンソースプロジェクトでは、OsiriXなど有名である。
・クロス(Cloth)
衣服を始め、布に関する多くの表現を可能にするための技術。衣服を着たキャラクターの動きや風の影響による布の形状変化のシミュレーションを行ない、デザイナーが手付けで布のアニメーションをつける負担を軽減させる。最終的には、人間の皮膚を始め、あらゆる事象をシミュレーション可能にすることが目指されている。
クロス(Cloth)の基本的な考え方としては、メッシュを擬似的なバネのようなものでリンクさせ、伸縮制限を持たせることによって、布の伸縮・弾性を再現させる。この質感再現のために、技術者によって様々な計算方法が提案されている。
クロスシミュレーションが大々的に使用された最初の映画を挙げると、ネズミが主役のCG映画『スチュアート・リトル』がある。
キャラクターにクロスの衣服を着せる制作手法としては、「擬似的な型紙を作り、結合し、キャラクターに被せる」といったMayaに実装されているClassic Clothと呼ばれる手法と、Syflexのように「普通のモデリングと同様な衣服のモデリングをし、クロスに変換する」という2種類の方法に大別される。 現在は、MayaもSyflexと同様の方法のnClothという機能が搭載されている。
Syflexはスクウェアによる映画『ファイナルファンタジー』のプロジェクトでジェラール・バネル(Gerard Banel)が開発したクロスシミュレーションをさらに発展させたもの。非常に高速で安定しており、MAYAのように布同士が反発して暴れるようなおかしなシミュレーション結果を出すことは少ない。
・3DCG用API
テレビゲームやパソコンゲームでも3DCGが一般的になっている。3DCG専用のAPIは主にパソコンゲームでビデオカード(グラフィックスカード)を利用するとき、プログラマが抽象的な方法でハードウェアにアクセスする方法を提供し、プログラマの負担を軽減する。これらのAPIはコンピューターグラフィックスハードウェアメーカーに不可欠である。次のようなAPIは特によく使われる。
OpenGL
各OSに移植され、互換性の高いAPI。3DCG作成やCADのようなアプリケーションをはじめ、ゲームなどにも幅広く利用される。
Direct3D
Microsoft製OS上のDirectXのコンポーネントの一つ。3Dのゲームに適している。
RenderMan
・各国の3DCG
世界で最も3DCGの技術が進んでいる国はアメリカである。ハリウッドの映画産業がバックボーンにあり、ピクサーなどの制作会社によって3DCGアニメが大量に制作され、実写作品にも盛んに3DCG技術が用いられている。また、コンピュータゲームにおいてもパソコンが主流のため技術革新に対応しやすく、その点では世界のビデオゲーム産業の盟主である日本を引き離しているとも言われている。
・日本
日本では技術発展を支えるための地盤が固まっておらず、その導入はやや遅れたものとなっている。
−実写動画
実写動画では旧来からの手法の優位を頑なに守ろうとする流れが存在したのも事実である。
−コンピュータゲーム
セガの『バーチャレーシング』、『バーチャファイター』シリーズ、プレイステーションなどといったコンピュータゲームでの3DCGの採用は早かったものの、専用に近いアーケードゲーム基板や家庭用ゲーム機など数年間は性能が固定されるハードウェアに依存した泡沫的な技術ばかりが蓄積されてしまい、根本的な部分での技術革新が進まなかったと言われている。
−アニメ
日本はアニメ大国であるが、アニメ制作会社は零細な所が多いために3DCGの導入が進んでいない。漫画原作が多いために3DCGとの親和性が悪いのも理由だと考えられる。親和性が良いと思われるロボットアニメでも手描きのロボットを好むファンが未だに多いが、近年は『創聖のアクエリオン』のようにロボット全てを3DCGで描いたアニメも増えてきている。理由として、デザインの多様化により複雑化したロボットが登場したり大多数で構成されたロボットの行動を描写したりする場合、アニメーターによる手描きではあまりにも負担が大きいからである。また、ロボットアニメ以外においても建物等の動きの無い(少ない)オブジェクトに関しては、3DCGを使用するアニメも多く制作されるようになってきている。『秘密結社 鷹の爪』では劇場版のみ採用され、3DCG映像は予算が一気に減少してしまうため、バジェットゲージ・システムを装備している。
上記のような理由から、日本の3DCGは総合的な技術の蓄積が遅れてしまっているのが現状と言える。ただ、ラジオシティ法、ソフトシャドウ、天空光(環境光源の基礎)などの照明分野は西田友是(東京大学)らの開発で、メタボールは大阪大であるが、日本発の技術が十分認知されていない。

3D に関する最新技術 第8回

2.1 3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)続き
・テッセレーションとポリゴンメッシュ

3DCGソフトウェアによっては、球や円柱などの単純なオブジェクト(プリミティブ)を、ポリゴンではなく中心点や半径、高さといった数値で扱う場合がある。これらの細部を編集したりレンダリングする場合は、ポリゴンメッシュに変換する必要がある。これをtessellationと呼ぶ(tessellateはモザイク模様にするという意味)。ただし、オブジェクトが本来持っていた形状情報である球体、円錐などのような抽象的な表現は失われてしまう。
・反射とシェーディングモデル
現在の3DCGの多くは単純化された反射モデルを利用しており、これをPhongの反射モデル(Phong reflection model)と呼ぶ(Phongシェーディング(Phong shading)とはまた違う技術である)。
また光の屈折では屈折率が重要な概念である。多くの3DCGソフトウェアでは、屈折率(index of refraction)を略してIORと表記する。
シェーディングとは、物体の陰影を計算することである。シェーディングには次のような種類がある。
・フラットシェーディング(flat shading)
ポリゴンの法線ベクトルと光源との角度から各ポリゴンの色を算出する。1つのポリゴンは一色に塗りつぶされる。単純なアルゴリズムなので計算速度が高速であるが、ポリゴンの継ぎ目ごとに不連続的に色が変化するため、滑らかには見えない。コンスタントシェーディング(constant shading)とも呼ぶ。
グーローシェーディング(gouraud shading)
オブジェクトの各頂点の法線ベクトルを求め、頂点間は一次補間してピクセルの色を算出する。ピクセル間の継ぎ目は目立たなくなる。gouraudは考案者の名前。
フォンシェーディング(phong shading)
オブジェクトの各頂点の法線の一次補間から、各ピクセルにおける法線を求めて、それを元に最終的なピクセルの輝度を算出する。グーローシェーディングにおける光沢の不自然さを改善する。Phongは考案者の名前。
        
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・Zソート法
隠面消去方法のひとつ。 ポリゴンの座標(大抵は中心点)を基準に、画面の奥(視線からもっとも遠いポリゴン)から、全てのポリゴンを順番に描画する。 後述のZバッファ法のような特殊な処理をせず、基本的に多角形を描画すればよいだけなので、実装が簡単であり、消費メモリが少なく非常に処理が高速にできる利点がある。Zバッファ法が普及するまでは古くは3DCG全般で利用され、また、最近まで家庭用ゲーム機におけるリアルタイム3DCGでは一般的に利用されていた。しかし、ポリゴン数が増えた場合は、ポリゴンをソートするコストがかかる、またフィルレートが膨大になるため、Zバッファ法と比較して速度的なメリットがなくなる。
ポリゴンが交差した場合に正しく表示することができないという欠点があるが、この解決策として、ポリゴンが互いに交差しないように静的、あるいは動的に細分化する方法がとられることがある。
Zバッファ法と異なり、半透明ポリゴンの描画に関しては、ポリゴンが交差する場合を除いて、概ね正しく扱うことができる。
・Zバッファ法
隠面消去方法のひとつ。 多数のポリゴンが重なった場合、奥のポリゴンが手前に描かれてしまうような不都合が生じることがある。 これを防ぐために、各ポリゴンを描画する際、各画素について視点からの距離を全て記録し、現在記録されている深度よりも近い画素だけを描画する。 Zソート法と異なり、通常は、視点にもっとも近いポリゴンからレンダリングする(Zバッファで判定することで、奥に隠れたポリゴンのレンダリングをスキップできるため)。
アルゴリズムが簡単なためハードウェア化しやすい利点があるが、Zバッファ用のメモリの分だけ、Zソート法よりもメモリは多く消費する。単純に、ピクセル単位で奥行きを判定して、ポリゴンのピクセルを塗るか塗らないかを判定しているだけなので、半透明なポリゴンは、Zバッファ法だけでは正しく処理できない(この場合、一度Zバッファ法で不透明なポリゴンだけ描画し、さらにZソート法で半透明なポリゴンを重ねて描く)。また、互いに接近した平行、あるいは低い角度で交差するポリゴンにおいて、Zバッファに記録される深度の精度によっては、隠面消去が正しく行われない、Zファイティング(Z-fighting)と呼ばれる現象が起きる。ゲームやCADソフトウェアのプレビュー表示など、リアルタイムでの描画によく利用される。
Zバッファとは深度を記憶するメモリ領域のこと。
・スキャンライン(Scanline rendering)
スクリーンを横一行ごとに分割して、その一行ごとに深度を計算してレンダリングする手法。透過を表現したり、シェーディングと併用することで陰影も表現できる。スキャンラインとは走査線を意味する。比較的高速だが、得られる画像の品質は基本的にレイ・トレーシングよりも劣る。
・レイ・トレーシング(Ray tracing)
   
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レイ・トレーシングは、視点から光源までの光を追跡することでレンダリングする手法。視点から描画する各画素の方向へ直線を伸ばし、物体と交錯する可否を数学的に判定する。照度は光源との方向ベクトルで計算する。反射と屈折は反射率および屈折率をもとに再帰的に探索を繰り返す。物体との交錯がなくなれば計算は終了する。スキャンラインでは得られない反射や屈折などの表現が可能になる。フォトリアリスティックな画像が得られる反面、大変なレンダリング時間が掛かる。そのため屈折の計算処理については、簡略化あるいは制限を設けるのが一般的である。リアルタイム3DCGの分野では、GPUの発展と共に、レイ・トレーシングのリアルタイム化が試みられているが、現時点において実用的なレベルには至っていない。
・ラジオシティ(Radiosity)
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ラジオシティによるサンプル画像。床や壁に当たった光が拡散し、軟らかな陰影を表現している。
ラジオシティは、各ポリゴンに光のエネルギー量を持たせて形状の相互反射を計算することで、間接光(やわらかい光の回り込み)などを表現する技術。計算に膨大な時間が必要になるが、完全拡散面で構成されるシーンでは、一旦物体相互間の光の反射を計算し終えれば、物体や光源が移動しない限り、その計算結果を保存して別のアングルからのレンダリングへ再利用することができる。照明工学の分野で発達した技術を3DCGのレンダリングに応用した。

3D に関する最新技術 第7回

2.1 3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)続き
・ディスプレイスメントマッピング

3Dモデルの頂点を実際に表面に対して上下に移動させて凹凸を表現する技術。バンプマッピングに比べて、実際に立体的な凹凸となるため違和感のない画像が得られるが、表現する凹凸に応じてポリゴン数が増大する欠点がある。リアルタイム3DCGの分野ではGPUによって高速に処理される。
・ハイパーテクスチャ
バンプマッピングによる凹凸の表現はあくまで擬似的に陰影を表現し、またディスプレイスメントマッピングによる凹凸は3Dモデルそのものの頂点を移動させて凹凸を表現するだけであるのに対して、3Dモデルに立体的な濃度関数を掛け合わせることにより、小さな凹凸はもとより、深い溝や貫通した穴のような大きな構造も表現することができる技術。
・パーティクル(Particle(system)
 
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ビルボーディングやメタボールによりレンダリングされたパーティクル 
ポリゴンはあくまで多角形の面なので、モデルにはっきりとした表面が無かったり、モデルの数が膨大であったり、動きが不規則な煙や炎などを表現するのには不向きである。また、毛髪や草木など、ポリゴンで表現しようとするとその量から大変な人的労力やリソースが必要になるものがある。パーティクルはこれらの問題を解決するための技術である。パーティクルはこれらを微小な粒子の集合として表現し、確率モデルでその動き・形状を処理する。高度なモデリングまたはレンダリングソフトウェアで扱うことが出来る。これをレンダリングする際にはビルボーディングやメタボールなどの技術が使用される。
・サブディビジョンサーフェス(細分割曲面、Subdivision surface)
大まかにモデリングされたポリゴンメッシュをメモリ上で細分化して、滑らかで継ぎ目の無い形状にする技術。少ないポリゴン数で形状を滑らかに表現出来るため、編集や変形も容易になる。ただし、工業用CADなど形状に高い精度が要求されるときには利用できない。
・ブーリアン複
数のオブジェクトどうしを集合演算する技術。他の形状と結合する(和)、一方の形状から他方の形状を削り取る(差)、重なっている部分のみを形状として抜き出す(積)ことなどができる。
・メタボール
 
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複数の3次元座標上の点を中心として濃度分布を設定し、濃度の閾値を形状の表面とする技術。球状の形状が引き付けあうようにみえる融合と、反発しあうように見える反転融合がある。正確な形状を作ることは難しいが、有機的な形状を少ない制御点で作るのに向いている。3DCG特有の概念ではなく、2Dの画像表現にも使われることもある。当初はその呼び名の通り球体を基本としていたが、その後改良が進められ、球体以外の形状も利用できるようになり、有機的な形状をモデリングする技術として活用されている。
モデリングの他に、流れる液体の表現等にも使われる。レンダリングに必要な計算量は多くともメモリの使用量が少ないのが利点だったが、現在ではそれらのリソースが充実している上、流体力学の計算法も進歩しているため、映像制作の現場では、見た目のチープなメタボールはほぼ使われることのない技術になっている。
・インバースキネマティクス(逆運動学、IK(inverse kinematics))
人間など多くの関節を持つ動物において、関節の末端部分の位置は常にその親となる部分の位置と角度に依存している。そのため、通常では関節の末端部分の位置を求める場合においてモデルの中心から末端にかけて順番に関節の角度計算をしていくことが理屈上でも正しい。しかしその手法で実際にアニメーションを作成する場合、関節の末端部分の位置の変化を求めるためには複雑な計算をモデルの中心から全て順方向に再計算しなおさなければならないため非常に非効率的なものとなる。この問題の解決のため、末端部分の位置を先に決めてその関節の末端位置を実現するための親となる関節の角度を簡易的に逆計算する手法が考え出された。これがインバースキネマティクスと呼ばれる手法である。
股−ひざ−足のような形状を想定してみると、足の裏が自転車のペダルにくっついたままペダルが回転運動をするアニメーションを作る場合に、ペダルの回転運動に合うように股・そしてひざや足の角度の変更を行なっていくのではなく、足部分の移動に追随する形で、逆に足−ひざ−股の順に各関節の動きを順次割りだして決定する方が、見た目も自然なアニメーションが作成できる。
・ライティング(照光、Lighting)
      
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左上から順に点光源、スポットライト、平行光源、環境光、天空光、IBL 
3次元空間上に光源を設定することをライティングと呼ぶ。光源によってモデルは可視物となる。光源には次のような種類がある。
点光源(Point Lighting):電球のように、一点から光を全方向に放射する光源。光源から離れるにつれて、光は弱くなる。
スポットライト(Spot Light):点光源の変形で、角度を限定して光を放射する光源。
平行光源(Directional Light):太陽のように、無限遠からの光をシミュレートする光源。太陽は厳密には無限遠にあるわけではないが、地球からはほとんど平行光源のように見える。点光源のように距離によって光の強さが変化することはなく、一定である。
環境光(Ambient Light):全ての物体を均一に照らす光源。間接光を擬似的に表現する。処理が高速だが、影が一様な輝度になってしまうなど不自然ではある。
天空光(Hemisphere Light):晴天の空のように、仮想の天球全体から光を放射する光源。環境光と似ているが、ラジオシティと組み合わせることで自然な間接光が表現できる。
IBL(Image-Based Lighting):シーン全体を2次元の画像で覆い、その画像を光源として利用する手法。同じ画像を同時に背景として用いることにより、オブジェクトが周囲と非常によく「馴染んだ」、フォトリアルな画像を作り出すことができる。なお、ここではHDRI画像を用いるのが一般的である。

3D に関する最新技術 第6回

2.3D関連の応用
2.1 3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)

 3次元コンピュータグラフィックス(three-dimensional computer graphics、略して3DCG)は、コンピュータの演算によって3次元空間内の仮想的な立体物を2次元である平面上の情報に変換することで奥行き感のある画像を作る手法である。20世紀末からのコンピュータ技術の急速な発達と性能向上によって、従来は大企業や大きな研究所でしか得られなかった精細で高品質の3次元画像が、21世紀初頭現在ではPCやゲーム機で得られるようになっている。
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毎年夏にアメリカで開催されるCGの祭典SIGGRAPHにて、世界中の多くの研究者により最新のCGの論文が発表され、技術更新がなされている。
・用途
3DCGは、ユーザーが仮想的な視点や対象物の変更を操作して直ちに更新された画像を得るCADのようなシミュレーションやコンピュータゲームのように実時間処理の動画像と、CG映画のように製作者側があらかじめ時間を掛けて動画像を製作しておくもの、そして、静止画の3種類に大別できる。十分に高い技術を用いれば、無生物では実写と見分けがつかないほど遜色のない画像が得られるが、人物画ではCG特有の無機質なものとなることが多く、ロボットでの不気味の谷現象と同じく一般に人の表情を描くのは不得手である。
・動画(実時間処理)
代表的な実時間処理による動画生成の用途はコンピュータゲームである。PCや家庭用ゲーム機からゲームセンターのゲーム機、携帯ゲーム機や部分的には携帯電話でのゲームにまで3DCGを用いた動画像が生成・表示されている。 工業用途では製品の設計段階でCAD/CAMによって部品同士の接続や製品の完成図を描いたり、建築でのパースを描画する目的で利用されている。また、現実世界での運動や周囲状況をコンピュータシミュレーションで再現することで効果的な訓練が行える、ドライブシミュレータやフライトシミュレータなども実時間処理での3DCG技術の利用例である。
動画生成における実時間処理はそうでないものに比べて画像の精度よりも実時間内に如何にそれらしい画像を生み出すかが求められるため、あらゆる箇所で処理を省いて演算をできるだけ少なくて済むように工夫されている。PC用の3DCG動画を生成するための専用ICとしてGPUが登場している。
・動画(非実時間処理)
3DCGによる映画の制作が代表的な「実時間処理ではない」動画生成用途である。多くの映画では、写実的な画像を制作する目的や、反対にマンガ的なアニメーションのように非現実的な画像を制作する目的で利用され、実写との合成映像も含めれば大半の商業用映画に何らかの形で3DCGの技術が用いられている。SF映画やアニメ映画などでは長時間の3DCG画像が必要とされることがあり、そのような場合には、3DCG演算専用の多数のコンピュータから構成される「レンダリング・ファーム」と呼ばれるサーバー施設で数ヶ月単位で動画像の生成が行われる。
広告宣伝用途での3DCG動画像も広告製作会社内やメーカー自身の内部で、映画と同じような環境で製作されている。
・静止画
広告や芸術、そしてあらゆる種類のイラストレーション用途に3DCGを用いた静止画が製作されている。
・原理
3次元CGの基本原理は3点座標を持つ対象物を2次元座標の仮想スクリーン上に透視投影することである。
まず[図1]のような3次元座標をディスプレイ内に考える。原点に視点があるとして座標内の3点の座標を持つ点Aはどのように見えるだろうか。
[図2]のように原点と点Aの間にスクリーンを置いた場合、スクリーン平面上に映し出される点Aの投影座標は h=x*(s/z)、v=y*(s/z) で求められる。zが大きくなれば、スクリーン上の点Aは限りなく原点に近付く。つまり遠くのものは小さく見えるわけである。スクリーンを置く座標sは大きくなればパースが緩く、小さくなればパースがきつくなるので、レンズの画角を表現することが出来る。 これが透視投影の原理であり、3点座標を持つ点をそれぞれ結べばワイアーフレーム画像が、結んだ点から面を作ればポリゴンによる表現が可能となる。
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・制作工程
3DCGの制作は次のような行程にわけることができる。
モデリング
−シーンレイアウト設定
−レンダリング
−編集・レタッチ

・モデリング(Modeling)
仮想3次元空間上に個々の物体の形状をつくる。多くの3DCGソフトウェアでは、1つの面を三角形や四角形といった多角形の集合として表現する。三角形しか扱えないソフトウェアも多い(四角形以上は曲面になる可能性があるため)。これらの多角形はポリゴン(英語で多角形の意)と呼ぶ。各形状はポリゴンの集合で表現される。モデリングで作られた形状をモデルやオブジェクトと呼ぶ。
他に面を定義する方法としては自由曲面がある。自由曲面はNURBS曲線、スプライン曲線、ベジェ曲線などで曲面を構成する方法で、ポリゴンのみでモデリングされた形状に比べ滑らかで正確な形状が得られる。ポリゴンのみでモデリングすることを、ポリゴンモデリングと呼んで、自由曲面を利用したモデリングと区別することがある。
形状が出来たら、オブジェクトに材質(マテリアル)を設定する。材質を設定しなければ、オブジェクトはただ一様に光を反射するだけの均質な物体になる。多くの3DCGソフトウェアでは、色、透明度、反射、屈折率、自己発光、バンプ、ディスプレイスメントなどの設定項目がある。
・シーンレイアウト設定
モデリングで制作したオブジェクトを、仮想3次元空間上に配置する。現実世界と同様、光源も配置しなければ何も表示されない(黒一色の画像が出力される)。また、仮想的なカメラを配置することで視点を設定する。これらを配置・設定した仮想的な舞台をシーンと呼ぶ。
・レンダリング(Rendering)
レンダリングは、これまでに設定したシーンから、仮想的なカメラに写されるはずの画像を生成する工程である。オブジェクトの形状や位置、光のあたり具合などをコンピュータが計算し、最終的な画像が生成される。レンダリングのアルゴリズムには、それぞれ処理速度や品質の違う多くの種類があり、用途に合わせて使い分ける。各種の設定を済ませレンダリングを開始した後は、レンダリングが終了するまで制作者がすることは特にない。一般にレンダリングには多くの時間を要する。シーン内に多くの形状があったり、高度なレンダリングアルゴリズムを利用している場合、数時間から数日かかる場合もある。ゲームなどリアルタイムにレンダリングしなければならないときは、単純で高速なレンダリングアルゴリズムを適用したり、シーンの総ポリゴン数を少なくするなど、大きな制限が加えられる。映画など大規模な制作現場では、同時に複数のコンピュータにレンダリング処理をさせて、計算時間を短縮することがある。
レンダリング手法によっては空気による遠近法・光の照り返しなども計算される。そういった複雑な計算をするレンダリング処理は専用回路(GPU)で行われることも多い。高い対話性と双方向性が得られるので、ゲームに用いられる場合はこの形態をとる。
・レタッチ(Retouch)
レンダリングで得られた画像が、完全に制作者の意図したものになるとは限らない。PhotoshopやAdobe After Effectsなどのフォトレタッチツールなどで、コントラストや色味を手直しすることもある。
・制作技法
−テクスチャマッピング(Texture mapping)
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3DCGのモデルに画像を貼り付けることをテクスチャマッピング、その貼り付けられる画像をテクスチャという。テクスチャを貼ることにより、モデリングやシェーダーのみでは表現の困難な、モデル表面の細かな色彩情報や質感などを設定することができる。
テクスチャの貼り付け方としては、単純にカメラ方向からモデルにテクスチャを投影するだけの方法や、UV座標によってモデルへのテクスチャの投影を正確に設定する方法がある。カメラ方向からの単純な投影では、動き回るキャラクターのテクスチャがズレることが回避できないため、現在では、3DCGを扱う者にとって、モデルにはUVをきちんと設定するのが常識である。
反射の強度を設定する反射マッピング、小さな凹凸を擬似的に表現するバンプマッピング/ディスプレイスメントマッピング、透明度を設定する透明度マッピングなどがある。形状の表面に画像の情報を加えることによって、表面の模様や質感が表現されて、より現実的な画像になる。
特にコンピュータゲームにおいては、リアルタイムで3DCGキャラクターを描画する必要から、極力少ないポリゴンで作成されたモデル(ローポリゴンモデル)に、ディテールや陰影などを描き込んだテクスチャを貼り付ける手法が行われている。
−バンプマッピング
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モデルの表面の法線の方向を変化させることによって、擬似的に凹凸を表現する技術。グレースケール画像で元形状に対する高低を定義する。少ないポリゴンで細かな陰影をリアルに表現できる利点があるが、実際に表面に立体的な凹凸があるわけではないので、ズーム時や、面を横から見た場合などに違和感のある画像となる。
近年は法線の方向を直接定義する法線マッピング(ノーマルマッピング)も用いられるが、法線マップを手作業で作成するのは困難であるため、通常は高精細モデルのディテールを法線マップに変換して単純化モデルに適用する手法が採られている。

3D に関する最新技術 第5回

1.4 2次元コンピュータグラフィックス
 2次元コンピュータグラフィックス(2 Dimensional Computer Graphics、2DCG)とは、コンピュータを使って絵や図を描く技術のことである。コンピュータを使って描かれた図や絵そのものを指すこともある。
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概要
2DCGにより作成される絵や図は、コンピュータの内部表現として、写真修整や画材表現に適したラスタ形式と、ロゴデザイン、設計・製図や地図などに適したベクタ形式に分かれる。DTPなど実際のアプリケーションにおいては、これらの表現形式は混在しているケースが多い。かつて1980〜1990年代「ラスターグラフィックス」(=画像)、「ベクターグラフィックス」(=図形)という区分が存在したが、こんにち内部表現がベクタ形式であっても、利用者が目にするのはラスタライズされた結果であることがほとんどなので、このような区分方法が用いられることは少なくなっている。
・2次元グラフィックスの編集
2次元グラフィックスを編集するには、ペイント系はラスタ形式の、ドロー系はベクタ形式のソフトウェアというように、それぞれ専用のソフトウェアが存在する。これらを総称してグラフィックソフトウェアと呼ぶ。画像処理ソフトと呼ぶ場合、通常内部表現がラスタ形式のアプリケーションを指す。また「イメージ」あるいは「グラフィックス」という言葉は、多くの場合、図形と画像二つの概念を含んで用いられる。単純に「image=画像」のように翻訳すべきでない。
ラスターイメージの操作 - ペイントソフト、フォトレタッチソフト
ベクターイメージの操作 - ドローソフト、CADソフト
グラフィックソフトは、通常はラスターイメージかベクターイメージのどちらか一方を編集するが、両方を編集できるものもある。ベクターイメージの一部にオブジェクトとしてラスターイメージを含め、拡大縮小や回転を指定することは可能である。問題は編集方法。ベクターイメージに埋め込まれたラスターイメージをピクセル単位で再編集するには、ほとんどの場合ほかのラスターイメージを扱えるソフトウェアに処理してもらわなければならないが、高機能なソフトではラスターイメージをピクセル単位で編集する機能を内蔵しているのである。
ラスターグラフィックスのことを「ビットマップ画像」と言うことがあるが、本来ビットマップとはラスターイメージを処理する技術を意味するので、あまり適切ではない。またベクターグラフィックスのことを「ベクトル画像」と言うのも、歴史的な経緯から見れば、これも適切ではない。
・2次元グラフィックスの入出力
2次元グラフィックスを作成、加工、使用するに当り、そのイメージを何らかの方法で入力しなければならない。
・入力
2次元グラフィックスを入力する方法には以下の5種類の方法がある。
キーボード - 文字情報を入力するときに使用。またPostScriptなどグラフィックスが描画できるページ記述言語でプログラムを記述し、ソフトに描画してもらう。
イメージスキャナ - プリントされた写真(印画紙)や雑誌のグラビアなど印刷物、紙に描かれた絵などを取り込むときに使用。また文字認識にも使われる。
フィルムスキャナ - デジタルカメラ以外で撮影した、写真フィルムから画像を取り込むときに使用。
デジタルカメラ - デジタルカメラで撮影した、静止画や動画を取り込むときに使用。
マウスやペンタブレットなどのポインティングデバイス - ペンの軌跡をコンピュータに伝え、グラフィックソフトに描画してもらう。文字認識ソフトを経由して文字を入力することもある。まだイメージスキャナやペンタブレットなどが普及していなかった時代には、紙に描いた原画の上に食品用ラップフィルムを乗せて油性マーカーでトレースし、そのラップを今度はディスプレイに貼り付けてマウスカーソルでそれをトレースする、ラップスキャンという技法が存在した。
・出力
2次元グラフィックスを人の目に見えるように出力する方法には、以下の4種類の方法がある。
ディスプレイ (コンピュータ) - CRTや液晶ディスプレイに出力、表示する。
フィルム - フィルムレコーダあるいはイメージセッタでフイルムに焼付け、映画として放映する。あるいは印刷用の原版を作成する。
印刷 - プリンタで紙に出力する。
プロット - プロッタで紙に出力する。図面を出力する際に使用。
出力の際は、各図形の情報をもとに各ピクセルに色を割り当てているので、ベクターイメージもラスタライズされてラスターイメージになっている。これは、ディスプレイやプリンタが「この図形の色はこの色」という考え方で出力できないためである。ディスプレイやプリンタがドット(点)の集合で構成されている以上、ベクターイメージの考え方そのままで出力するのは、基本的に難しい。PostScriptプリンタにおいても、印刷データはベクターイメージであるが、プリンタ側でラスタライズされる。逆に、ペンを動かして紙に直接線を引くことで出力するプロッタは、ベクターイメージでなければ出力できない。ペンで描かれるほとんどすべての線は点の集まりではなく、座標と図形コマンド、あるいは方向と長さの情報などで構成されている。

3D に関する最新技術 第4回

1.3 モデリング
モデリング(modeling)は、広義の意味での模型(モデル)を組み立てることをいう。
−モデリング (科学的) - 機構の分からない現象を、分かりやすい対象に置き換えて考えること。例として、ボーアの原子模型などがある。
−モデリング (心理学) - 観察学習。
−3DCGの分野において、三次元モデルを作ること。
−彫刻 - 可塑性素材で、立体物を作ること。

#1 モデリング(科学的)
科学的モデリング(Scientific modelling)とは、ある事象の抽象化された概念モデル・図式モデル・あるいは数理モデルを作るプロセスである。科学の様々な分野において、各々特化した科学的モデリングのための科学的方法、技術、理論が蓄積されている。科学的モデリングによって事象を構成する様々な要素が単純化され、容易に読み取れるようになる。
モデリングは全ての科学的活動で不可欠かつ不可分の手法である。科学の様々な分野において、それぞれ独自のモデリング手法や設計思想が存在している。科学哲学、一般システム理論、あるいは知識の可視化(英語版)など多く分野において、科学的モデリングへの注目が高まっている。 
 
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・概要
科学的モデルは、経験則や事象、物理現象などを、論理的かつ客観的な方法で示すことを模索するものである。全てのモデルは単純化された現実の模倣(in simulacra)であり、本質的には虚偽のものであるにも関わらず、科学的活動に極めて有用である[2]。むしろモデルの構築とそれに関する議論を行うことは、科学的活動の根本でもある。モデルは完璧に事実を表現することはできないかもしれないが、しかし特定の目的に対してどちらが優れたモデルであるのか(例えばより正確な天気予報はどちらか、など)のような討論はしばしば行われる。
科学者にとって、モデルはまた人間の思考力を拡張するための方法でもある。例えばソフトウェアとして提供されるモデルは、そのシミュレーションや可視化、および操作に計算機の力を利用することを可能にし、モデルで表された実体・事象・過程に対する洞察を高めることができる。このようなコンピュータ・モデルは in silico("シリコンチップの中で" の意)と呼ばれる。これは in vivo("生体内で";ラットのような実験生物自体の中で、の意)・ in vitro("ガラス器具の中で";器具内で維持されている組織培養等において、の意)などと対比される言葉である。
・科学的モデリングの基本
−直接的計測及び経験に代わるモデリング

通常、科学者は直接的に結果を測定できる実験条件を作ることが不可能あるいは現実的でないときにモデルを活用する。コントロールされた条件(科学的手法)の下での結果の直接測定は、常に結果のモデル化された予測より信頼できるであろう。結果を予測するとき、測定ではしないが、モデルは仮定を使う。しかしながら、仮定がモデルの利用を通して作られるデータと異なるにもかかわらず、測定から集められたデータを分析することに注意することは重要である。モデルでの仮定が増加するにつれ、モデルの精度や関連性がおそらく低下する。
−モデリング言語
モデリング言語は、一貫したルールのセットによって定義される構造での情報、知識、またはシステムを表現するため使われるあらゆる人工言語である。そのルールは、その構造における構成要素の意味を通訳するため使われる。モデリング言語の例は、システムアーキテクチャの記述や表現のためのアーキテクチャ記述言語(ADL)、ソフトウエア・システムのための統一モデリング言語(UML)、プロセスのためのIDEF、あるいは特にWorld Wide Webを念頭において設計された3次元コンピュータグラフィックスのためのVRMLなどである。
−シミュレーション
シミュレーションは、モデルの実装である。静的(あるいは定常)シミュレーションは、特定の時点(通常平衡状態の、もしそのような状態が存在するなら)でのそのシステムについての情報を提供する。動的(あるいは非定常)シミュレーションは時系列の情報を提供する。シミュレーションは、モデルを活気付け、特定のオブジェクトまたは現象がどのように振舞うかを示す。そのようなシミュレーションは、実世界システムあるいはそのモデルについて、テストし、分析し、あるいはトレーニングするのに有用である。
−構造
構造は、認識、観察、性格、及びパターンの安定性とエンティティの関係を網羅する時に基本的な無形概念である。子供の雪片の口頭説明から、磁界特性の詳細な科学的分析(英語版)まで、構造の概念は、科学、哲学、芸術における調査と発見のほとんど全てのモードでの本質的基盤である。
−システム
システムとは、統合された全体を形成する、エンティティの相互作用または相互依存、実態または抽象のセットである。一般にシステムは、構成要素単独では得られない結果を一緒になって作り出す、異なった構成要素の構築物あるいは集合体である[7]。統合された全体の概念は、セットの関係から他の構成要素まで、及びそのセットの構成要素と関係制度の一部でない構成要素間の関係から、区別される関係のセットを具現化する、用語システムで述べることができる。システムには2つのタイプが存在する[8]:
離散システム - 変数が時間的に別の時点瞬間的にの変化する
連続システム - 変数が時間に関して連続的に変化する
・モデル生成のプロセス
モデリングとは、何らかの現象の概念的表現としてモデルを生成するプロセスを意味する。通常、モデルは問題の現象についてのいくつかの側面だけに着目し、同じ現象を表した2つのモデルが本質的に異なっている、つまり、それらの間に、単に構成要素の名前が違うだけである以上の相違があることもありうる。
このような相違は、モデルの最終ユーザーの要求が異なるためか、あるいはモデラー間の概念的または美的相違とモデリング・プロセス中に行われる偶然的意思決定に帰結するかもしれない。モデルの構造に影響するかもしれない美学的考慮は、圧縮されたオントロジー、断定的に対して確率的モデルに対する好み、時間的不連続あるいは連続、のようなモデラーの好みかもしれない。このような理由から、モデルのユーザーは、モデルの本来の目的と、その妥当性に関係のあるされた仮定を理解する必要がある。
・モデル評価のプロセス
モデルは、観測データとの整合性によって最初に評価される。再現可能な観測と合致しないどんなモデルも、修正あるいは拒絶されねばならない。モデルを修正する一つの方法は、モデルが高い正当性を持つと認められる領域を限定することによる。その良い例はニュートン力学である。ニュートン力学は非常に小さいもの、非常に速いもの、あるいは非常に大規模な宇宙的現象を除いて高い有用性がある。しかしながら、観測データへの合致だけでは、モデルを正当であると受け入れるには不十分である。モデルを評価する上で重要なほかの要素には以下を含む:
過去の観測データを説明する能力
将来の観測データを予測する能力
他のモデルと組み合わせて、利用するコスト
モデルへの信頼度の予測を可能にする論証
単純さ、または美的魅力が要求されることもある
効用を使ってモデルの評価を数量化しようと試みもあるかもしれない。
・可視化
可視化は、メッセージをコミュニケートするイメージ、ダイアグラム、あるいはアニメーションなどを生成する技法である。視覚的画像を通しての可視化は、歴史的に抽象と具象の間をコミュニケーションする効果的な方法であった。たとえば、洞窟壁画、ヒエログリフ、ギリシャ幾何学、及びレオナルド・ダ・ヴィンチの工学的かつ科学的目的の技術的図面描画の革命的方法などがある。
・科学的モデリングのタイプ
−事業プロセス・モデリング

ビジネスプロセスモデリングにおいて事業体プロセス・モデルは、しばしば事業プロセス・モデルと呼ばれる。プロセス・モデルは、プロセス工学分野における中核的概念である。プロセス・モデルとは、
1つのモデルに一緒に分類される同じ性格のプロセス
そのタイプのレベルでの一つのプロセスの記述
プロセス・モデルがそのタイプのレベルにあることから、一つのプロセスはその一つのインスタンス
のことである。同じプロセス・モデルは、多くのアプリケーションの開発のため繰返し使われ、そこで多くのインスタンスを持つ。
 
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プロセス・モデルの一つの可能な利用は、何が起こるかの真実であるプロセス自身に対比して、どのようにものが行われなければならない/行われるべき/行われ得る、かを規定する。あるプロセス・モデルはそのプロセスがどのように見えるかを予想する大まかなものである。そのプロセスが何であるかは実際のシステム開発中に決められるであろう。

#2 モデリング(心理学)
モデリング(Modelling)は、心理学用語のひとつである。何かしらの対象物を見本(モデル)に、そのものの動作や行動を見て、同じような動作や行動をするのがモデリングである。
人間(主に子供)の成長過程では、モデリングにより学習・成長するとされている。思春期から大人にかけての時期では、憧れの意識から、対象の人物に少しでも近づきたいという心理が発することがある。また、芸能人のファンが、その対象人物のファッションや仕草などを真似るのは、モデリングのひとつである。

3D に関する最新技術 第3回

1.2 レンダリング
 レンダリング (rendering) は、データ記述言語やデータ構造で記述された抽象的で高次の情報から、コンピュータのプログラムを用いて画像・映像・音声などを生成することをいう。元となる情報には、物体の形状、物体を捉える視点、物体表面の質感(テクスチャマッピングに関する情報)、光源、シェーディングなどが含まれる。render の原義は「表現する、翻訳する、(脚本などを)上演する」などの意味を持つ。
レンダリングを行うソフトウェア、ソフトウェアパーツ、システムなどをレンダリングエンジンまたはレンダラーと呼ぶ。また、レンダリング用のサーバファームをレンダーファームと呼ぶ。
・レンダリングの例
3次元オブジェクトや光源の情報から3DCGを描画する。
Adobe After Effectsなどのエフェクタがエフェクトのパラメータから映像を出力する。
ウェブブラウザがHTMLなどからウェブページを表示する。
OSやテキストエディタやDTPソフトが文字コードから文字を表示する。
DTMソフトがMIDIデータなどから音声信号を生成する。(特に、リアルタイム演奏ではなく事前に音声信号を生成してからそれを再生することを指す)
どの場合も、出力データに関するコンピュータ上で作成された情報を必要とし、これをレンダリングすることで出力データを得る。
・3Dレンダリング
3DCGでは、レンダリング専用のソフトウェアも存在し、その場合はソフトウェア全体をレンダラーと呼ぶ。レンダリングの前段階として、モデラーを使用して被写物を作成する、モデリングという作業がある。
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・3Dレンダリングの種類
ローカル・イルミネーション、ダイレクト・イルミネーション
スキャンライン
レイ・トレーシング
グローバル・イルミネーション
ラジオシティ
フォトンマッピング
MLT
ERPT
ノン・フォトリアリスティック・レンダリング
トゥーンレンダリング

3D に関する最新技術 第2回

1.概論
1.1 コンピュータグラフィックス

 コンピュータグラフィックス(computer graphics、略称:CG) は、コンピュータを用いて作成される画像である。日本では、和製英語の「コンピュータグラフィック」または「グラフィック」も使われる。
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・歴史・概要
CGは、主に3D CG(3次元コンピュータグラフィックス)と2D CG(2次元コンピュータグラフィックス)に大別される。しかしながら2D、3Dの区分は方法論としての区分(作成のプロセスによる区別)で、作品としてのCGは2D、3Dのどちらかで創られたと単純に大別はできず、3Dの手法で創られた画像を2Dの手法で加工したり、2Dで描いた絵の上に3Dで作った画像を合成するといったことは頻繁に行われている。
CGはノイズのない鮮やかな色彩、修整や編集の容易さなどを提供する。3Dにおいてはコンピュータシミュレーションによるリアルな映像、滑らかなアニメーション、実際に撮影セットを作らなくてもよいことによる非現実的な映像が可能であることなどを特徴とする。1995年、映画「トイ・ストーリー」はフル3DCGで作成された初の劇場用長編と銘打って公開されたが、現在では映画に限らずテレビコマーシャル映像やイラストレーション、漫画などあらゆる画像・映像制作に使われる一般的な方法として定着した。実写による映像もコンピュータによって調整が行われることも珍しくない。このように多くの長所をもつが、安易に用いると制作者の持ち味が失われてしまう危険性も同時にはらんでいる。
英語圏においてはCGと言えばコンピュータによってレンダリングされたグラフィックス、3DCGを指す。 2DのCGイラストは3Dと同様に(コンピュータ)ドローイングなどと呼ばれるため、日本ではCGイラスト(CGイラストレーション)などといった造語が慣用的に用いられ定着しているが、英語圏においてCGイラストを指して「CG」「コンピュータグラフィックス」などと言うと訝しがられることもあり注意が必要である。
3Dコンピュータグラフィックスの長所はフォトリアリスティックな表現や視点の変更が可能なこと、モデルを一度組めばアニメーションさせやすいことなどが一般的である。3次元グラフィックスの制作プロセスは、形状データを定義・作成するモデリングと、形状データから最終的な画像を出力するレンダリングに大別され、レンダリング技術にはスキャンライン、レイ・トレーシング、ラジオシティなどがある。
またCGはフォトリアリスティックとノンフォトリアリスティックに分かれる。前者は限りなく精密で写真と見紛うようなリアルなものを追求し、後者は逆に鉛筆や絵具で描いたような画像を作る。ノンフォトリアリスティックな画像生成は1998年頃からSIGGRAPH(シーグラフ)で流行りだした。一方、従来から研究されているフォトリアリスティックな画像生成では、近年は実写と上手に合成するイメージベースドレンダリング、レイ・トレーシング法を改良したフォトンマッピングなどがさらに研究が進められている。 立体的な表現であっても、2次元グラフィックスの編集ソフト(Corel PainterやAdobe Photoshop等)で制作した画像は2次元グラフィックスとされるが、3DCGとして制作し出力された画像を上記ソフトウェア等で編集することもよく行われる。
・CGの種類
−2DCG

2DCGは、「単純にコンピュータを使って描く絵」(コンピュータドローイング)で、主に「ペイント系」、「ドロー系」の2つに分類される。ペイント系ソフトはフリーハンド描画や写真修整に適した画素ベースのラスタ形式とも呼ばれ、ドロー系ソフトはロゴデザインや設計・製図などに適したベクタ形式とも呼ばれる。
アプリケーションの中で2つの表現形式が混在しているケースもあり、さらにペイント系アプリケーションは、伝統的な筆や画材をコンピュータ上で再現したように手で描くペイントグラフィックと、従来暗室などで行っていたような写真の修整や合成を主とするフォトレタッチの2つに大別される。2DCGで扱われる技術は、イラストレーターや漫画家の効率化と表現の拡大に貢献している。
−3DCG
3DCGは、コンピュータに物体の形状、カメラの向きと画角と位置、光源の強度と位置などの情報を入力して、コンピュータ自身にプログラムで画像を計算・生成させる手法を言う。人間が手で描く必要がなく、カメラの位置を少しずつ変えたり、物体の位置を変えたりするだけで、いったん作った情報から異なる画像を大量に作り出すことが出来るため動画制作に向いており、近年の映画のリアリティ向上に多大な貢献をしている。またゲームなどでは主人公に360度の視界を持たせることができるなど利点が多いため多用されている。3DCGの最終的な出力先であるディスプレイやスクリーンなどは二次元 (2D) だが、3DCGは作成時に持っている情報が三次元 (3D) である。
−CAD
CADは、コンピュータを用いて設計をすること。あるいはコンピュータによる設計支援ツールおよびそれらを統合したシステムのこと。建築物や工業デザインなどの分野でそれぞれに専門化したソフトウェアが使用される。二次元CADと三次元CADに大別されるが、設計図を作成する目的に特化しているので、設計の技術や知識を持っていることが使用の前提となる。レンダリング等のいわゆる3DCGとしての出力には別のソフトの支援を要する場合が多い。
−ムービー
ムービーとは、動画のことをいう。Adobe社のプレミア、Corel社のビデオスタジオなどの動画を扱う専用ソフトで編集する。特殊効果には同じAdobe社のアフターエフェクトなどがよく使用される。
・映画とCG
本格的にコンピュータグラフィックスが映画に採用されたのは1982年の「TRON」からだと言われているが、日本でも1980年代始めに大阪大学工学部大村皓一助教授(当時)の研究する並列処理コンピュータLINKS-1を使ったメタボールによるモデリングを利用した「ゴルゴ13」などで比較的古くから活用されていた。「オレたちひょうきん族」のオープニングやアニメ・「タイムボカン」のタイムスリップのシーンなども有名である。1985年につくばで開催された科学万博では各パビリオンで多くのCGが使用され、世界初の全天周立体映画" ザ・ユニバース"が上映された。1990年に大阪で開催された花の万博では液晶シャッター式のカラーの全天周立体映画"ザ・ユニバース2"が上映され、幕張では2000年代初頭には"エンカウンター"が上映された。
初期には制作コストが高かったために、コンピュータグラフィックス風の斬新なイメージを求めて実写合成などを行った「ニセCG」というものも存在した。たとえば、ジョン・カーペンター監督による『ニューヨーク1997』(1981年)でグライダーが夜間飛行をするシーンのモニタにうつる映像は3DCG風ではあるが、実はリスフィルムによる撮影と光学合成を駆使した実写合成である。この手法はテレビコマーシャルなどでも多用された。黎明期ならではのできごとである。
映画におけるコンピュータグラフィックスは1990年代前半に飛躍的な進歩を遂げた。まず、1991年発表の『ターミネーター2』におけるVFXで注目を集める。続いて1993年の『ジュラシック・パーク』では、コンピュータグラフィックスが従来のストップモーション・アニメーションに全面的に取って代わった。そして、1995年の『トイ・ストーリー』に至っては、全編がコンピュータグラフィックスで制作された。2000年代に入ると、多かれ少なかれほとんどの映画で使われるようになる。現在では、時間とお金さえかければ作れないシーンはないとまで言われている。
かつてはSGIなどの高性能ワークステーションや専用のレンダリングサーバ、時としてスーパーコンピュータなどを用いてレンダリング処理を行っており、大変コストがかかるものであった。その後パソコンの高性能化に伴い、安価で高性能なパソコンを使って分散レンダリングを行う方法が主流となってきている。安価なパソコンをレンダリング専用にクラスター化したものをレンダーファームと呼び、大手プロダクションでは数百台規模のパソコンをクラスター化する例が多くなっている。普段はレンダリング以外の業務用に使われるパソコンを就業時間後にレンダーファームに組み込んでレンダリングに転用することで効率化を図っている例も有る(例えば「タイタニック」や「ジュラシック・パーク」など)。
レンダリングによりあらかじめ一枚一枚の画像を作り、それらを繋げて映像化したものをプリレンダリング映像という。現在の映画はすべてこの方法によるものであるが、ゲーム機ではリアルタイムのレンダリングによる映像の提供も進んでいる。
一枚ずつセルに絵具(アニメカラー)で彩色する工程を踏んでいたアニメーション制作にもコンピュータ彩色(閉じたエリアに色を流し込む)を導入することで効率化が図られているが、日本では1983年のNHKアニメーション「子鹿物語」が最初とされる。
特殊効果(VFX)にCGを使用することは一般的に行われており、以前は主にCGは特撮、SF映画で使用されていたが、機材の発達により、現在では一般の映画でも多用されており、一見しただけではCGであることを意識させない作品も多い。
・デザインとCG
日本でパソコンCGが一般化する契機となったのは、1985年に発売されたNECのPC-9801VM(PC-9800シリーズ)あたりからで、640×400画素ながら4,096色中の16色をインデックスカラーで表示できるというスペックで、特にコンピュータゲームの表現力の向上に貢献した。
日本国内のパソコンはまだグラフィックデザインの分野で実用するには貧弱なものであったが、1987年に最初のカラー仕様のMacintosh II(640×480画素、ソフトウェアによるインデックスカラーでの256色同時表示)が登場してからは、次第にグラフィックデザインの分野でMacintoshが浸透していった。本格的な普及はその数年後、カラーイメージスキャナやカラープリンタなどの周辺機器が充実し始めた頃からである。Macintoshは早い時期からWYSIWYGの考え方を導入していた点も、グラフィックデザインにCGを導入するには重要な点であった。
1980年代は様々な企業がデザインへの応用を目的としたCGシステムを発表している。服飾メーカーのJUNは4D-BOX(512×512画素、16,777,216色中256色同時表示)を開発、今ではパソコン周辺機器メーカーとして知られるアイ・オー・データ機器も、ほぼ同様なスペックの西陣織デザインシステムを開発した。また日本ビクターではCGアニメーション専用システムを発売、ヤマハもYISシリーズがデザイナーから注目を浴びた。
・アニメとCG
アニメにおいては、1983年公開の映画ゴルゴ13や、:1983年NHK総合テレビ放送の『子鹿物語 THE YEARLING 』、1984年公開の映画ドラえもん のび太の魔界大冒険以降にCGが使用された。その後、1993年からNHK教育テレビの天才てれびくん内で放送されたバーチャル3部作において、アニメや実写と共にCGが使われている。
1998年 ロスト・ユニバース (宇宙パートの一部。LightWaveが使われた)
1998年 serial experiments lain
1999年 ビーストウォーズメタルス
その他、ゲームにおいて、OPやイベント等にCGアニメが使われている。
・ゲームとCG
1973年にワイアーフレーム表示の3D迷路を使ったMaze Warが、その翌年には宇宙を舞台にしたSpasimが登場している。アーケードにおいてExidyが1978年にSTAR FIREを、アタリが1980年にワイアーフレーム表示のバトルゾーン、1983年にI, RobotやSTAR WARS、セガが1982年に擬似3Dシューティングのズーム909や潜水艦ゲームのサブロック3Dを出している。Apple IIにおいて、Sirius Softwareが1981年に擬似3DシューティングのEPOCHやHADRONを出している。PC-6001において、アスキー出版が1982年にOLIONを出している。Atari 8ビット・コンピュータにおいて、1984年にBallblazer、1985年にRescue on Fractalus等の擬似3D処理を使ったソフトが登場している。ファミコンにおいて、1987年に3D迷路を使ったデジタル・デビル物語 女神転生が出ている。1988年にはAtari 7800においてF-18 Hornet等のソフトが出ている。スーパーファミコンにおいては、1991年のパイロットウイングス等に使われたDSP-1による擬似3D処理や、1993年のスターフォックスなどに使われた3DアクセラレータのスーパーFXチップが存在した。1992年アーケードゲームの基板においてセガが3D描画機能のあるMODEL1を開発、翌1993年に初の3D格闘ゲームバーチャファイターが登場する。その後、1994年にプレイステーションが出て以降、3Dのゲームが増えることとなった。ファイナルファンタジーにおいては、1997年のFF7以降3Dに、ドラゴンクエストにおいてはDQ7以降3Dになっている。
CGを主軸に置いたゲームとしてはせがれいじり(1999年)や半熟英雄 対 3D(2003年)等が存在する。
・国内CGプロダクション
黎明期(1980年代)においてCGは主にアニメの一部やCM、ニュースのOP等に使われた。
1980年 エムケイの関連会社としてJCGL(その後ナムコ(現バンダイナムコゲームズ)に吸収)設立 (1983年の子鹿物語や1984年のSF新世紀レンズマンなど)
1982年 東洋現像所(現イマジカ)が子会社としてトーヨーリンクス(現リンクスデジワークス)を設立 (1983年のゴルゴ13等)
1980年代 西武セゾングループがSEDICを設立 (西武デジタルコミュニケーションズ。1987年のTV's TVなど。SPN(西武プロモーションネットワーク。現I&S BBDO)との関係が深かった。

3D に関する最新技術 第1回

はじめに
3Dは、「three-dimensional」あるいは「three dimensions」の略語であり、「3次元の」、あるいは「三次元」を意味する。物体構造などのモデリング、立体視等の用語などに用いられる。
3D_New_Technologu_1元々3Dという概念が定義付けられたのは、IEEE(米国に本部を持つ電気・電子技術に関する学会。米国電気電子学会、または米国電気電子技術者協会と表記されることが多い。電気通信関連の仕様を標準化する団体で、たとえば、LAN関連の規格は「IEEE802委員会」によって決められている。Ethernetの「802.3」や、無線LANの「802.11」など、さまざまな規格を策定している。)である。当初の規定では図のような考え方であった。つまり三次元空間(立体)の中にリアル画像を形成するという仕組みであった。
ところが、テレビ業界が開発した3Dはどれもメーカーの掛け声ばかりが進行して、ユーザー無視の仕様のお仕着せから浸透していかず、結局3Dテレビは消滅してしまった。その原因は、
3Dメガネが面倒くさい(2Dを3D化、3Dメガネが不快)
テレビメーカーのお仕着せ(ユーザーの欲求と乖離)
トータルコストが高い(テレビ本体、レコーダー、3Dメガネなど)
4Kテレビの開発と普及(3Dと4Kのせめぎあい、奪い合い)
コンテンツ不足(開発予算の縮小)
迫力に欠ける(大画面が欲しい)
しかし、3Dが目指した、映像における奥行き感や臨場感の向上という意味では、テレビにおいては、4K/HDRによる、解像度、色、コントラストのダイナミックレンジの拡張が代替する、という方向に軸が移った。そして、コンテンツ制作の面では、VRのような平面のスクリーンを拡張する方向で模索が続いており、テレビや映画にとどまらない広がりを見せている。そうした中で3Dは、立ち位置がやや微妙になってきたといえるのかもしれない。

・種類
3次元コンピュータグラフィックス(3DCG) -3次元モデルをコンピュータのディスプレイ等に疑似的に実現した物。
3Dモデリング(3D modeling) - 3次元を考慮した設計を行う事。そのモデル。
3Dフォト(3D photo) - 立体写真とも言う。 
3D映像 -三次元映像、3D立体視とも言う。
3D音響 - 方向感のある音響であり、立体音響、3次元音響、3Dオーディオ、3次元オーディオなどとも言う。また単に、通常の2chステレオに低音増強用のサブウーファーを1本だけ足して計3本のスピーカから再生する方式も3D(方式)と呼ぶ。
3D映画 - 上記の3D映像や3D音響を使用した映画。
3Dテレビ - 立体テレビ放送を受信可能なテレビ受像機。
3D酔い - 3Dコンテンツの視聴中に発生する、乗り物酔いに類似する症状。
3Dプリンタ - 3D CADや3Dスキャナで作成した三次元データを利用して、プラスチック等の素材でモデルを造形する装置。
3Dプロジェクションマッピング
3Dメガネ - 3D映像を見るときに使う、特殊なメガネ。
3Dスティック(サンディスティック) - 家庭用ゲーム機NINTENDO64のコントローラに搭載されている入力機器。
3Dトリック - スノーボードにおける、横回転と縦回転を組み合わせたトリック(技)の総称。
ニンテンドー3DS - 任天堂が開発・発売した携帯型ゲーム機。
体積 - 計算問題内の空間図形(立方)。
・その他の用法
チーム3D - プロレスのタッグチーム。
Dudley Death Drop - 上記タッグチームの必殺技のツープラトン攻撃。頭文字をとって3Dと略される。→ダイヤモンド・カッター#派生技
ビエラ彗星の登録番号。
週刊少年チャンピオンの読者投稿コーナー「EXIT TUNESプレゼンツ 週刊3D 出口はドコだ!?」の略称。
Dirty, dangerous and demeaningの略で、過酷な労働環境を指す。日本では3Kと呼ばれる。
2013年に中日ドラゴンズに所属していたエルナンデス・ルナ・ナニータのドミニカ人トリオの総称。→中日ドラゴンズ#ドミニカ共和国とのつながりを参照。

脳科学の応用 No.8 (最終回)

k.特徴空間の認識
k1.特徴空間の解析

 相互作用同時性は、ヒトのニューロンの発火から、どのようにして人間の心の中の時間や空間の秩序が生まれてくるのかというより一般的な問題の一部である。ここで指導的な原理となるのが、因果性である。つまり、我々の認識の時間的、空間的な構造は、ニューロンのネットワークの時間的な発展を因果的にどのように記述するかという観点から導かれてくるのである。
 このようなアプローチにとって、ヒントになると思われるのがペンローズの「ツイスター」の概念である。ペンローズのアプローチでは、物理的時空に対して、「ツイスター空間」というものを考える。光の伝幡する軌跡は、物理的時空の中では直線となるが、ツイスター空間の中では、1つの点となる。光の軌跡は、すなわち相互作用の伝搬する軌跡に他ならないから、ツイスター空間は、相互作用によって結ばれた時空の点の集合を、ひとまとめにして点として表した空間だと考えることができる。ツイスター空間は、ある意味では物理的時空よりも、自然法則にとって本質的な空間である。ペンローズは、「私たちは、ツイスター空間を、その中で物理学が記述されるべき空間とみなさなければならない」と言っている。
 もちろん、ニューロンのネットワークにツイスターの考え方をそのまま持ち込むわけにはいかない。だが、ツイスターが考え方の基本としている、個体よりも個体の間の因果関係を基本的な要素とするという考え方は、ちょうど、相互作用で結ばれたニューロンの発火のクラスターが、認識の要素として一つの単位として扱われることに対応している。私たちの認識は、それを支えるニューロンの発火が、時間的にどのように発展していくかという、ダイナミックスによって決められている。従って、相互作用で結ばれたニューロンの発火のクラスターは、認識の要素であるとともに、ニューロンのネットワークのダイナミックスを考える際の単位になっていると考えられる。このようなダイナミックスの記述には、ツイスターに類似の数学的な枠組みが必要となる。
 興味深いのは、物理的時空に対してツイスター空間が考えられるように、ニューロンのネットワークのダイナミックスを記述するのに適した、相互作用を基本とする空間が考えられ、これが私たちの認識の時空となっているという可能性だ。だとすると、私たちの「心」は、ツイスター空間に対応する、ニューロンのネットワークのダイナミックスを記述する空間で生ずる表象から構成されていることになる。もちろん、現時点ではこれは憶測に過ぎない。 ヒトの脳内で作用している色や形などの情報処理プロセスを決定付けている「パターン認識」は、ややもするとコンピュータで実行される算術計算とは異質なものと考えることができる。つまり、ヒトがものを見てそれを認識している状態は、0,1の数字の羅列を人しているのではなく、直感的ともいうべき感覚的な捉え方をしているのである。例えば、眼の前にリンゴとミカンが置いてあったとき、その違いを見分けるのはあくまでも感覚(クオリア)の違いとして直感的に弁別しているように思われる。
 その一方で、ヒトの脳内では、とてつもなく膨大なニューロンのネットワークを駆使して数理的な解析を行っている。これは、ニューロンの一部が機能しているといえる。では、ニューラルネットワークを使ったパターン認識を司るプロセスは、数学的な見地からみるとどうなるのであろうか。
 7_59_ICS_デザイン_意匠右図の例を基に説明する。これは、線形分類システムにおける判別関数を応用したもので、ある2つの異なった試料を得るのに、副原料を添加したときに得られる生成物の収量を関係式で示したものである。2つの試料を二次元特徴空間(例えば、散布図)に表すと2つを明確に区別できる分布になった。この境界条件を求めるとある関数で表せる直線(線形)でグループ分けできることが判った。これの区分する          
線形を判別関数という。このように、特徴抽出するのに数理的に解析すれば、顔の中に見られる、眼や鼻や唇などの入力パターンを、n次元の特徴空間に写像するプロセスとして捉えることが可能となる。

k2.ニューロンの機能的役割
生体の脳神経系は、外界からの情報を感覚器(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を介して入力し、脳で情報処理を行ない、さらに効果器を介して外界へ出力する高度な大規模システムである。脳神経系は機能的および構造的に大変複雑ではあるが、基本的にはニューロン(Neuron:神経細胞)が基本構成素子となって、これらが多数(例えば人間の脳の場合100億から1000億個程度といわれている)集まって、三次元で密に結合した回路網を形成している。
7_60_ICS_デザイン_意匠ニューロンは、右図に示すように、核が存在する細胞体で、多くの枝から成る樹状突起(ニューロンの入力部)、能動ケーブルの役割を果たす軸索(信号伝送路)、シナプス(ニューロンの出力部=軸索終末)などから成る1つの細胞である。そして、ニューロンの情報処理の基本的なからくりは、ニューロンを構成する神経膜にある。
ニューロン間は軸索突起(神経線維)の先端部にあるシナプスボタンを介して結合されており、他のニューロンからインパルスによって生じたシナプス電位は加重される。この加重されたシナプス電位がある大きさに達すると、ニューロンは全か無かの法則に従ってパルス状の電位変化を示す。これらはニューロンの示す最も基本的な性質といってよい。したがって、神経回路の工学的モデルを得るためにニューロンの機能をモデル化するとき、多数の入力の加重特性と発火のしきい値作用をニューロンの特徴的な性質としてモデル化する。これは、忠実なモデル化は取扱いを複雑にするだけで、むしろ本質を理解するには障害になると考えられるからである。
7_61_ICS_デザイン_意匠

上図に示すように、第一次視覚野のニューロンのスパイクは発火、後頭葉のV2野、V4野などを介して大脳皮質にある側頭葉のIT野(大脳の下部側頭葉皮質)に伝えられる。人間が最終的に物体としてその色や形などを認識するのは、IT野のニューロンがになっていると考えられている。下部側頭葉皮質(IT野)には、あるパターンに選択的に反応する細胞が存在することが報告されている。

このシリーズは今回が最終回となります。
次回から「コンピュータビジョン_3Dに関する最新技術」というテーマを開始しますので、引き続きご覧下さい。

脳科学の応用 No.8

i.色に関する弁別システム(脳のパターン認識=網膜〜視神経〜大脳皮質)
 パターン認識(pattern recognition)は、認識対象がいくつかの概念に分類できる時、観測されたパターンをそれらの概念のうちの1つに対応させる処理であるから、この概念をクラス(class)あるいは類(category)と呼んでいる。例えば、数字の認識は、入力パターンを10種類の数字のいずれかに対応させることが目的である。
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 通常、脳によってパターン認識する対象は、色彩、形状、状態などでありそれぞれ固有のアルゴリズム    
で視覚された「もの」の情報を認識している。
右図上側は、色彩の情報を得るための色知覚メカニズムであり、右図下側は、形状などを認識するための眼覚信号経路を示している。情報伝送経路はどの場合においても同じようなメカニズムであるが、パターン認識は、最終的には大脳皮質によって行われている。
 一方、ローゼンブラットが提唱したニューラルネットワークはや単層パーセプトロンは、基本的に連想記憶、すなわち、ある入力に対する連想される記憶に対して出力する装置として作用する。
ここでいう連想記憶は、まさにパターン認識の問題と極めて深い関係にある。
7_58_ICS_デザイン_意匠 人間の脳は、何よりも優先して環境に上手く順応して、生き延びながら進化してきた。そのために、生活環境の範囲で巻き起こされる様々な自然現象を論理的にカテゴリー化し、さらに認識できることが常に要求されてきた。生命を維持するため、病から解放されるさるため、           
或いは危険から回避できるようにするために、森羅万象の出来事の中からそれらの因子を「見分け」たり、「感じ分け」たりするための「パターン認識」の能力が絶対的に必要になっていたのである。このような進化の過程で、ヒトの脳が直面したテーマは、超コンピュータが解くような画期的なテーマでは基本的に異なっていることに注意する必要がある。コンピュータと違って、ヒトの脳に取っては四則演算や抽象的な算法のような情報処理はそんなに自然なものではない。これらの違いは、脳とコンピュータにおいて、単に原理的な差を表しているというよりは、両者が進化して来た目的環境の差を表していると考えた方が合理的である。

j.ニューラルネットワークとパターン認識
シャノンは、情報理論の先駆けとなった1948年の論文の中で次のように述べている。「コミュニケーションにおける基本的な問題は、一方において選択されたメッセージを、他方において正確に、もしくはほぼ正確に再現することである。しばしば、これらのメッセージは、「意味」を持っている。すなわち、これらのメッセージは、あるシステムの中で、何らかの物理的ないしは概念的な存在と、関連づけられているのである。しかし、このようなコミュニケーションの持つ意味論的な側面は、工学的な問題とは関係がない。重要なことは、実際に送られるメッセージが、幾つかの可能なメッセージの集合から、選ばれたものであるという事実だけなのである。」このような考え方に基づいて、情報理論は構築され、ニューロンの発火の情報論的な意味についても、盛んに研究されている。
 シャノンのアプローチを踏襲した今日のいわゆる「情報理論」は、数学的には確率論の一部である。脳の機能を理解する上で、確率的なアプローチの有効性には限界がある。アンサンブルの考え方に基づく反応選択性が認識を説明する基礎概念とはなれないのと同じ理由で、情報理論に基づいてニューロンの発火と認識の間の関係を説明することはできない。そもそも、シャノン的なアプローチは、ノイズのある通信路で、いかに信号を効率よく送るかいった問題にこそ有効なのである。何故ならば、まさにこれは確率論の問題だからだ。脳においては、このようなアプローチは末端の感覚器(例えば網膜の光受容器)には有効である。だが、中枢の、視覚の認識や抽象的な思考が行われている領野における情報処理の原理を理解する上ではほとんど役に立たない。
 脳の機能を理解する上で必要な情報の概念は、まず、ニューロンのネットワークのダイナミックスを反映したものでなくてはならない。ニューロンの発火のパターンを、抽象的なビット列としてとらえるのではなくって、ある発火のパターンが、他のニューロンにどのような影響を与え、その結果どのようなニューロンの発火の時間発展が実現されるかということに基づかなければならない。つまり、「ダイナミックスに埋め込まれた」情報概念でなければならないのである。
 さらに、脳の機能を理解するために用いられる情報の概念には、クオリアの表現が含まれなければならない。なぜならば、クオリアは、脳の情報処理において、本質的な役割を果たしているからだ。 例えば、ヒトが「赤い」、「ビロードのような」、「バラ」という視覚特徴を視野の中の同じ位置に属する性質として認識し、結果として「赤いビロードのようなバラ」という単一の視覚像としてと結びつけることができるのも、それぞれの視覚特徴が独特のクオリアを持っていて、お互いを混同することがないからである。それぞれの視覚特徴が、「3」、「7」、「-1」といった数字で表されていたとしたら、それらを単一の視覚像として認識することは不可能だったであろう。
 また、ヒトの脳の中で言葉の意味が成立するメカニズムは、ちょうど認識においてあるクオリアを伴った認識の要素が成立するメカニズムと似ていると考えられている。すなわち、言葉の意味も、言葉の意味を司る脳の領野(ウェルニッケ野)におけるニューロンの発火の間の相互作用による結び付きから決定されてくると考えられるているからである。
 ヒトは、自分の外の事象を認識している場合と、単にそれをイメージしているに過ぎない場合を区別することができる。また、現在まさに目の前にあるものを認識している場合と、過去に見たものを思い出している場合を区別できる。重要なことは、このような区別は、それぞれの場合に私たちの心の中に浮かぶ表象のクオリアの違いとして現れるということである。例えば、現在、外にあるものを認識している場合には、そこには非常に鮮烈な、生々しいクオリアが伴っている。それに比べて、過去に見たものを思い出している時のクオリアは、薄ぼけた、抽象的なものである。ヒトは、このような区別を当然のものと思ってしまいがちである。しかしながら、これらの表象は、元をただせばニューロンの発火に過ぎないものであるいえる。物理現象としては均一なニューロンの発火から、どのようにして「自己の内と外」、「現在と過去」といった区別を支えるクオリアの差が出てくるのか? この問いは、脳の情報処理能力の根幹に関わる根源的な問題なのである。
 ヒトの脳の中で起こっているパターン認識は、ややもするとコンピュータと無縁の関係にあるように想定されることがあるが、感覚の違いなどはむしろクオリア(感覚としての)の違いを直感的に把握しているように思われる。
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下図の出典先:AI-SCHOLAR https://ai-scholar.tech/others/cnn-shap-ai-110/ (GIF画像あり)
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